任期延長のためのダブル選挙が任期を縮めるリスクを生む
フーテン老人世直し録(214)
卯月某日
安倍総理が衆参ダブル選挙をやりたい事は前から分かっていた。ただ「やりたい」のと「できる」のとでは意味が違う。やりたくともできなかった総理をこれまで何人も見てきた。解散は総理の専権事項と言うが、だからと言って誰でも解散が出来る訳ではない。
また安倍総理が中曽根元総理のダブル選挙にあやかりたいと思っている事も知っていた。中曽根氏はダブル選挙で圧勝し、それによって自民党の党則を変え、3期目の続投を認めさせようとした。安倍総理も自分の任期の先にある東京オリンピックまで総理を続けたい。二人ともダブル選挙の目的は任期延長である。
中曽根氏は「死んだふり解散」でダブル選挙に圧勝したが、しかし金丸幹事長の政治術の前に党則改正は見送られ、1年間の任期延長に終わった。「中曽根VS金丸」の暗闘をフーテンは誰よりも近くで見てきたが、政治のすさまじさと見事さは簡単に言い尽くせない。政治未熟の安倍総理など逆立ちしても真似はできないと思っている。
それでも安倍総理は真似をしたい。真似の片鱗は新党大地の鈴木宗男氏を「買収」したところに見える。中曽根元総理は田中角栄氏の側近だった二階堂進氏に選挙当選を保証してダブル選挙反対の一角を崩した。いわば「買収」である。さらに竹下登氏にはスキャンダルの傷口に塩をすり込む「脅し」の手口を使った。おそらく安倍総理はそれも真似するに違いない。ダブル選挙は「買収」と「脅し」で実現されるのである。
しかしそれでも中曽根元総理と安倍総理とでは役者の格が違う。そして目につくのは安倍総理が選挙に突き進むための仕掛けにボロが見え始めた事である。消費増税を先送りするためわざわざ米国から呼んだ経済学者から批判的なトーンが漏れ、また選挙の障害にならぬよう一時的に工事を中断した沖縄の辺野古基地建設をオバマ大統領から批判された。米国が安倍政権に冷ややかなのである。
それでもここまでくれば消費増税の先送りと衆議院解散を安倍総理はやるしかないだろう。やらないと安倍総理は解散がしたくともできない「無能の総理」の烙印を押される。だがそこには自らの任期を短くするリスクが待ち受けているのもまた事実である。
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