JR東日本最南端!風格ある木造駅舎は戦中派 伊東線・伊豆急行線 伊東駅(静岡県伊東市)
関東・東北・甲信越の幅広いエリアに路線を張り巡らし、1600以上もの駅を持つ日本最大の鉄道会社・JR東日本。その路線網の中で最も南にあるのが伊東駅だ。熱海で東海道本線から分岐する伊東線の終点で、当駅以南は伊豆急行線となる。
伊東駅は昭和13(1938)年12月15日開業。駅舎はその時建てられたもので、今年の12月で86年を迎える。昭和13(1938)年と言えば前年に始まった日中戦争がどんどん激しくなっていく「戦時下」で、装飾を省略した駅舎の造りにもその影響が感じられる。とはいえ、太平洋戦争開戦後に比べればまだまだ余裕のあった時代で、だからこそ築85年を経てもしっかりとしている立派な駅舎を建てることができたのだろう。
左右対称のデザインが美しい駅舎は一部二階建てで、改札部分のみ吹き抜けとなっていて天井が高い。このような造りの駅舎は戦前~戦後の主要駅に多く見られ、現存例としては横須賀線の衣笠駅と久里浜駅、宇部線の宇部新川駅などが似たような雰囲気だ。
改札前に立って上を見上げてみると天井の太い梁が目に入り、木造駅舎の構造がよくわかる。駅前側・ホーム側ともに明り取り窓が設けられているが、これも天井の高い駅舎ではよく見かける造りだ。
駅舎内には土産物店と伊東市観光協会、BECK’S COFFEE、NewDaysが入居しており、常に多くの観光客で賑わっている。さすがは温泉地や海岸などのリゾートへの玄関口といった雰囲気だ。みどりの窓口ももちろんあるが、営業時間は9時から18時だ。
派手な意匠が目立つ戦前の観光地駅舎(例:ログハウス風の大月駅、ハーフティンバーの川湯温泉駅、社殿風の弥彦駅)と比べると控えめな印象を受けるデザインの伊東駅だが、装飾が全くないわけではない。みどりの窓口横やホーム側の壁には鉄平石が貼られているのだ。鉄平石による装飾は伊東線内の他の木造駅舎でも見られるので、各駅を見比べて共通点を探してみるのも楽しいだろう。
ホームは2面3線。駅舎側の1番線を伊東線から伊豆急行線に直通する下り伊豆急下田方面行きが使用し、2番線が主に伊東線熱海方面への上り折り返し列車、3番線が伊豆急行線から伊東線熱海方面への直通列車と、伊豆急行線方面への折り返し列車といった風に使い分けられている。伊東線はJRの路線ながら線内完結の列車にも伊豆急行線の車両が使用されることが多く、伊豆急行線の一部であるかのような雰囲気だ。JRの普通列車なのに昔の東急の車両や特急並みの設備を備えたリゾート車両に乗ることができる。
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