超高級な4万円の日本酒はどんな味? フカヒレや小籠包にもぴったりな吟天シリーズ
日本酒の海外輸出が伸長
日本酒の海外輸出金額がコロナ禍にあっても非常に伸びています。
国税庁の資料によれば、2021年1月から12月までの輸出金額は約402億円(対前年同期66.4%増)であり、輸出単価も1リットあたり1,253円と過去最高。輸出先としては1位から順に、中国、アメリカ、香港となっており、50%以上も伸長している状況です。
このように日本酒は海外で大きく受け入れられていますが、以前ワインのように洋食とペアリングできる日本酒「吟天」を紹介しました。
・ニつ星スペイン料理とも見事にペアリング! 4万円の商品もある一流店に認められた日本酒とは?(東龍)/Yahoo!ニュース
日本酒は甘味があるので、様々な料理とマッチするのが難しく、洋食とのペアリングに向いていないとみなされることがあります。しかし、吟天シリーズは、すっきりとした呑み口であり、味わいもバラエティに富んでいるので、ワインのようにペアリングできるのです。
その吟天シリーズにまた新しいラインナップが加わりました。
それは、2022年9月18日に発売された「吟天白龍2021」(16,500円)と「吟天光龍2021」(44,000円)。どちらとも2021年に造られたばかりの最新ヴィンテージです。
「吟天白龍2021」と「吟天光龍2021」の特徴
「吟天白龍2021」と「吟天光龍2021」は、どのような日本酒でしょうか。
「吟天白龍2021」は高級フレンチやイタリアンのコース料理との究極のペアリングを目指し、様々なシェフの意見をとり入れながら完成させたスパークリング日本酒。瓶内二次発酵による「吟天白龍2016」の心地よい酸味と後味のキレはそのままに、酸味をより際立たせ、炭酸もほどよく強めました。シャンパーニュのようなきめ細やかな泡立ちは、アペタイザーでキャビアやイクラなどの魚卵、牡蠣や蛤などの貝類にぴったりでしょう。
「吟天光龍2021」は最高峰の酒米といわれる兵庫県特A地区山田錦を精米歩合30%まで磨き、2種類の酵母を使用し、味わいや香りに重きを置いた純米大吟醸。氷温保存の熟成によって味わいが深まり、繊細な和食から濃厚なソースで堪能するフレンチまで、幅広い料理とペアリングします。ライチやマスカットのような香りも大きな特徴です。
中国料理とのマリアージュ
料理とのペアリングを目指した吟天シリーズだけあって、積極的にファインダイニングとのコラボレーションも行っています。2022年10月24日には、料理の鉄人としても知られる脇屋友詞氏がオーナーシェフを務める赤坂の「Wakiya一笑美茶樓」で特別なペアリングディナーが行われました。
これまではフレンチやイタリアンなど、洋食とのペアリングディナーが行われていましたが、今回は初めてとなる中国料理。中国料理では一般的に紹興酒と合わせられますが、最近ではワインとのマリアージュも多いです。ただ、日本酒とのペアリングというのは聞いたことがありません。
吟天シリーズがどのようにして中国料理とマリアージュしたのか、詳しく紹介していきましょう。
九つの喜び! 前菜盛り合わせ/吟天水龍 スパークリング日本酒
最初に提供されたのはスパークリング日本酒の「吟天水龍 スパークリング日本酒」。3年も熟成し、味わい深く仕上がっています。優しい泡立ちと繊細な香味で、シャンパーニュに負けていません。
一品目は五味を調和させた9種盛り。チーズとイチジクの甘酸っぱさ、鴨肉の野性味、カラスミの濃厚さ、豚トロの脂の旨味など、様々な佳味が盛り込まれていますが、「吟天水龍 スパークリング日本酒」のやわらかな吟醸香は全ての食味に寄り添います。
百合根のスルスル蒸しスープ 新銀杏ソース/吟天blanc 純米吟醸
