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2ヵ月前に解雇されたベテランが、解雇したチームと同地区のライバルへ移籍する

宇根夏樹ベースボール・ライター
ロビンソン・カノー May 20, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月10日、アトランタ・ブレーブスは、金銭と交換に、サンディエゴ・パドレスからロビンソン・カノーを獲得した。

 カノーは、5月8日にニューヨーク・メッツから解雇された。その5日後にパドレスへ入団し、6月2日にマイナーリーグ降格を拒否してFAとなり、8日後にマイナーリーグ契約でパドレスへ戻った。この経緯については、以下の記事で書いた。

「4000万ドル以上の契約が残るカノーを外す以外に、メッツの選択肢はなかったのか」

「メッツから解雇されたカノーを迎え入れ、パドレスはどう起用するのか」

「8日前に退団したベテランが、同じ球団と契約を交わす。なぜ、彼は戻ってきたのか」

 解雇から2ヵ月後に、カノーは同じ地区へ戻るというわけだ。メッツとブレーブスは、どちらもナ・リーグ東地区のチームだ。7月10日を終え、メッツは首位、ブレーブスは1.5ゲーム差の2位に位置している。6月を迎えた時点では10ゲーム以上の差があったが、ブレーブスはそこから14連勝を記録するなどして、メッツに迫りつつある。

 今シーズン、カノーは、メッツとパドレスで12試合ずつに出場し、打率.195(41打数8安打)と打率.091(33打数3安打)に終わった。計11安打のうち、長打は、メッツで打ったホームランが1本だけだ。パドレス傘下のAAAでは、21試合で打率.333(96打数32安打)を記録し、3本のホームランと5本の二塁打を打っているが、メジャーリーグではない上、サンプル数も少ない。しかも、現在の年齢は39歳だ。

 ただ、かつてのカノーは、メジャーリーグを代表する二塁手だった。通算の打率と出塁率は.301と.351、OPSは.840だ。335本のホームランと571本の二塁打を含め、2635本のヒットを打っている。

 復活とまではいかなくても、往年のバッティングが少しでも甦れば、とブレーブスは考えているのではないだろうか。いずれにせよ、ブレーブスのリスクは皆無に等しい。カノーの年俸の大半は、メッツが支払う。

 ブレーブスでは、二塁手のオジー・オールビースが、6月半ばに左足を骨折した。そこからは、オーランド・アルシアが二塁を守っている。オールビースが戻ってくるのは、来月の中旬以降。カノーは、アルシアと併用されることになりそうだ。

 カノーからすると、今回の移籍は、巡ってきた最後のチャンスかもしれない。メッツとパドレスに続き、ブレーブスでも打てなければ、短期間で解雇され、そのままキャリアを終えることになりかねない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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