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ニつ星スペイン料理とも見事にペアリング! 4万円の商品もある一流店に認められた日本酒とは?

東龍グルメジャーナリスト
吟天シリーズ (C) 東龍

ワインのようにペアリングできる日本酒

日本酒は黒毛和牛や醤油、柚子やワサビと並んで、日本が世界に誇る食品となりました。ただ、日本酒は、日本料理にマッチするものの、その甘味から洋食には合わないとみなされることがあります。

こういった指摘に反駁し、洋食にもぴったりで、ワインのようにペアリングできる日本酒が販売されました。それは、2021年11月18日に発売された吟天シリーズ。

「吟天白龍」(16,500円)と「吟天水龍 スパークリング日本酒」(5,060円)のスパークリング日本酒、白ワインのような「GINTEN blanc 純米吟醸」(11,000円)がラインナップされており、2022年3月1日には「吟天光龍」(44,000円)がリリースされます。

※全て税込み

吟天シリーズのラインナップ

「吟天白龍」は海外への輸出も考えた日本酒で、一般的な720mlではなく、750mlという容量。米・麹・水だけを原料にして、フランスのシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で造りました。5年間、八戸酒造の蔵に密かに眠っていたビンテージを用いた特別なスパークリング日本酒です。

「GINTEN blanc 純米吟醸」は醸造に白麹を使い、アルコール発酵の過程で生まれるクエン酸が利いた酸味を立たせたドライな純米吟醸。米と白麹を原料にしながらも、甘味を感じさせず、喉越しのよいサラッとした口当たり。酸もあって、フレンチにもぴったりです。

「吟天水龍 スパークリング日本酒」は、ふわっと香る吟醸香と米の甘味が、全体をキリッと引き締めたスパークリング日本酒。3年熟成されているので、味わい深く仕上がっています。

「吟天光龍」は日本酒として最高峰の兵庫県特A地区産山田錦を100%使用した純米大吟醸。蔵で1年間氷温貯蔵してから出荷しているので、まろやかさと奥深さがあり、幅広い料理とよく合います。

有名レストランとのコラボレーション

ZURRIOLA(スリオラ) (C) 東龍
ZURRIOLA(スリオラ) (C) 東龍

吟天シリーズは、これまでの日本酒とは異なり、洋食とのペアリングにも最適ということで、東京にある名店とコラボレーションしています。

2021年11月19日/emuN(エミュ)/代々木上原

2021年11月25日/LA BONNE TABLE(ラ・ボンヌ・ターブル)/日本橋室町

2021年12月9日/Simplicite(サンプリシテ)/代官山

2022年1月19日/ZURRIOLA(スリオラ)/銀座

ミシュランガイドで星を獲得していたりする一流レストランばかりです。この中で最近コラボレーションしたのが、本多誠一氏がオーナーシェフを務める「ZURRIOLA」。ミシュランガイドでニつ星を獲得している、モダンスパニッシュレストランです。

どのようなペアリングが行われたのか、詳しく紹介していきます。

吟天白龍

吟天白龍 (C) 東龍
吟天白龍 (C) 東龍

アミューズからタパスまでは、スパークリング日本酒の「吟天白龍」が合わせられます。ビンテージのシャンパーニュにも負けない上品な味わいがあり、泡はクリーミーで穏やか。スパークリングが苦手な方でもおいしく飲めることでしょう。

アミューズ

アミューズ (C) 東龍
アミューズ (C) 東龍

アミューズ (C) 東龍
アミューズ (C) 東龍

最初に2種のアミューズが提供されます。オリーブオイルが中に入ったパン、ポテトのピューレとチョリソは、手でつまんでいただきます。味がしっかりとしているので、「吟天白龍」のきめこまやかな泡がよく馴染みます。

5種のタパス

5種のタパス (C) 東龍
5種のタパス (C) 東龍

タパスは5種類あります。塩でマリネした後に蒸留酒で洗った「自家製カラスミ」、希少な三重県桑名の沖シジミを用いた「沖しじみのサルピコン」、アカエビをたっぷり用いた「駿河湾赤海老のコンソメ」、本多氏のスペシャリテである高貴な香りを漂わせた「ペドロヒメネス香るフォアグラ」、熟成サラミなどを用いた「ソブラサーダと卵黄のコルネテ」。

