Yahoo!ニュース

飲食店の人材不足対策【WEBシステム編】

三ツ井創太郎飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表
(筆者作成)

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

前回のコラムでは、飲食店の人材不足対策【省人化機器編】についてお話をさせて頂きました。

今回のコラムでは、飲食店の省人化を実現するWEBシステム導入のメリット・デメリットについてお話をさせて頂きます。

なお、今回の内容はYouTubeチャンネルでも解説していますので、よろしければ下記よりご覧ください。

(筆者作成)

■WEB予約システム

【導入のメリット】

お客様が自らWEB上で予約を行えるシステム。食べログ、ぐるなび、ホットペッパーといったグルメポータルサイトが機能実装したことによって、WEB予約の利用者が一気に増加しました。グルメポータルサイト経由のWEB予約ですと送客手数料(従量課金)がかかってしまうので、最近では自社サイトや「Googleビジネスプロフィール」など、送客手数料(従量課金)がかからないWEB予約システムと連携させる飲食店が増えてきています。

WEB予約システムのメリットは、スタッフの予約電話対応が激減する他、予約客のリード(メールアドレス)獲得ができるというメリットもあります。2020年のコロナ禍に始まった「Go To Eat」で消費者のWEB予約利用率が大幅に高まったことから、今後は飲食店でもWEB予約システムの導入はより重要性を増していくでしょう。

【導入のデメリット】

グルメポータルサイト経由とWEB予約システム経由の予約が混在することで、店舗の予約管理が複雑となり、ダブルブッキングなどのトラブルが発生しやすくなります。サービスの中には、グルメポータルサイトと席在庫情報を共有できるサービスもありますので、導入検討時にはこうした席在庫管理の利便性もしっかりと検証することが重要です。

【成功事例】

以前は電話予約しか対応していなかった和食店が、コロナ禍のGo To EatをきっかけにWEB予約システムを導入。自社サイトやGoogleビジネスプロフィール、SNS経由でWEB予約できる導線もしっかりと構築。これにより全体の予約比率も高まり売上アップにつながりました。

さらにはWEB予約時に獲得したリード(メールアドレス)に対して、継続的に新商品や誕生日メール等を配信する「コンテンツマーケティング」も実施したことで、来店促進の仕組み化に成功し大きな売上アップを実現しました。

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

■勤怠管理システム

【導入のメリット】

勤怠管理システムの機能は、出退勤管理(いわゆるタイムカード機能)とシフト管理、またはこの2つが搭載されたものに分かれます。さらに給与システムとのAPI連携や、勤怠情報のCSVダウンロ―ド機能などを利用することで、給与計算や支払い業務を大幅に短縮することが可能です。

店長にとって頭の痛い「毎月のシフト作成」における、希望シフト収集やシフト組みをデジタル化できることは大きなメリットとなります。これからの時代においては、積極的に導入を検討していくべきシステムと言えます。

【導入のデメリット】

導入に際しては、1アカウント(1名)200円~300円程度の月額使用料金がかかるため、コスト面での負担を事前にしっかりとシミュレーションしておくことが重要です。また、店長がアナログでの勤怠管理に慣れすぎている場合は、心理的ハードルがあり、なかなか勤怠管理のデジタル化が進められないというお悩みも良く聞きます。

そうした意味でも、あまり多機能な物よりは、シンプルで操作がわかりやすいサービスを選ぶことがポイントです。事前にサービス提供会社にデモ画面等を共有してもらい、社長や店長が一緒にテスト運用をすることで、導入後の運用イメージを明確に持っておくことが重要です。

【成功事例】

30店舗を展開する居酒屋チェーン店では、各店のシフト作成や毎月の勤怠集計作業が店長にとって大きな負担となっていました。50店舗体制に向けた事業計画を作成する中で、勤怠管理システムの導入を決定。導入後は各店長や本部スタッフの負担が軽減されたほか、各店のシフトデータをマネジャーがWEB上で事前確認できるようになり、モデルワークスケジュールとの乖離や、店舗間の迅速なヘルプ体制等を構築し、全店レベルでの適正な人員配置の仕組み化を実現できました。

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

■人事評価制度システム

【導入のメリット】

アフターコロナにおける飲食店の最大の経営課題は「超人材不足時代」への対応です。厳しい人材獲得競争の中で、企業としての採用力を高め、離職率低下を実現するためには、人事評価制度構築によるスタッフモチベーションアップと人材育成の仕組み化が必須となります。

一方で、人事評価システムはアナログで実施すると、評価シートの配布、記入、回収、集計等の手間がかかります。WEB上で行える人事評価システムを活用することにより、評価制度運用にかかる時間を大幅に軽減することが可能になります。

【導入のデメリット】

人事評価制度は継続し続けることが最も重要です。スタッフのモチベーションを高めようとせっかく始めた人事評価制度でも、途中でやめてしまうことで、逆に不満足につながる可能性もあります。

人事評価制度の構築においては、スタッフへの想いが強いからこそ複雑な要素を盛り込もうとする飲食店経営者を良く見かけますが、まずはシンプルな機能のシステムを導入し、制度の運用と定着を確実にすることが重要です。

【成功事例】

創業メンバーと二人三脚で事業展開を行ってきた居酒屋企業。コロナ禍という未曽有の事態もあり、「会社の将来性が見えない」という理由から創業メンバーが退社。このような中、社長より「スタッフのキャリアビジョンや会社の未来を、スタッフに示せる会社にしていきたい」というご相談があり、評価制度構築のご依頼をいただきました。

