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適正販促コストが一目でわかる「CPO分析」を身につける

三ツ井創太郎飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表
(筆者作成)

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

前回のコラムでは、飲食店の公式LINEアカウントステップ配信徹底活用術についてお話をさせて頂きました。

今回のコラムでは、適正販促コストが一目でわかる「CPO分析」についてお話をさせて頂きます。

なお、今回の内容はYouTubeチャンネルでも解説していますので、よろしければ下記よりご覧ください。

(筆者作成)

新規客獲得コストが一目でわかる「CPO分析」を身につける

ここまではデジタルアドレスの活用と、デジタルアドレスを活用した情報発信がいかに大切かお話をしてきました。

基本的に、デジタルアドレスを活用したマーケティングはリピート客獲得戦略です。リピート比率が高い業態やエリアの場合は、リピート客比率が50%~60%を超える場合もありますが、一般な飲食店におけるリピート客の割合は総客数の20%~30%程度です。

つまり、お店の70%~80%は新規のお客様ということになります。当然ながら、まずは1回来店(新規客)をしていただかないとリピート客にはなり得ませんので、集客アップを目指していくためには新規客獲得戦略も重要です。

しかし、新規客獲得はやみくもに行っても効果が出ないばかりか、無駄なコストを支払うことにもなります。新規客獲得戦略を実行する際には、「どの媒体から何名の集客ができているのか」ということをしっかりと集計することが重要です。

さらに言えば、各媒体の広告費を集計した上で、お客様1名をその販促媒体から獲得するためにいくらかかっているのかをしっかりと算出することが重要です。こうしたお客様1名当りの獲得単価を踏まえて広告媒体の見直し等を行うことを、私は「CPO(Cost Per Order=コスト・パー・オーダー)分析」と呼んでいます。

ここで、実際の事例をベースに、CPO分析に関してお話ししていきましょう。

どの販促をどのくらい削ったらいいかわからない

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

当社のセミナーにご参加いただいた、ダイニング業態を3店舗展開するE社長。セミナー後に無料経営相談のご要望をいただいたため、後日、E社長の会社にお邪魔してお話を伺いました。

E社長のお店は繁華街の空中階ということもあり、様々な販促媒体に広告費をかけていました。今後、販促費の削減をしていきたいとのことですが、販促費を削りすぎて集客できなくなってしまうことを懸念して、実際はなかなか踏み切れずにいました。

月に10万円以上販促費をかけている媒体もあり、E社長としてはこうした高額の販促媒体から辞めていきたいという意向でした。

ご支援をしていく中で、私がE社長に最初にご提案をしたのがCPO分析です。

CPO分析では、実施している各販促媒体のコストとそれぞれの販促媒体からの来店客数を集計することで、1名獲得単価を算出していきます。E社長の会社では、各媒体に毎月かけているコストは把握していたものの、その媒体経由の来客数等は一切集計していませんでした。これでは各媒体の費用対効果を把握することができませんので、まずはこうした基礎データを収集できる体制を構築していきました。

実際にE社長が行ったCPO分析が、下の表になります。

(筆者作成)
(筆者作成)

E社長の会社ではA、B、C、D4つの販促媒体を活用しており、A媒体に月10万円、その他の販促媒体に月5万円のコストをかけていることがわかります。E社長がおっしゃる通り、A媒体は10万円と、他媒体に比べてコストがかかっています。

次に各媒体からの来店客数を集計していきます。この来店客数がわかると、自動的に各媒体のCPOがわかります。

このCPOを見ると、A媒体のCPOは182円、つまりA媒体経由で1名のお客様を獲得するのに182円かかっている計算になります。

一方で、B媒体のCPOは1,111円、C媒体は1,250円、D媒体は2,500円かかっていることがわかります。

このお店の客単価は3,800円ですので、各CPOを客単価で割ると、各媒体毎の販促比率も算出することができます。A媒体の販促比率は4.8%、B媒体は29.2%、C媒体は32.9%、D媒体は65.8%となります。

このCPO分析の結果からわかることは、A媒体は費用対効果が高い販促媒体であるということです。一方で他の媒体は費用対効果が悪く、原価や人件費、その他変動費を加味すると赤字販促であると言えます。

そこで私はE社長にA販促以外の販促を止めるようにアドバイスをさせて頂きました。当初は金額が高いA媒体を止めようと思っていたE社長は少しびっくりしてましたが、このCPO分析を見て納得していただけました。

短期間で成果を出すためのMIXCPO分析

(筆者作成)
(筆者作成)

今回はCPO分析を実施して費用対効果の低い販促を止めたE社長の会社ですが、私はあえて費用対効果の低い販促でも継続した実施をお願いする場合もあります。

わかりやすい例をあげると、オープン時の販売促進等です。オープン時など、商圏内において短期間で認知度を高めたい際には、CPO分析の発展形であるMIXCPO(ミックスシーピーオー)という理論を活用します。

上の表は、先ほどのE社のCPO分析に1行MIX分析を追加したものです。

MIXCPOとは、各媒体の合計数値でCPOを算出させる方法であり、この分析を行うと合計のCPO=MIXCPOは382円、販促比率は10%であることがわかります。前述した通り、オープン時などは短期間で商圏内での認知を高めるために、あえてMIXCPOで換算して販促を行うケースもあります。

さらに言うと、仮にCPO2,500円をかけて新規獲得したお客様でも、来店時にしっかりとデジタルアドレス獲得を行い、2回目来店が獲得できれば、CPOは半分の1,250円になり、その後、そのお客様が常連化してくださり10回の来店をしてくださればCPOは250円になります。

このように、初回来店だけではなく、お客様の中期的な来店効果を見ていくという考え方もあります。私はこれを「LTV(Life Time Value=ライフタイムバリュー)CPO」と呼んでいます。

CPO分析を身につけると、どんどん販売促進の費用対効果が高くなっていきます。

みなさんのお店の各媒体のCPOがいくらかなのか、ぜひ算出してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

(筆者作成)

<筆者プロフィール>

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント

代表取締役 三ツ井創太郎

https://www.threewell.co/business

飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表

㈳日本フードビジネス経営協会代表理事。飲食企業で店長、SV、事業統括の経験を経た後、2011年に東証一部上場のコンサル会社である(株)船井総合研究所に入社。飲食コンサルティング部門のリーダーとして数多くの飲食店支援を行う。2016年飲食店特化のコンサルティング会社(株)スリーウェルマネジメントを設立。「飲食店オーナー様に徹底的に親身なサポートを!」を理念に、個人店から大手チェーンまで日本全国の飲食店へ支援を行う傍ら、テレビのコメンテーターや行政、金融機関と一体となった飲食店支援も行う。著書「V字回復を実現する! あたらしい飲食店経営35の繁盛法則 」はアマゾンの外食本ランキングで1位を獲得。

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