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飲食店の人材不足対策【省人化機器編】

三ツ井創太郎飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表
(筆者作成)

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

前回のコラムでは、外食産業は11年周期で不況を繰り返している!についてお話をさせて頂きました。

今回のコラムでは、飲食店の人材不足対策【省人化機器編】についてお話をさせて頂きます。

なお、今回の内容はYouTubeチャンネルでも解説していますので、よろしければ下記よりご覧ください。

(筆者作成)

生産性を高める飲食店の「省人化機器」の導入メリット、デメリット

これからの超人材不足時代の新規出店においては、「省人化機器」を導入することで生産性を高めるという視点も必要になってきます。

なお、ここで私が言っている省人化機器とは、主に「機材」と「システム」にわけることができます。

今回のブログでは、省人化機器【前編】ということで、機器機材についてお話をさせて頂きます。

以下、代表的な省人化機器機材のメリット・デメリットをいくつかご紹介しましょう。

(筆者作成)
(筆者作成)

■真空包装機

【導入のメリット】

食材や加工品を真空包装することで、保存期間の長期化と仕込作業の平準化(人手がある時にまとめて仕込んで真空するなど)が可能になります。真空包装機の種類としては温かい食材の包装に対応しているホットパック機能付のものと、そうでないものに大きくわかれます。

【導入のデメリット】

真空包装機は食材を真空包装用の袋に入れないとならないため、そのコストがかります。また、業務用真空包装機となると数十万円はするため、事前に導入後の活用イメージをしっかりと持つことが重要です。真空包装する作業自体にも、当然ながら人的工数がかかるので、効率的な作業工程の構築も重要となります。

【成功事例】

海鮮居酒屋が仕入れた魚を本店で一括して捌き、サク取りしだ状態で真空包装して各店に自社配送を行う体制を構築。これにより、店舗の職人レスと仕込時間の短縮を実現することができました。

■急速冷凍機

【導入のメリット】

急速冷凍機は大きく分けると、リキッドフリーザー(液体凍結型の急速冷凍機)とエアーブラスト凍結機(空気凍結型の急速冷凍機)にわかれます。一括して仕込んだものを急速かつ高品質で冷凍することができるため、保存期間の長期化と仕込、提供オペレーションの効率化を実現できます。また仕入価格が安い時期に食材を大量購入して急速冷凍する等により、原価抑制を図ることも可能です。

【導入のデメリット】

最近では小型の物や外国産の安価な物も出ていますが、国内の信頼できるメーカーの物を使う場合は最低でも200万円以上のコストがかかるため、事前にしっかりと活用イメージを持っておくことが大切です。また、設置にはそれなりのスペースが必要となるため、厨房全体の作業導線の見直しなども必要となります。

【成功事例】

焼肉店がセントラルキッチンでリキッドフリーザーを活用して、提供状態にまでカットした肉を各店に配送。緩慢冷凍(通常の冷凍)の時には肉のドリップやロース系の肉の変色が発生していましたが、リキッドフリーザーによって全店での均一品質の肉の提供を実現することができました。

■スチームコンベクションオーブン

【導入のメリット】

スチームコンベクションオーブンとは、蒸気と熱風を活用することで「焼く」「蒸す」「煮る」「炒める」「茹でる」「温める」などを行える加熱調理機です。調理温度や調理時間の設定機能もあり、電気式のスチームコンベクションオーブンでは夜、帰る前に食材と調味液を入れて真空包装した上で、スチームコンベクションオーブンで低温調理をしたまま帰るといったいわゆる「オーバーナイトクッキング」も可能です。

【導入のデメリット】

最近では50万円程度で購入できる小型の製品も出ており、昔に比べると、だいぶ導入コストは抑えられるようになりました。一方で、小型の物は庫内スペースも小さいため、せっかく導入したものの段取り替え作業(庫内が小さいため、何回も入れ替える)が多く発生することで、逆に作業効率が下がる場合もあるので、事前に調理したい内容や仕込量をしっかりと検討しておくことが重要です。

