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なぜ梅雨末期には豪雨になるの?「地球温暖化で7月の海面水温が高いから」を解説

栗栖成之防災士ライター
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ここ数日のニュースでは『梅雨末期の大雨』との解説が、増えてきていますよね。

確かに天気予報などでは、今週末から来週にかけて「梅雨開けが発表されるのでは」といわれています。

そのため、7月16日現在では正に「梅雨末期」といってよいでしょう。ではなぜ、梅雨末期になると豪雨になるのか、不思議に思いませんか?

そこで調べて見ると、4年前となる2020年7月に放送された、三重テレビ放送の『気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」』での解説が、とても分かりやすかったので紹介しましょう。

梅雨末期が豪雨になる理由を先にまとめてみた!

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先に、梅雨末期が豪雨になる理由をまとめると、次のようになります。

  1. 地球温暖化で太平洋側の海面水温が高い
  2. 7月には既に8月の真夏の海面水温になっている
  3. 海面から大気中に多くの水蒸気を供給している
  4. 太平洋高気圧の縁を流れる風が梅雨前線に湿った空気を大量に運ぶ
  5. 梅雨前線が活発になり豪雨をもたらす
  6. 梅雨前線が末期だから豪雨になるのではない
  7. 従来では低かった7月の海面水温が高くなり、梅雨前線を刺激するから豪雨になる
  8. それが7月なので梅雨末期と重なる

まとめるとこのようになります。では、まとめの内容を次から確認していきましょう。

梅雨前線が原因で起きた災害は7月の梅雨末期が多い

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梅雨前線による豪雨災害について、気象庁のサイトで調べて見ると、次のように7月に集中していることが分かります。

  • 2018年6月28日~7月8日:平成30年7月豪雨=西日本豪雨(7月9日ごろ)
  • 2020年7月3日~7月31日:令和2年7月豪雨=西日本から東日本、東北地方(7月31日ごろ)
  • 2021年7月1日~7月3日:令和3年東海地方・関東地方南部を中心とした大雨(7月16日ごろ)
  • 2023年6月28日~7月16日:令和5年梅雨前線による大雨=九州北部・中国地方(7月25日ごろ)

これらはすべて、梅雨前線が日本列島に停滞したことで起きた豪雨災害です。どれも大きな災害になっているため、記憶に新しい方も多いでしょう。

各項目の末尾の()内が、被害が最も多かった地域の「梅雨明け」が発表された日です。

これをみると確かに、梅雨の終わりごろに起きています。

三重テレビ番組の「三重大学大学院の先生の解説」が分かりやすい!

出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」
出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」

ではどうして、梅雨末期に豪雨になるのでしょう?不思議に思ったので調べて見ました。

しかし近年の情報では「梅雨明け直前に、梅雨前線の活動が非常に活発となる時期」と解説していることが多く、なぜ活発になるのかが分かりませんでした。

遡って調べていくと、2020年7月10日に放送された三重テレビの番組、気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」にて、三重大学大学院の先生が「なるほど!」と、納得のいく解説をされていました。

梅雨末期に豪雨になる理由は、太平洋側の海面水温が高いから!

出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」
出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」

解説では、梅雨末期だから大雨になる訳ではなく、地球温暖化によって7月の太平洋側の海面水温が高くなっているから、海からの水蒸気が多くなり、梅雨前線を刺激して豪雨になるとの解説でした。

つまり、梅雨明けする7月の時期に、太平洋高気圧の真下の海水温度が高くなっていることが、梅雨末期が豪雨になる理由だったようです。

太平洋側の水蒸気発生率が高い!

出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」
出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」

これは、太平洋側の赤い部分が「海から大気への水分を多く供給している」ことを証明している図です。

赤い部分は水蒸気が多く発生しており、この部分は黒潮が流れている部分と一致します。

太平洋高気圧が水蒸気を梅雨前線に供給する

出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」
出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」

太平洋を流れる黒潮の上空に大量に発生した水蒸気が、太平洋高気圧の縁を流れる風によって、日本列島にある梅雨前線に運ばれるため大雨が発生するとのこと。

また海面温度の高い黒潮は蛇行しており、この黒潮の蛇行も大雨の要因の1つといわれています。

2020年の黒潮の蛇行

出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」
出典:三重テレビ放送 気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」

これは番組内で紹介された、2020年の黒潮の流れです。黒潮の蛇行は2017年から発生し、2024年現在も蛇行は続いています。

気象予報士の「森 朗(もり あきら)氏」によるYahoo!ニュースでは「黒潮大蛇行の発生後は、ほとんどの地点で年間降水量が大蛇行前の平均を上回り、7月だけで見ると2倍から3倍近くに達している所もあった。」と解説しています。

そこで2024年7月12日と22日の黒潮の予測を見ると、以下のようになっていました。

2024年7月の黒潮の予測

出典:黒潮親潮ウォッチ
出典:黒潮親潮ウォッチ

これを見ると確かにまだ黒潮は蛇行したままで、7月12日でも日本近郊の海面水温は26度~28度。22日の予測では、29度~30度にも達しています。

これだけ、黒潮の海面水温が高ければ海面から大量の水蒸気が発生するため、大雨をもたらすのは当然といってもよいでしょう。

最後に番組を紹介!

最後に記事のネタ元になった2020年7月10日放送の、三重テレビの番組気象らぼ「梅雨末期の豪雨、なぜ多い?」(10:54)を、紹介しておきましょう。

時間のある時に見ると、当時の予言が的中していることも分かりますよ。

防災士ライター

これまで、洪水・土砂災害・地震・津波・高潮など、あらゆるハザードマップを作成。2017年に防災士とひょうご防災リーダーの資格を取得。2014年からWEBライターとして活躍し、現在では経験と資格を活かしてさまざまなメディアに多ジャンルにて記事を投稿中!

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