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調味料ほぼ塩だけ。オーブントースターで1本からできるローストチキン

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト

本日はクリスマス・イブ。このシーズンになると精肉売り場や惣菜売り場に丸鶏や骨つき鶏もも肉が並びます。クリスマスの商品売り場がこれほど鶏一色になるのは、日本ならではの現象です。

詳細は昨日公開された「日本人がクリスマスにチキンを食べるようになったのは、意外に最近のことだった」にも書きましたが、日本人がクリスマスに鶏を食べるようになったのは、思いのほか最近のこと。骨付き肉のローストを日本の一般家庭で行うようになってから、半世紀足らず……ということは、いまだ骨付き鳥の調理には伸びしろがあるということになります。

鶏の骨付き肉の調理において、重要なのは以下のポイントです。

・肉への加熱はやさしく

骨つき鶏のローストは加熱がもっとも重要なポイントです。皮目は水分を抜くように加熱し、身にはやさしく熱を加えるよう心がけましょう。

・でも骨にはしっかり火を入れる

骨つき肉は特に骨周辺が熱が通りにくい。強火で連続して長い時間焼くと、中まで火が通る前に表面や表面近くに火が入りすぎます。特に鶏の骨つき肉はじっくり時間をかけて熱を加えることが必要です。

・味つけはシンプルでいい。

鶏肉は淡白な味わいの肉。複雑な合わせ調味料を使わなくても十分おいしく仕上がります。つけ合わせの香味野菜や焼くときに必要な油の力を借りましょう。

では早速、以下でオーブントースターでできる骨つき鶏のローストのレシピを紹介していきましょう。今回は超かんたんにできる簡易版に加えて、手順の目的なども加えたやたら詳細な版も上げておきますので、ご参考になさってください。

●オーブントースターで1本からできるローストチキン(簡易&シンプル版)

材料 1人前

骨つき鶏もも肉 1本

にんにく 2片

玉ねぎ(中) 1/2個

オリーブ油 大2

塩 3つまみ(小さじ1/2強)

作り方

1.鶏もも肉は身の側から骨に沿って切り込みを入れ、身の側を中心に塩をすり込む。全体に塩がなじんだらオリーブ油大さじ1を全体にまぶす。玉ねぎは牛丼の具材くらいの厚さを目安にスライス。にんにくは1片を4~6等分を目安に適当に切る。

2.オーブントースターに入るサイズのステンレスのバット(なければアルミホイルで箱型を作る)に玉ねぎとニンニクを敷き、オリーブ油大さじ1を全体に和え、その上に鶏もも肉を置く。

3.加熱していないオーブントースターに2を入れ、10分間加熱する。加熱後は扉を開けずに10分間そのまま放置する。この工程をもう1回繰り返し、最後に3分加熱する。

4.皿に盛る。

さてここからはなぜその手法が必要なのか狙いも含めた超詳細版です。

●オーブントースターで1本からできるローストチキン(詳細&材料多め版)

材料 1人前

骨つき鶏もも肉 1本(約300g)

玉ねぎ(中)1/4個(約50g)

れんこん 50g

アスパラガス 1本

にんにく 2片

タイム(あれば) 数本

オリーブ油 大2

バター(あれば) 小さじ1

塩 3g(小さじ1/2強)

作り方

1.鶏もも肉は身の側から骨に沿って切り込みを入れ、身の側2:皮目1の比率を目安に塩をすり込む。全体に塩がなじんだらオリーブ油大さじ1を全体にまぶす。にんにくはつぶす。玉ねぎは7mm程度にスライス、れんこんは最厚部1cmを目安に乱切り、アスパラガスは長さ3~4cmに切る。

解説

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骨付きの鶏肉は骨まわりに火が入りにくい。骨周りに1本切り目を入れることで、全体に均等な火入れを目指す。皮に強めに熱を当てたいので、皮は直火の当たる上向きに。生の鶏皮は水分が多く比熱が大きい(熱を伝えるのによりたくさんのエネルギーが必要)。比熱の小さい油脂分を皮の表面に塗って加熱のサポート材とし、皮をパリッと仕上げたい。塩は総重量の約1%。本来は骨がある分やや塩が強めになるが、加熱時に肉汁とともに塩が落ちるのでトータルでは相殺される。しっかりした"先味"を演出するため、舌の当たる身の方に多めに塩味を入れる。

2.オーブントースターに入るサイズのステンレスのバット(なければアルミホイルで箱型を作る)にカットした野菜を敷き、全体にオリーブ油大さじ1を和えてタイムを置き、その上に鶏もも肉を乗せる。

解説

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鶏ももは内部までやさしく火を通したい。熱源との距離が近いオーブントースターの天板に直接乗せると、身に火が強く当たりすぎるので、野菜を緩衝材とする。ただし野菜をそのまま焼くと、干からびてしまう。表面をオイルでコーティングすることで、熱伝導の効率を上げ、かつ水分が抜けすぎないよう焼くことができる。ちなみに、日本では肉に合わせるハーブというとローズマリー一辺倒という印象があるが、鶏のような淡白な肉にはタイムをおすすめしたい(入手できなければなくても可)。

3.加熱していないオーブントースターに2を入れ、10分加熱する。扉を開けずに10分間そのまま放置する。アスパラガスのように火が入りやすい野菜はこのタイミングで追加。2回めの加熱直前に鶏皮の上にバターを塗り、もう一度加熱10分→扉を開けずに休ませ10分の工程を繰り返し、最後に3分加熱する。

※上記はサーモスタットがついていて、ときどきヒーターが切れるタイプの場合。サーモスタットがついていないタイプのオーブントースターなら加熱時間7分、休ませ時間7分を1セットとして換算し、セット数を3セットに。

解説

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鶏肉のように内部まで火を入れたい肉は、ゆっくり温度を上げていきたいので予熱なしのコールドスタート。いったんスイッチが落ちた後の10分でもじっくり熱を加えたいが、庫内の小さなオーブントースターは扉を開けるとすぐ温度が下がってしまう。加熱直後は扉を開けてはいけない。扉を開けていいのは次に加熱する直前、つまりもっとも温度が下がっているタイミング。

4.皿に盛る。つけ合わせの野菜はそれぞれ分けて皿に盛り、肉汁はスプーンで鶏の上からかけ、香草を乗せる。

※つけ合わせのアレンジパターンとしては、焼き上がったにんにく、玉ねぎ、肉汁を小鍋に入れ火にかける。軽く煮詰めた後レモン汁大さじ1を加えて酸味のあるつけ合わせにする。もしくはレモン汁の代わりに分量外の醤油・みりん各小さじ1を加えて、甘辛いつけ合わせに仕上げて、少し濃い目の付け合わせを添える手も。

高価な素材や特別な調理器具ばかりが、肉をおいしくするわけではありません。クリスマスチキンは、ちょっとした基本を押さえれば、ふだん身のまわりにある材料でも十分おいしくなるのです。

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さてここからは当記事にも関わるイベントの告知です。クリスマスが終わっても、年末年始、ホームパーティーで腕をふるう機会も増える季節です。松浦達也が実演、レシピを公開する、実食つき肉イベントを1月31日(金)に開催します。

詳細とお申し込みは以下のリンク(Pass Market)から。席数が限られているのでお早めに。

松浦達也の「肉好きさん、全員集合!」

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※本セミナーはYahoo!ニュース 個人が支援しているものです。

編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

食とグルメ、本当のナイショ話 -生産現場から飲食店まで-

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