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100年前も若者の未婚「男余り」人口は現代と同じくらい多かったのに皆婚だったワケ

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

430万人の未婚男余り

2020年の国勢調査段階で、未婚男女の人口差(いわゆる、未婚の男余り)は約430万人である(不詳補完値による)。未婚女性が全員結婚したとしても、この430万人には相手がいないということである。

「未婚の男余り430万人」というと、若い未婚男性が大勢いるように思いがちだが、実はそうではない。これは、15歳以上の全年齢の合計値であり、各年齢の差分人口は以前こちらの記事に書いている。

未婚男性の「男余り430万人」の実態~もはや若者ではなくおじさん余りへ

5歳階級での男余り人口をグラフ化すれば以下のようになる。

もっとも「男余り」なのは、45-49歳である。10歳階級にしても40代が一番「男余り」であり、正確にいうならば「中年未婚男余り」ということになる。

20-24歳で差分が少ないのは、まだこの年齢帯では既婚率が多くない事にもよる。それでも「男余り」になるのは、そもそも男児の出生性比が女児より5%多いためで、有配偶含めた全人口で見た時に「女余り」になるのは、女性の方が長寿だからである。

未婚おじさん余り

20-34歳までを若者、35-49歳を中年と仮に定義すると、若者の「男余り」は合計120万人に対して、中年の「男余り」は155万人である。もはや、若者よりおじさんの未婚「男余り」人口の方が多いのである。この逆転現象が起きたのは2010年。男の生涯未婚率がはじめて20%を突破した時である。

しかし、以下のグラフの長期推移を見ると、この「未婚おじさん余り」現象は、皆婚時代の終焉時期といわれる1980年代から急激に増加している。反対に、若者のそれは、第二次ベビーブーム(同時に結婚ブームでもあった)直後の1975年あたりを頂点として、以降減り続けている。

この要因を「晩婚化」などという識者がいるがそれは間違いである。

確かに、20代での婚姻数は減ったのだが、それは決して後ろにズレた「晩婚化」ではなく、そのまま35歳以上も未婚のまま50歳を迎えるという「非婚化」になっただけにすぎない。

結婚は若いうちにしないと結局しないままで終わるのだ。「まだ若いから結婚はいいや」などと考えていると、あっという間に35歳を超えて、「結婚できなくなる」か「結婚する必要性を失う」ことになる。これは男女関係なくそうである。

大きなお世話だが、もし、将来漠然とでも「結婚したい」と思っている未婚男女は若いうちにしておいた方がいいだろう。

大正時代も男余りだった

ところで、上記のこの長期推移表で興味深いのは、むしろ戦後から1970年代まで、「未婚おじさん余り」がマイナスであることだ、つまり、「未婚おばさん余り」の時代があったということになる。

そして、もうひとつ気になるのは、100年前の大正時代から戦前にかけても、若者の「男余り」は現代と同じくらいの人口差があったことである。若者の男余りは同じ規模なのに、なぜ大正時代は皆婚できたのだろうか?

写真:イメージマート

現代と違うのは、戦前までは「未婚おじさん余り」がほぼゼロで推移していたことだ。

これは、まさに結婚の社会的お膳立てシステムである「伝統的なお見合い」によるマッチングの賜物である。仲人の差配といってもいい。

大正時代のお見合い婚比率は8割を超えていた。若い未婚男性は余っているのに、中年は余っていないということは、35歳を過ぎての初婚も多かったからだ。というより、お膳立てもまた年功序列だったのだろう。「年上の未婚から順番に」という力学が働いていたといえる。

しかも、その初婚相手が年の離れた若い未婚女性とマッチングされることも多かったため、結果として「若者の男余り」という形になった。

ちなみに、2020年初婚夫婦の年齢差は夫の1.5歳年上である。ほぼ同年齢での初婚が多いことになるが、この年齢差は1920年は4.2歳差があった。それだけ、夫年上婚が多かったのである。これが「未婚おじさん余り」が昔はほぼなかった理由である。是非はともかく、要因としてはそういうことである。

第二のお膳立ての崩壊

1980年代、バブルと共に恋愛至上主義時代と呼ばれたが、それでもまだ結婚のお膳立てシステムは職場結婚という形で存続していた。

提供:イメージマート

それが、セクハラ裁判やコンプライアンスの問題で敬遠されるようになったのは2000年代以降である。

婚姻数の減少はお見合いと職場結婚の減少とほぼ一致することがわかっている(参照→日本の結婚は30年前にはすでに詰んでいた。失われた社会的システム)。そうしたお膳立ての崩壊の割をもっとも食ったのが、35歳以上の中年未婚男性たちなのである。

2020年50歳を迎える人たちは、1990年に20歳だった人たちである。現在中年未婚男性が増えているという状態は、1990~2004年にかけて、彼らが20~34歳の時に結婚できなかった(しなかった)ことの結果である。そして、それが第三次ベビーブームが起きなかった原因でもあり、現在の少子化の本質的な原因でもある。

とはいえ、時間は戻らない。

50歳過ぎて初婚する可能性はほぼないに等しい上に、結婚限界年齢というものがあり、男性の場合ですら40歳を超えると95%結婚は難しくなる。よく女性の結婚適齢期に関して、クリスマスケーキ(25歳まで)や年越しそば(31歳)までと例えられることがあるが、決して男性も無関係ではない。

もし結婚したいのであれば、男性であっても若いうちに同年齢の相手を見つけないとほぼできないと考えた方がいいだろう。結婚したいのであれば、の話だが。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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