なぜダメ上司ほど「まず経験させ反省させる」教え方しかできないのか?
■「とりあえず、やれ」「まずは手を動かせ」
部下育成ができないダメ上司は、教え方がわかっていない。こういう上司が大好きなのが「経験学習モデル」である。
「経験学習モデル」とは、
(1)経験
(2)反省
(3)洞察
(4)行動
という4つのプロセスに分かれた知識習得のモデルのことだ。身をもって経験することで経験が知識に変わり、いろいろなシチュエーションで応用できる効果があると言われる。
ただし、この経験学習を額面通りにやるとどうなるか?
「つべこべ言わず、とりあえずやれ」
という指示になってしまう。
料理で考えたらわかりやすい。上司が作ったハンバーグを食べさせ、
「これと同じくらい美味しいハンバーグを作ってくれ」
「考えていないで、まずは手を動かせ」
と言われたら、普通の人はどうするだろう。
自分なりに考えて食材や調理具をそろえ、何度かハンバーグを作ろうとするだろう。一度もハンバーグを作った経験がないのであれば、上司と同じような味にはならないはずだ。
すると上司から、
「そうじゃない」
とダメ出しをされる(フィードバックという名の)。
経験の次が反省だから、反省を促されることになる。次のプロセスが洞察であるから、
「もう一度、私のハンバーグを食べてみなさい。全然違うだろ」
と、洞察させる。そして、
「もう一度、やり直しだ」
と言って行動させる。こんな「経験 → 反省 → 洞察 → 行動」という手順が、日本式の「経験学習モデル」である。
このように社会人が何かを勉強するときは「まず経験が先だ」という考えの人が多い。とくに昔ながらの指導に慣れている人は、そうだろう。
ちなみに上司が「まずは経験から」と指導したがる理由は次の2つである。
(1)教えるスキルがない
(2)ダメ出ししてマウントを取りたい
■経験学習3つのデメリット
もちろん、このようなやり方はとても非効率的である。経験学習は人材育成においてとても大事な考え方ではある。しかしながら初学者が勉強するにはデメリットのほうが大きい。
経験学習のデメリットを3つ紹介しよう。
(1)本質を理解するまでに時間がかかる
(2)考える力が養われない
(3)メンタルがやられる
前提知識がないのに、経験を先にしようとすれば、
「わからないことが、わからない」
という状況からいつまで経っても抜け出せない。
上司から、
「わからないことがあれば相談しろよ」
と言われても、「わからないことが、わからない」状況なのだから、どうしようもない。
そのため、いつまでたっても本質的な事柄を理解することができないのだ。
前提知識や体系的なノウハウがないので、どう考えたらいいかもわからない。「考えろ」「頭を使え」と言われても、正しく考えられないから
「言われないとわからないのか」
さらにダメ出しをされ続けることになる。こんな状態が続けば、誰だって自信を失う。
前提知識がないことが問題なのに、自分の努力不足、頭の悪さに問題があると思い込み、最悪の場合には
「この仕事は、自分に向いていない」
と思い込むようになる。
■社会人が勉強するうえで必ず頭に入れてほしいこと
ではどうしたらいいのか。簡単だ。先述した料理でたとえるなら、まずはハンバーグのレシピを手に入れたらいい。
レシピを手に入れること。調理具を買い揃えること。最低限の調理技術を習得すること。経験よりも先に基礎知識や基礎技術の習得である。もちろん、これらをキチンとやったとしても、美味しいハンバーグの味を再現できるわけではない。
しかし、
「これがおかしい」
とダメ出しをされても、体系的な知識や技術をすでに手に入れているので、正しく理解できる。
「わからないことが、わからない」という状況から抜け出している。そのため、
「これがおかしいということは、ひょっとして、こっちもダメですか?」
「そうそう。それもダメだ」
「ということは、最初にこういう準備をしたほうがいい、ということでしょうか?」
「そうだよ。俺が言いたいのは、そういうこと」
などと、効果的に質問ができる。
社会人が勉強するうえで、必ず覚えておいてほしいことがある。
それは、最初に少し負荷がかかっても、そのテーマにおける体系的な知識を事前に見つけておくことだ。数冊の本を読んだり、2~3回研修を受けたりすれば、だいたいの知識が手に入る。
上司や指導者から、そのように勧められなくても自分で率先してやろう。
「理解=言葉×経験」
である。どんなに経験があっても、正しい知識(言葉)がゼロであれば、理解もゼロになる。言葉と経験を掛け算して理解が進む、と覚えよう。
<参考記事>