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京浜東北線、房総地区と渡り歩き三度目の人生を送る元「走ルンです」209系 伊豆急行3000系

清水要鉄道ライター
Y1編成 伊豆急下田方の先頭車 クハ3051

JR伊東線の終点・伊東を起点に、伊豆半島東側を走って南端の伊豆急下田駅に至る私鉄・伊豆急行。普通列車の主役は専ら親会社・東急電鉄の中古車・8000系だが、2年前に2本8両だけ新入りが加わった。JR東日本から譲り受けた「3000系」だ。

Y1編成 伊東方の先頭車 クハ3001
Y1編成 伊東方の先頭車 クハ3001

3000系は令和4(2022)年4月30日より運行開始。塗装は2100系「リゾート21」でかつて使用されていた青と赤の「アロハ電車」で、海側に赤、山側に青が使用されている。ウミガメ、ハイビスカス、イルカ、モンステラ、魚をあしらった模様が楽し気な印象だ。模様の中には伊豆急行のマスコットキャラクター「いずきゅん」も隠れているので、探してみるのもいいだろう。4両編成2本8両(Y1編成・Y2編成)が導入されており、塗装は2本とも同一仕様だ。

稲梓で離合する3000系と8000系
稲梓で離合する3000系と8000系

3000系の導入により、在来の8000系のうち3両編成1本(TB-3編成)が廃車されている。当初の計画では2本が廃車されるはずだったようだが、計画が変更されたのだろう。8000系は東急8000系を譲り受けたもので、3両編成14本42両が在籍している。昭和40年代の製造から半世紀以上が経つ上に塩害による老朽化が進んでいるため、今後も3000系もしくは他の譲渡車両による置き換えが進められることだろう。

京浜東北線209系
京浜東北線209系

3000系は8000系と比べると新しいものの、それでも製造から30年近くが経過している。3000系の前身である209系は平成5(1993)年から量産された形式で、Y1編成(JR時代はウラ47→マリC609)は平成8(1996)年2月17日新津車両製作所製、Y2編成(ウラ25→マリC601)は平成6(1994)年7月19日東急車輛製だ。209系は軽量化と製造コスト削減を図った新系列車両で、「重量半分・価格半分・寿命半分」をコンセプトに開発された。ここでいう「寿命半分」は減価償却期間(13年)で廃車にしても元が取れるくらいコストを抑える意図のものだったが、鉄道ファンやメディアからは使い捨て電車と誤解されてしまい、使い捨てカメラ「写ルンです」をもじった「走ルンです」というあだ名を付けられてしまった。

内房線で活躍する209系
内房線で活躍する209系

209系は京浜東北線・根岸線をはじめ、南武線や川越線・八高線、常磐緩行線などにも導入され、E217系やE231系などその後の通勤型電車の基礎を築いたものの、平成19(2007)年から廃車が始まり、京浜東北線からは平成22(2010)年1月24日に引退した。この際、一部の車両はそのまま廃車になったものの、残りは房総地区に残っていたより古い車両を置き換えるべく転用されている。転用に際しては機器更新や編成短縮やトイレ設置、座席のセミクロスシート化などの改造が行われた。総武本線・成田線・内房線・外房線・東金線・鹿島線で活躍し、転用から10年が経った今なお多くが残存しているが、新型車両E131系の導入により内房線・外房線の末端と鹿島線からは撤退し、一部が廃車されている。伊豆急行に譲渡されたのはE131系導入により余剰となった車両だ。房総への転用にあたって実施されていたトイレ設置やセミクロスシート化などの改造が伊豆急行線の路線事情に合致しており、機器更新により今後長期間の使用が見込めることが導入の決め手となったそうだ。

伊豆高原駅構内に留置されている部品取り車両
伊豆高原駅構内に留置されている部品取り車両

3000系の譲渡に際しては部品取り用として209系の中間電動車2両も併せて譲渡されており、伊豆高原駅構内の外れに留置されている。Y1編成となったマリC609編成の余剰中間車で、モハ209-2117+モハ208-2117の2両だ。JR時代の6両編成のまま回送され、改造に際して2両を抜いたものと思われる。

伊豆急行で第3の人生を送りはじめてから早くも2年目となる3000系。8000系の老朽化が進む中、今後増備されることはあるのだろうか。末永い活躍に期待したい。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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