ノート(220) 衝撃が走った広島刑務所の脱走劇 矯正施設に与えた影響は?
~続・工場編(13)
受刑260/384日目
衝撃の脱走劇
その後の1週間は「成人の日」の祝日を絡めた3連休もあったが、平日は年末年始に郵送で差し入れられた大量の差し入れ本の検査や配本作業に没頭した。いつのまにか刑期も3分の2を経過し、残すところ3分の1となった。
そうした中、この日の昼食後、図書計算工場に併設された食堂のテレビで休憩時間中にNHKニュースを見ていたところ、衝撃的な事件が飛び込んできた。白昼堂々、広島刑務所から受刑者が脱走したという。
刑務所を囲む高い塀やフェンスセンサー、監視カメラは、受刑者の脱走を防止するとともに、運動時間にあわせて関係者がタバコやライター、薬物、凶器などを投げ込むことや、外からの侵入者を防ぐためのものでもある。
その意味で、網走の二見ケ岡農場や広島の有井構外泊込作業場、千葉の市原刑務所、松山の大井造船作業場といった開放処遇をしている「塀のない刑務所」であれば、脱走などの難易度は低い。
しかし、高い塀に囲まれ、分厚いコンクリートの壁や鉄格子、何重もの施錠で一般社会から完全に隔絶された広島刑務所の場合だと、話は別だ。
このときのニュースは第一報だったが、その後の続報で事件の詳細が判明した。逃げたのは窃盗団の首謀者として金庫破りなどを繰り返していた中国籍の40歳の男だった。警察官から職務質問を受けた際、けん銃を発砲して殺害しようとし、殺人未遂や公務執行妨害などの罪で懲役23年の実刑判決を受け、約3年前から広島刑務所で服役していた。
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