社内には評価制度運用を専門に行う本部スタッフがいないため、評価制度運用の手間を出来る限り少なくした上で、「しっかりと運用継続できる人事・評価制度構築」をコンセプトに制度を設計。当社の飲食店特化の評価システム「モチベイ」を導入することで、スマートフォン等から簡単に、全スタッフを評価できる体制を構築。評価結果と連動したインセンティブ、給与、教育システムも構築することで、キャリアビジョンの明確化と離職率の低下を実現しました。

■発注システム

【導入のメリット】

飲食店経営においては、日々の発注業務や、業者さんから届く請求書のチェックなどが大きな業務負荷となっています。発注システムを活用することで、こうした業務を全てデジタル化することが可能です。

また、発注システムは業者さんからの請求書もWEB上で発注データと自動照合してくれるので、調理場とホール側の納品伝票を引っ張り出してきて、月末に請求書と照合するという手間もなくなります。さらに、業者からの仕入価格と自動連動した棚卸システムを活用することで、月末の棚卸業務の軽減も可能です。

【導入のデメリット】

そもそも取引業者がWEB受注システムに対応していなければ、WEB発注もできないため、出来る限り加盟店数の多いサービスを選ぶことが重要です。また、使用する機能によってはオプション料金が発生するため、自社にとって最低限必要なサービスから使い始めてみることをおすすめします。

他のサービス同様にFAX発注に慣れてしまっている店舗スタッフにとって、WEB発注システムの導入は最初は抵抗があると思います。サービス提供会社のセミナーや取り扱い説明会を個別に開いてもらうなどして、事前にスタッフの導入マインドセットを行っておくことも重要です。

【成功事例】

カフェを展開する企業。毎日16時までにホール、キッチン合わせて5社へ発注をしないとならず、15時位から料理長と店長が休憩時間を削って、FAXで発注を行っていました。発注システムを入れたことで発注業務に費やす時間が大幅に軽減され、しっかりと休憩が取れるようになりました。

さらに受注システムでは、業者からの食材価格変更等もシステム上でお店側が承認を行う仕組みとなったため、仕入価格変動の把握がしやすくなりました。また、月末に行っていた納品書集計や請求書との金額照合や棚卸作業がシステム上で行えるため、月末の作業時間が大幅に軽減されました。こうした日々の細かい作業負荷を軽減させることで、少しずつ労働環境の改善が実現できています。

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

■セルフオーダーシステム 

【導入のメリット】

セルフオーダーシステムとは、お客様が自ら商品のオーダーを行えるシステムの総称です。大きく分けると、タッチパネル式とモバイルオーダー式があります。

セルフオーダーシステムの導入のメリットとしては、何といってもホールスタッフの業務負担や、オーダーミスの大幅な改善が可能になります。業態や席数によって変わるので一概には言えませんが、セルフオーダーシステムを導入することで一般的には3%~5%の人件費削減効果が期待できます。

【導入のデメリット】

タッチパネルに関しては各席への電源工事やオーダー端末購入費用がかかるため、一定額の設備投資を覚悟しなくてはなりません。一方で、モバイルオーダーはお客様が自身のスマートフォンでメニューオーダーを行う仕組みであり、店側の大きな設備投資がないため、導入を検討する企業が増えてきています。

現在、こうしたシステムは様々な機能のものがリリースされていますが、一番大切なのはお客様の使い勝手です。お客様の実際の使い勝手はデモ画面等では判断しづらいため、サービス導入前には、そのサービスを実際に導入している店舗に出向き、実際に食事をしながらシステムを使ってみることをおすすめします。

【成功事例】

客単価3,000円の居酒屋企業。この企業様は接客に力を入れており、セルフオーダーシステムの導入には店舗スタッフから反対の声があがりました。しかし、社長としては、アフターコロナにおける人材獲得競争や、2022年からの超人材不足に対応するためにも、ホールスタッフのオペレーション作業負荷軽減は急務の経営課題でした。そこで、「接客」とは何もお客様のオーダーを伺うことだけではなく、例えば季節商品のおすすめや、料理提供時の食べ方の説明等、顧客接点を作れるポイントは他にもあるということを、全スタッフに丁寧に説明し、モバイルオーダーの導入を行いました。

導入当初はセルフオーダーに戸惑われるお客様もいましたが、こうした場合はスタッフが丁寧に説明することで、導入から3カ月後にはほとんどのお客様が抵抗なくセルフオーダーを使える状況になりました。毎月実施しているお客様アンケートでも、セルフオーダー自体に対して「好きなタイミングでオーダーできる」「リアルタイムで会計金額が分かるのが良い」といった好意的な意見が多かったほか、スタッフがオーダーに時間をとられなくなったため、料理説明やお見送りなどのサービスを強化できたことで、お店全体の満足度アップも実現することができました。

これからの飲食店経営では「生産性向上」が重要なテーマとなります。ぜひ自店の業態特性等を踏まえた上で、上手に省人化機器を活用していきましょう。

最後までお読み頂きありがとうございました。

(筆者作成)

<筆者プロフィール>

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント

代表取締役 三ツ井創太郎

https://www.threewell.co/business

飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表

㈳日本フードビジネス経営協会代表理事。飲食企業で店長、SV、事業統括の経験を経た後、2011年に東証一部上場のコンサル会社である(株)船井総合研究所に入社。飲食コンサルティング部門のリーダーとして数多くの飲食店支援を行う。2016年飲食店特化のコンサルティング会社(株)スリーウェルマネジメントを設立。「飲食店オーナー様に徹底的に親身なサポートを!」を理念に、個人店から大手チェーンまで日本全国の飲食店へ支援を行う傍ら、テレビのコメンテーターや行政、金融機関と一体となった飲食店支援も行う。著書「V字回復を実現する! あたらしい飲食店経営35の繁盛法則 」はアマゾンの外食本ランキングで1位を獲得。

三ツ井創太郎の最近の記事