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大みそかに85歳の男性が水深5センチの川で溺死…なぜ? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

大みそかの朝、鳥取市の市道沿いの川で自転車ごと倒れている85歳の男性が発見され、死亡が確認されました。前日の夜から行方不明になっていたもので、死因は溺水吸引による窒息でした。警察は川に転落したとみて、その経緯を捜査しています。もっとも、水深はわずか約5センチしかありませんでした。なぜそれでも溺死に至ったのか、浅い川や用水路などへの転落事故の危険性を含め、理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

「川は、幅が約2メートル、道路から水面までの高さは約2.5メートルで、水深は約5センチだった」
出典:TSKさんいん中央テレビ 2024/12/31(火)

「男性の死因について、全身打撲による全身多発骨折に起因する体動不能により溺水吸引し窒息したものと判明した」
出典:BSS山陰放送 2025/1/4(土)

「手を怪我してしまっていたり、手が動かせないほどの狭い場所に挟まってしまった場合には水から抜け出すことができない」
出典:となりのカインズさん 2023/8/11(金)

「体や顔が用水路の幅にぴったりとはまると、水の流れがせき止められて水深は上昇し、溺れる原因になる」
出典:読売新聞オンライン 2022/6/9(木)

エキスパートの補足・見解

70~80代の高齢者が自転車を運転中に道路沿いの川や用水路、側溝、畑などに転落して死亡する事故が相次いでいます。街灯がなく、暗くて路面の見通しも悪い夜間に柵やガードレールが設置されていない場所で発生しており、死因は溺死や低体温症、転落に伴う外傷性くも膜下出血、頸髄損傷などです。

建設現場では「1メートルは一命取る」という労災防止のための標語があります。その程度の高さでも落ち方次第で命を落とす危険性があるので、油断してはならないという戒めです。今回のケースでは約2.5メートルの高さから自転車ごと川に転落したとされており、それだけでも死傷のリスクが高い事故でした。

しかも、うつ伏せで倒れて手首や腕などを負傷していると、たとえ水深が浅くても手をついて顔を起こすことができず、抜け出せずにそのまま溺死してしまいます。予算の関係で行政による柵やガードレールの設置なども追いついていない状況です。

高齢者がいる家庭では、夜間は自転車に乗らないようにし、やむを得ず乗る場合でもヘルメットを着用した上でライトをつけ、周囲の状況を十分に確認しながら安全運転に努めるように注意喚起しておく必要があります。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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