どれも個性が豊かで、食味と食感のメリハリがあります。「吟天白龍」は個性的な味わいも穏やかに包み込んでくれるので、どのタパスとも相性がよいです。

吟天光龍

吟天光龍 (C) 東龍
吟天光龍 (C) 東龍

次は贅沢にも、まだリリースされていない「吟天光龍」が登場。まろやかな口当たりなので、アカザエビの気品ある食味にもぴったりです。甘いニュアンスが黒トリュフの香りともよく合っています。

赤座エビと豚肉

赤座エビと豚肉 (C) 東龍
赤座エビと豚肉 (C) 東龍

海のものと山のものを合わせた一品。アカザエビの上には黒トリュフ、下にはクスクス。目の前でアカザエビの頭と豚のノド肉のスープがかけられるので、香りがよく立ちます。ドレッシングはビネガー風味で、後口がさっぱり。

GINTEN blanc 純米吟醸

GINTEN blanc 純米吟醸 (C) 東龍
GINTEN blanc 純米吟醸 (C) 東龍

次は白ワインのような美しい酸をもつ「GINTEN blanc 純米吟醸」です。キャビアは一般的にシャンパーニュと合うとされていますが、ウナギや焦がしタマネギのソースが使われているので、「GINTEN blanc 純米吟醸」とも見事にマリアージュ。サワラの料理では、ピルピルソースのオリーブオイルとよくマッチしています。

キャビアのラビオリ

キャビアのラビオリ (C) 東龍
キャビアのラビオリ (C) 東龍

こちらも本多氏のスペシャリテ。ワインのブドウの枝で燻製し、香りが豊かです。焦がしタマネギのソースを包み込んだラビオリはダイコンで巻かれ、上にはウナギの白焼き。最初はキャビアを食べ、途中からラビオリを崩してソースを付けるとよいでしょう。

サワラのマリネ

サワラのマリネ (C) 東龍
サワラのマリネ (C) 東龍

ピルピルは油がはねる擬音で、オリーブオイルで煮たバスク地方の伝統料理です。サワラはミキュイ(半ナマ)の状態に火入れされており、旨味と繊細な風味を楽しめます。付け合わせは青リンゴやポテトのピューレ。

吟天水龍

吟天水龍 (C) 東龍
吟天水龍 (C) 東龍

メインディッシュには泡の圧力がしっかりとした「吟天水龍」をペアリング。イベリコ豚は力強い食味と脂をもつので、きれいに流せる「吟天水龍」が最適です。

イベリコ豚のアサード

イベリコ豚のアサード (C) 東龍
イベリコ豚のアサード (C) 東龍

イベリコ豚の肩肉を胡椒風味にして焼きました。コクのあるキノコのソースが、イベリコ豚の滋味を深めてくれます。周りには松の実とホウレンソウ、フレッシュなマッシュルーム。

コラボレーションの背景

吟天シリーズを手掛ける小田切商事で代表取締役を務める小田切崇氏 (C) 東龍
吟天シリーズを手掛ける小田切商事で代表取締役を務める小田切崇氏 (C) 東龍

素晴らしいコラボレーションでしたが、どのような経緯で実現されたのでしょうか。

吟天シリーズを手掛けるのは、2015年に創立した小田切商事。代表取締役を務める小田切崇氏はこう振り返ります。

「ワインリストはあっても、日本酒リストはない高級料亭は少なくありません。日本酒が高級酒という印象を持たれていないこと、ワインのように料理に合うお酒と思われていないことに衝撃を受けました」

しかし、次のように考えているといいます。

「日本酒の方がワインよりも合う食材が多いです。テロワールやペアリングにおいても、日本酒はワインにひけをとりません。例えば、生牡蠣であれば、ワインは生牡蠣の生臭さをワインの酸味で切ることで口の中をさっぱりさせますが、日本酒は口の中で融合することでクリーミーな味わいへと変化させます。これこそが、本当の意味でのペアリングではないでしょうか」

このような日本酒への思いを背景にして、小田切氏が自ら一流シェフに掛け合って、吟天シリーズとのコラボレーションを企画していったのです。今後もコラボレーションは企画されていき、吟天シリーズも毎年2種類ずつリリースされ、いずれは10種類を揃えたいといいます。

新しい吟天シリーズもコラボレーション企画もまだ続くので、日本酒好きにとってはもちろん、ワイン好きにとっても全く目が離せません。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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