BM店舗前で検出された除草剤は米の裁判所が発がんとの関連を認め仏が一部製品を販売禁止にした代物だった
(7月27日に「ビッグモーター前の街路樹跡から検出された除草剤は、欧米では使用禁止の発がん性疑い物質だった」と題した記事を載せたところ、「見出しが記事の内容を過剰に表現している」「記事の内容が事実と異なる」との意見が多数届いているとの連絡がYahoo!の担当者からありました。記事の内容に関しても「日本における法的位置づけが述べられていない」「海外の例について書かれているが出典がない」といった指摘が届いていると言われました。そこで、ご指摘を踏まえ、新たな記事を載せることにしました。まず、見出しを、記事の中身をより正確に反映したものに変え、日本における法的位置づけに触れた上で、海外の例についてはできる限り出典のURLを張りました。実際には複数のニュースソースを参照していますが、URLが1か所に1つしか張れないので、省略しています。リードも見出しに合わせて少し変えました。ただし、本文は一切変えていません。比較できるよう、前回の記事はそのまま残してあります。記事はあくまでニュースを伝えることに主眼を置いたジャーナリスティックな著作物であり学術論文とは異なりますので、記事に書かれている個別の事柄についてより深く追究したい方はご自身で学術論文をお調べになることをおすすめします)
中古車販売大手ビッグモーターの店舗前の街路樹が不自然に枯れているのが各地で見つかっている問題で、読売新聞や朝日新聞は、群馬県太田土木事務所が土壌を調べたところ、枯れていた部分の土壌から除草剤の成分「グリホサート」が検出されたと報じた。グリホサートは日本では使用が認められている人気の除草剤だが、発がん性が疑われており、海外では一部の国や自治体の間で使用禁止の動きも広がっている。
国際機関が発がん性を認定
グリホサートは米モンサント(2018年に独バイエルが買収)が開発し、「ラウンドアップ」などの商品名で売られている。グリホサートをまいても枯れないよう遺伝子操作されたトウモロコシや大豆などの栽培に使われるほか、公園や校庭、道端、家庭菜園などの除草にも使用され、世界的に使用量の多い除草剤だ。
しかし2015年、世界保健機関(WHO)傘下のがん研究専門組織である国際がん研究機関(IARC)が、発がんの危険性(ハザード)を示す5段階評価で危険性が2番目に高い「グループ2A」(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類したことで、欧米を中心に規制強化が進み始めた。
欧州では、フランスが2019年にグリホサートを有効成分とする一部製品の販売を禁止。ドイツは来年から全面禁止する。
米国でも、ニューヨーク市が2021年、条例を改正して公園など市が所有する施設内でのグリホサートの使用禁止を決めるなど、使用を厳しく制限する動きが自治体レベルで急速に広がっている。
メキシコも来年、全面禁止とする見込みだ。
米国では巨額訴訟相次ぐ
米国ではグリホサートをめぐる巨額訴訟も相次いでいる。
カリフォルニア州在住の男性が、悪性リンパ腫の一種である非ホジキンリンパ腫を発症したのはラウンドアップを継続的に使用したのが原因だとしてモンサントを相手取って起こした裁判では、米最高裁が昨年6月、ラウンドアップをがん発症の「重要な要因」と認め、がんの警告表示をメーカーが怠ったとしてバイエルに2500万ドル(約35億円)の賠償金支払いを命じた二審の判決を支持する決定を下した。
米メディアによると、米国では昨年までにグリホサートがらみの訴訟が13万件以上起こされている。2020年にはカリフォルニア州の別の男性に対し、2050万ドルを支払うよう命じる控訴審判決が下った。この時は、バイエルは勝ち目がないと見て上訴しなかった。
グリホサートの毒性に関しては、当初は発がん性が注目されたが、最近はそれに加え、発達障害や生殖異常、免疫力の低下などとの関連を示唆する研究報告が相次いでいる。
千葉大学・社会精神保健教育研究センターの研究チームは2020年、マウスを使った実験の結果、「妊娠中の農薬グリホサートの摂取が、子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)などの神経発達障害の病因に関係している可能性がある」と発表した。
ビッグモーターの他店舗の前の土壌からもグリホサートが検出されたかどうかは今のところ不明だが、周囲の住民には気になるところだろう。
補足)IARCは2019年に評価法を5段階評価から4段階評価に変更しました。グリホサートが分類された2015年はまだ5段階評価でしたので、記事では「5段階評価で」としてあります。また、IARCの評価は「リスク」ではなく「ハザード」に基づいて行われていますので、そのように表現を補足しました。