「ネタバレ禁止」で有名な、ミセスのライブも動画撮影解禁。日本のライブの常識が変わるか。
今月から始まったミセスのライブ「Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”」において、スマホによる動画撮影が解禁され、ファンの間でも大きな話題になっているようです。
ミセスことMrs. GREEN APPLEといえば、昨年「ケセラセラ」が日本レコード大賞を受賞したことでも有名ですが、今年も「ライラック」でストリーミングチャートの首位を16週連続で獲得中で、ライブツアー映画も興行収入15億円の快挙を成し遂げ、名実共に日本を代表するアーティストの一組と言えます。
そんなミセスが、今回のライブでスマートフォンでの公演中の写真・動画撮影を可能とし、さらに撮影された写真・動画は各種SNS・ブログ等への投稿もOKと明確に宣言したのです。
参考:≪Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”≫撮影とネタバレに関するご案内
ミセスのこの宣言は、日本の音楽業界に与える影響が間違いなく大きいと言えます。
日本でも徐々に広がりつつあるライブ撮影OK
もちろん、海外ではすでに参加者がライブをスマホで撮影したり、撮影した動画をSNSにシェアしたりするというのは普通の光景です。
また、そうした海外の環境を踏まえ、日本でもライブで撮影OKという選択をするアーティストは徐々に増えてきています。
例えば今年の5月から初のワールドツアーを開始したXGは、単に撮影OKにするだけでなく、ファンに対して積極的にSNSへのシェアを促したことでも話題になりました。
参考:XGのワールドツアーが投げかける、日本だけ逆転するライブ撮影禁止のギャップ
特に当時未発表曲だった「Woke Up」ですら動画撮影OKとしていたことには、筆者もとても驚いたことを良く覚えています。
また、8月には日産スタジアムに2日間で14万人を動員するライブを開催した藤井風さんが、参加者による動画撮影をOKにした上に、YouTubeでの無料生配信も実施したことはXG以上に日本のアーティストに大きなインパクトがあったと言えるでしょう。
参考:藤井風のスタジアムライブが、動画撮影OKで無料生配信も実施の「神対応」だった背景
XGや藤井風さん以外にも、最近ではアンコール曲限定で動画撮影OKにする日本のライブも増えていますし、そういう意味では、ミセスの撮影OKもその流れの一つと言うこともできます。
(注:読者の方から、ご指摘いただきましたが、ミセスも過去に実施したライブでは写真撮影OKのポリシーを取られていたこともあるそうです。)
トップレベルにネタバレに厳しいグループ
ただ、それを踏まえても、今回のミセスの動画撮影解禁の衝撃が非常に大きいと考えられるのが、実はミセスのこれまでのライブは日本のアーティストの中でも、トップレベルにネタバレに対して厳しい姿勢を取ってきた歴史がある点です。
象徴的なのは、昨年開催された7月のツアー“NOAH no HAKOBUNE” の際に、明確にファンに対して「”ネタバレ禁止”のお願い」というお知らせを公開し「公演を楽しみにしているお客さまの為にセットリスト及び具体的な内容を明言しないようご注意ください。」と、セットリストや内容についてのネタバレすら禁止していることでしょう。
つまりミセスは、ライブで撮影禁止なのは当然のことで、他のライブであれば共有されることが普通のセットリストやライブの内容ですらシェア禁止という、最もライブのネタバレに厳しいグループだったわけです。
しかも、ミセスのこの厳しいスタンスは、今年に入っても継続していました。
昨年末から今年3月にかけて実施されていた”The White Lounge”というコンセプトツアーでも、明確に撮影・録音行為の禁止と、ネタバレ禁止がサイトに明記されていたのです。
参考:Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR “The White Lounge”
つまり、実はつい半年前まで、ミセスは日本でもトップレベルにライブのネタバレに厳しいグループだったわけです。
5月に姿勢を転換
実はこのミセスの姿勢が大きく転換したのは、今回のライブではなくその前の5月9日に実施された『Mrs. GREEN APPLEオリジナル音源』動画利用に関する注意事項の改定のタイミングです。
このタイミングで、ミセスは「動画利用を取り巻く時代の状況などを鑑み、またファンの皆様に、よりMrs. GREEN APPLEの音楽を楽しんでいただくために」と銘打ち、Mrs. GREEN APPLEのYouTubeやCDのオリジナル音源や、公式サイトやYouTubeなどにアップしている写真・映像等を、ファンが動画内で表示することを許容するという内容の改定を行ったのです。
参考:ミセスもLDHもEBiDANも。徐々にファンへの許容度を高める日本の「推し活」の現在地
おそらくは、この改定を行った後の、ファンの方々のSNS上の動画利用がミセスの活動に良い影響があるということが確認できた結果、今回のライブで一気にファンの動画撮影まで解禁するという大転換に踏み切ることができたのでしょう。
もちろん、今回の“Harmony”が撮影OKにしやすい内容だったからと言う可能性もありますので、また”White Lounge”のようなコンセプトライブでは厳しいネタバレ禁止にするという使い分けになる可能性もあります。
それに、XGや藤井風さんが国内のライブを動画撮影OKにしたのは、その後に海外ツアーが予定されている関係もあったことを考えると、ミセスも今後海外ツアーの発表があるのかもしれません。
いずれにしても、昨年のレコード大賞受賞者でもあり、トップレベルにライブのネタバレに厳しかったミセスが、今回ライブの動画撮影解禁に踏み切ったインパクトは決して小さくないと言えます。
今回のミセスの“Harmony”のライブは11月下旬まで続き、最終的に20万人を超える規模の動員となるようですから、まずはこのミセスのライブの動画撮影解禁の反響がどれぐらい広がっていくのかに注目したいと思います。