大雪のもとは日本海 1日1センチ以上の海水が蒸発
今日(12月24日)の午後、気象庁と国土交通省共同で大雪に対する緊急発表がありました。事前に、二つの省庁が合同で警戒を呼び掛けるのは、今回の日本海側の大雪が災害級になる可能性が高いからです。25日(土)~27日(月)にかけて、北日本から西日本の日本海側は大雪に警戒が必要です。
1台の立ち往生が数千台規模の渋滞に
国土交通省が特に心配しているのは、雪の降り方が急激に強まって車が立ち往生してしまうことです。
大雪による立ち往生は毎年のように起こりますが、その原因の多くは冬用タイヤや、チェーンを装着していない車によって引き起こされます。昨年12月には、チェーンを装着していない1台のトラックが立ち往生したことをきっかけに、関越道で2千台以上がまきこまれる大渋滞が発生しました。この時には、完全解消までに50時間以上もかかったといいます。
たった1台でも多くの人に迷惑をかけるわけで、雪道を”なんとかなる”という思い込みで進むと、とんでもない結果を引き起こすことになります。
大雪というと、自分が被害に遭う事を考えがちですが、こと車の運転に関しては、自分が加害者になる可能性も頭に入れて、雪が降る前の対応をお願いしたいと思います。
今回の雪は、早いところでは25日(土)の朝から始まって、少なくとも27日(月)までは日本海側の広い範囲で強く降る予想です。
雪の量は、一番多い北陸で24時間に70センチ~100センチの見込みで、一時間に3〜4センチの積もり方をすると考えられます。まさに、見る見るうちに雪が積もるという状態になるわけで、雪が降りだしてからの対応では間に合わないと言えるでしょう。
日本海から1日1センチの水蒸気が蒸発
今回の上空の寒気は今シーズン一番とか、ここ数年でも一番とか言われています。寒気の強さには、いくつかの指標がありますが、能登半島・輪島上空約5500メートルの気温で見るとマイナス36度以下で、記録的と言うほどではありません。
しかし、もう一つ重要なのは日本海の水温です。もともと12月は冬の入り口で海水温がまだ高いのですが、今年は例年に比べても1~2度も高く、日本海中部で13度ほどもあります。上空の寒気が強いと、日本海は相対的にお風呂のお湯のように暖かく、蒸発も盛んになります。
観測結果をもとに算出されたデータによると、この時期の日本海からの蒸発量は一日あたり10ミリ=1センチほどにもなります(下図参照)。日本海全体の面積が約100万平方キロメートルですから、そこから1センチ分となるとその水蒸気量は莫大なものになります。それが大雪の源(みなもと)というわけです。
また大雪の起こる場所で特に警戒を要するのは、日本海寒帯気団収束帯の雪雲がかかる地域です。
大陸から寒気が流れ込んでくる時に、朝鮮半島の長白山脈で二方向に分かれた風がもう一度集まる(収束)場所があります。これを日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)といい、この場所は時間や風向きによって北陸地方だったり山陰地方だったりします。
今回はJPCZが若狭湾付近に向かってくる時間帯もあります。となると琵琶湖から関ケ原付近にも雪雲がやってきて、新幹線などの遅延もあるかも知れません。
動かないことが防災
大雪に限らず、気象災害が予想されるときの最も有効な手段は、できるだけ安全な場所に留まって行動を控えるということです。自分が行動を控えると、その分、社会的インフラに余裕が生まれます。
車の数が普段の半分になれば渋滞も起こりにくくなるわけですから、動かないというのは災害時には積極的な防災と言えるでしょう。国交省からも、冬用タイヤの装着やチェーンの携行、早めの装着に加え、大雪時には不要不急の外出は控えるよう呼びかけられています。
今後とくに警戒を要する地域と時間帯は以下の通りです。最新の情報にご注意ください。
参考
日本海海面からの蒸発量について 原見 敬二「天気」1969年10月