民進党がある限り政権交代は二度と起きない
フーテン老人世直し録(257)
神無月某日
参議院選挙後初の国政選挙となる衆議院東京10区と福岡6区の補欠選挙は予想通りの結果になった。いずれも自民党の候補が当選し民進党は惨敗した。民進党の惨敗は誰の目にも明らかだが、しかし自民党の勝利は単純でない。
与党幹部は「安倍政権が信任を得た」として今後の政権運営に弾みがつく見通しを示すが、この二つの選挙区でアベノミクスやTPPが争点になったわけではなく、有権者はそれとは違うところで判断を下した。
東京10区は小池東京都知事の都政改革に対する信任投票となり、福岡6区は故鳩山邦夫衆議院議員の「弔い合戦」の要素が大きい。それを的確に把握して事前から布石を打った自民党の二階幹事長の手腕が自民党に勝利をもたらしたと言える。安倍自民党の勝利と言うより二階幹事長の勝利と言うべきである。
仮に自民党が都知事選で「裏切者」となった若狭氏を公認せず、若狭氏が無所属で立候補していれば、小池氏が自民党の公認を得られなかったあの都知事選の再現になり、若狭氏は今回以上の票を獲得したかもしれない。そして安倍自民党は悪役を演ずることになった。
そうならなかったのは小池都知事誕生直後に幹事長に就任した二階氏が小池氏との融和路線を採り、公募による候補擁立にして若狭氏を自民党の公認候補にしたからである。また二階氏は福岡6区でも福岡県連が推薦する候補より支持率が高い故鳩山邦夫氏の次男を小池氏に応援してもらう算段をした。
東京オリンピックを成功させるため小池都知事と対立する訳にはいかない安倍総理は、緑のネクタイを締めて若狭候補の応援に入り、小池氏の方も森喜朗東京五輪組織委会長と対峙するには安倍総理の協力を必要とする立場にある。その両者の思惑を背後で二階氏が支える。そして当選した若狭氏や鳩山氏が恩義を感ずる相手は二階氏や小池氏であって自民党ではない。
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