【南海トラフ地震|兵庫県被害想定:西播磨地域①】赤穂市で死者数484人|3市とも津波の被害が甚大
南海トラフ地震による兵庫県内の被害想定は、2014年(平成26年)6月に公表した内容が最新です。
そのため、県内でどのような災害が起きるのか、知らない方や忘れてしまった方も多いはず。
そこで、地域ごとの被害想定のまとめを、11年ぶりに改めて紹介しています。
今回は、4市3町で構成される西播磨地域の中でも、海に面している「相生市・たつの市・赤穂市」における『西播磨地域①の被害想定のまとめ』を紹介します。
3自治体の地震と津波、人的被害の紹介となるため、ボリュームが多くなっています。ご自身が関係する自治体だけでも、ご覧頂けると幸いです。
たつの市の一部地域で震度6強!ほとんどの地域で震度5強の揺れが予想
南海トラフ地震では、たつの市の一部地域で震度6強の揺れが発生しますが、ほとんどの地域で震度5強の揺れが襲います。3市の震度分布一覧を確認してみましょう。
▼3市の震度分府一覧
- 震度 |6強| 6弱| 5強 |5弱以下
- 相生市 |0.0|10.8|72.5|16.7
- たつの市|1.1|21.4|57.3|20.2
- 赤穂市 |0.0|29.0|35.7|35.3
▼3市の震度分布グラフ
このグラフは「相生市・たつの市・赤穂市」の3市における、震度別分布率をまとめたものです。
たつの市内の1.1%のエリアで最大震度6強の揺れが襲いますが、ほとんどの地域で震度5強の揺れが最も多いのが分かります。
ここで気象庁が公開している「震度階級関連解説表」から、震度5弱~6強まで人が感じる、それぞれの揺れの状況を紹介しておきましょう。
・震度5弱:多くの人が、身の安全を図ろうとする。一部の人は、行動に支障を感じる。
・震度5強:非常な恐怖を感じる。多くの人が、行動に支障を感じる。
・震度6弱:立っていることが困難になる。
・震度6強:立っていることができず、はわないと動くことができない。
▼西播磨地域、4市3町の位置関係
播磨地域のなかでも西播磨地域は構成される市町が多く、今回は海に面しており南海トラフ地震の際に津波被害が想定されている、相生市・たつの市・赤穂市をピックアップしています。4市3町の位置関係は、上図のとおりです。
相生市の震度分布図|市内約73%で震度5強
相生市はペーロン祭で有名な沿岸部から、山間部まで揃う自然豊かなまちです。
相生市の震度分布図を見ると、市役所周辺から沿岸部にかけて震度6弱の揺れが予想されていますが、エリアは約11%と広くありません。その代わり、市域の約73%で震度5強の揺れが襲います。
たつの市の震度分布図|沿岸部の一部エリアで震度6強
たつの市も相生市と同じく沿岸部と山間部が共存するまちで、その沿岸部の東端に位置する一部エリアでは、最大震度6強の揺れが襲います。
この地域は姫路市と隣接する場所であり、姫路市の震度分布図を確認すると同様に震度6強の想定です。
市役所のある市街地では震度6弱の、強い揺れが襲うため注意が必要です。山間部に向かうほど震度は小さくなりますが、市域全体の約57%が震度5強の揺れとなります。
赤穂市の震度分布図|市街地の約29%で震度6強が襲う
赤穂市の震度分布図では、赤穂市役所や赤穂浪士の討ち入りで有名な赤穂城のある市街地の約29%で、震度6強の揺れが襲います。
赤穂市はコンパクトなまちで、人口の大部分がこの市街地に集中しているため、家具の固定は必須といえるでしょう。また、歴史的価値のある赤穂城跡の史跡への影響も心配です。
相生・赤穂市には最高2.8m、たつの市には最高2.3mの津波が襲う!