次は「吟天blanc 純米吟醸」。醸造に白麹を使い、アルコール発酵の過程で生まれるクエン酸が利いた酸味を立たせたドライな純米吟醸です。ソーヴィニヨン・ブランのように草のような軽やかな味わいが感じられます。ペアリングディナー開催日から「Wakiya一笑美茶樓」でも取り扱いが始まりました。
干し貝柱のスープに、固まるかどうかの程度に熱を入れた百合根、イチョウの翡翠ソースを合わせています。干し貝柱の旨味と百合根の甘味を「吟天blanc 純米吟醸」がさらに引き立てます。
上海蟹の小籠包/吟天白龍2016
「吟天白龍2016」は米、麹、水だけを原料にして、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で造ったスパークリング日本酒。しっかりとした泡立ちと上質な酸味で、クラシックフレンチにもぴたりと符合します。
点心は2種類を用意。上海蟹の身と味噌の小籠包は旨味がたっぷりです。江戸野菜である芯取菜の蒸し餃子は、滋味が感じられる味わい。軽やかな点心にはチャーミングなシャンパーニュが鉄板なだけに、「吟天白龍2016」で間違いありません。
モウカサメの上海風煮込み/吟天白龍 2021
「モウカサメの上海風煮込み」は「Wakiya一笑美茶樓」のシグネチャーディッシュ。気仙沼モウカザメの尾ビレを用いており、最初は20度で、そこから徐々に温度を上げて低温調理しているので、繊維もほどよいかたさです。ベースのスープは干し貝柱、豚骨を7時間炊いてつくられています。白菜は水分が飛ばされており、シャキシャキとした食感。土鍋ご飯も添えられるので、途中から合わせるとよいでしょう。
新ヴィンテージの「吟天白龍 2021」は「吟天白龍2016」よりも酸味を確立し、スパークリングも強めました。そのため、スープは非常に濃厚ですが、さらりとリセットしてくれます。
鹿児島産恵みの黒豚 バラ肉の柔らか煮込み/吟天光龍 2021
バラ肉の煮込み=東坡肉(トンポーロー)は、豚脂のコクと黒酢の酸味とでメリハリがある味わい。付け合せはシンプルな聖護院蕪と、黒胡椒の風味があるブドウの葉に包んだ蒸しご飯です。
「吟天光龍 2021」はライチやマスカットのような華やかな香りで、ワインのブドウ品種であるリースリングやゲヴェルツトラミネールを思わせるので、脂の雑味を寛容に包み込みます。
これからのチャレンジにも期待
吟天シリーズは3年で6種類リリースされました。レストランでのペアリングディナーも年に5~6回、和食のペアリングは毎月定例で行われており、ますますプレゼンスを高めています。
販売しているのは、2015年に創立した小田切商事。代表取締役を務める小田切崇氏は、学生時代に仲間たちと共に地方を巡って日本酒に対する造詣を深めてきました。卒業後に日本IBMへ就職しますが、日本酒好きが高じて、1990年には日本酒と料理をテーマとした食事会を始めます。当時はとても希少であった「唎酒師(ききさけし)」の資格を1995年に取得し、日本酒の普及に尽力してきました。
小田切氏は次のように振り返ります。
「日本酒は中国料理にペアリングするというイメージがありません。しかし、だからこそ、可能性を広げてみようと思いました。脇屋シェフには日本酒と中国料理のマリアージュに興味をもっていただき、YouTubeでも共演させていただいています。そこから今回のペアリングディナーを開催することになりました」
小田切氏は脇屋氏と密にコミュニケーションをとってきたといいます。
「どの料理にどのお酒をマリアージュしたらよいかと、脇屋シェフと6ヶ月前から議論してきました。その結果、これまでにはないペアリングであったと、みなさまからご満足の声をいただいております」
フランス料理やイタリア料理に吟天シリーズをマリアージュしてきた小田切氏。中国料理との見事なマリアージュも果たし、次は何にチャレンジするのでしょうか。小田切氏による吟天シリーズの展開から目が離せません。