また、基本的にスチームコンベクションオーブンの設置には、排気ダクトや給排水などの設備が必要となるため、こうした設置要件を事前に確認しておくことも重要です。

【成功事例】

パンケーキを主体としたカフェ業態の支援先では、オーブンで一括焼成したパンケーキを冷凍保管。オーダーが入ってからスチームコンベクションで温め直すことで、焼きたてのふっくらとした食感を再現することに成功。パンケーキ業態の課題である提供時間の短縮と品質の均一化、社員レス化を実現しました。

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

■配膳ロボット/配膳レーン

【導入のメリット】

最近ニュースなどで目にする機会も多くなった配膳ロボットや配膳レーン。配膳レーンと聞いてピンとこない方もおられるかと思いますが、これはいわゆる回転寿司等の特急レーンです。最近では回転寿司以外にも、焼肉店等で特急レーンを活用するお店も増えてきています。導入メリットは何といっても、ホールスタッフの人員削減です。

【導入のデメリット】

配膳ロボット/配膳レーンのデメリットは、やはり導入コストです。人員を大幅に減らせるという面では強力な省人化機器ではありますが、一方でお店から「接客」がなくなることにより、お客様の満足度が下がるのでは?と懸念される方も多いと思います。

配膳ロボット/配膳レーン導入による接客レベル低下を防ぐためには、ロボット等の活用で空いた時間を、店舗のQSCレベル向上に使うという視点を持つことが重要です。

【成功事例】

大型の焼肉店を展開する支援先様で特急レーンを導入。当初は接客機会がなくなることでお客様満足が低下することが懸念されましたが、実際には待ち時間の大幅な短縮、配膳がなくなったことで、手の空いたスタッフによるお見送りの徹底等を行ったことで、お客様満足の大幅な改善を実現しました。

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

■セルフレジ

【導入のメリット】

お客様が自ら会計処理を行うスタイルのレジ。牛丼チェーン等では以前から「券売機」が存在していましたが、最近では回転寿司チェーンのスシローなど、一般の重飲食店でも導入する企業が増えてきました。スタッフがオーダーを聞く工数や、会計、レジ閉め等の作業がなくなるため、大幅な人件費削減が可能となります。

【導入のデメリット】

前会計スタイルのセルフレジは、お客様の商品選択や会計処理に時間がかかるとピークタイムの行列要因となり、機会損失を引き起こす可能性もあるため、商品選択画面を分かりやすくするなどの工夫が重要です。

【成功事例】

定食業態でセルフレジを導入。お客様がメニュー選択時に迷わないように自店の名物商品を明確に打ち出したレイアウトを採用。注文、会計業務を完全自動化したことでホールスタッフの大幅な作業負担軽減に成功し、人件費率5%削減を実現しました。

今回のコラムでは、省人化機器前編ということで、機器機材についてお話をさせて頂きました。

次回は、省人化を実現するシステムについてお話をさせて頂きます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

(筆者作成)

<筆者プロフィール>

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント

代表取締役 三ツ井創太郎

https://www.threewell.co/business

飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表

㈳日本フードビジネス経営協会代表理事。飲食企業で店長、SV、事業統括の経験を経た後、2011年に東証一部上場のコンサル会社である(株)船井総合研究所に入社。飲食コンサルティング部門のリーダーとして数多くの飲食店支援を行う。2016年飲食店特化のコンサルティング会社(株)スリーウェルマネジメントを設立。「飲食店オーナー様に徹底的に親身なサポートを!」を理念に、個人店から大手チェーンまで日本全国の飲食店へ支援を行う傍ら、テレビのコメンテーターや行政、金融機関と一体となった飲食店支援も行う。著書「V字回復を実現する! あたらしい飲食店経営35の繁盛法則 」はアマゾンの外食本ランキングで1位を獲得。

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