南海トラフ地震では、相生市と赤穂市で最大2.8m、たつの市では最大2.3mの高さの津波が、最短120分で到達します。
この内、「防潮門扉等一部閉鎖、津波が堤防を越流した場合破堤あり」のケースによる津波の予想では、2m以上浸水する地域が44ヘクタールと、たつの市が最も多いです。
▼3市の最高津波高と最短到達時間
- 相生市 :2.8m⇒最短120分
- たつの市:2.3m⇒最短120分
- 赤穂市 :2.8m⇒最短120分
▼3市における津波による浸水面積グラフ
このグラフは「防潮門扉等一部閉鎖、津波が堤防を越流した場合破堤あり」の条件で算出された予想を採用したものです。
被害想定では「浸水深1m以上の区域に残っている人は、津波に巻き込まれればほとんどが死亡すると考えられる」とされていることから、浸水深1m以上に当たる地域では地震発生から120分以内に、安全な場所に避難しなければなりません。
特にたつの市では、2m以上の浸水が44ヘクタールも予想されていることから、浸水が予想されている地域では、迅速な避難が求められます。
相生市の浸水予測図
相生市の浸水予測図を確認すると、海部に突き出ている地域には平地がほとんどないため、津波の影響を受けていません。
その代わり、工場地域や市街地では浸水が想定されているため要注意です。市内の中央から北部地域では津波の影響を受けないため、早めに避難しましょう。
自宅付近が浸水するかは、兵庫県CGハザードマップで確認できます。
たつの市の浸水予測図
たつの市の浸水予測図を確認すると、東部では室津港周辺は津波の影響を受けてしまいます。
ただし、そのほかの沿岸部は平地がほとんどないため、浸水は限定的です。
また、2m以上の浸水が予測されている地域は、田畑であり住宅はほぼないため、地震発生からすぐにその場を立ち去れば、被害にあわずに済みます。
ただし、南部の住宅地は津波の被害が予測されているため、たつの市役所付近まで迅速に避難することをおすすめします。
赤穂市の浸水予測図
赤穂市の浸水予測図では、市街地の浸水に要注意です。市内全域にわたって浸水が予測されているため、自宅が浸水するのか兵庫県CGハザードマップで把握することが重要です。
また、赤穂市はコンパクトにまとまっているため、津波避難場所や避難ビルをしっかり確認しておきましょう。
市内西部の福浦地区は、範囲が狭いため特に要注意です。ただし、1m以上の浸水範囲の広い地域は田畑がほとんどなので、この場所での人的被害は起きないと考えてよいでしょう。
人的被害は「冬18時」赤穂市で死者数484人!相生・たつの市でも200人超
人的被害は、相生市・たつの市でも死者数は200人を超えており、赤穂市では「冬18時」の発災時刻において、死者数が484人と3市の中で最多です。
兵庫県では「冬5時」「夏12時」「冬18時」の3パターンの発災時刻で、被害想定を公表しています。
ここでは、それぞれの時間帯における原因別の死者数を、グラフでまとめました。
相生市の死者数グラフ
相生市では「夏12時」にて死者数が264人の予想ですが、約99%に当たる262人は津波が原因で亡くなる予想です。
地震の揺れや液状化、津波によって半壊する家屋は1,271棟にもおよぶため、損傷した家屋に津波が押し寄せることで、死者数が増えていると予測できます。
たつの市の死者数グラフ
たつの市では「冬5時」での死者数が234人と多く、約94%に当たる220人が津波によって死亡します。
全壊建物は483棟、半壊においては3,169棟もの家屋が予想されているため、損傷した家屋に冷たい津波が押し寄せて死亡に至るのでしょう。
赤穂市の死者数グラフ
赤穂市では「冬18時」での死者数が484人と多く、約93%に当たる452人は津波が原因で死亡する予想です。
また、赤穂市での特徴は3パターンすべての時間帯で、津波による死者数が「452人」と同じ点で、他の自治体では同じ人数は確認できていません。
何らかの要因があると考えられますが、被害想定では解説がありませんでした。
建物の全壊は405棟、半壊は4,393棟と多く、揺れと液状化で3,464棟が被害を受けます。
最後までご覧頂き、ありがとうございます!
今回は、西播磨地域で津波の被害を受ける「相生市・たつの市・赤穂市」の被害想定のまとめを紹介しました。
中播磨では姫路市のみが津波被害を受ける予想でしたが、西播磨では3市とも大きな津波被害を受けるようです。
ただ、津波の到達までは120分の猶予があるため、事前に自宅が津波の影響を受けるのか把握し、迅速に避難すれば死者数も大きく減らせるはずです。
しかも、この想定から10年以上が経過し、新しい住宅などは耐震や免震構造になっているため、被害を受ける建物も少ないはず。
3市の津波の影響を受ける地域の方は、兵庫県CGハザードマップで津波の浸水域を詳細に把握して、自分や家族の命を守りましょう。