この投手は「オールスターに選ばれなかった年にサイ・ヤング賞」となるのか
ア・リーグの防御率トップ3には、ジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)、ディラン・シース(シカゴ・ホワイトソックス)、シェーン・マクラナハン(タンパベイ・レイズ)が並んでいる。それぞれの数値は、1.95、2.09、2.29だ。
サイ・ヤング賞の有力候補は、この3人だろう。防御率は判断材料の一つに過ぎないが、ア・リーグでチームの試合数×1イニング以上を投げ、防御率2.60未満の投手は、彼ら以外にいない。
バーランダーとマクラナハンは、今年のオールスター・ゲームに選ばれた。一方、シースは、先月半ばに「この投手がオールスターに選ばれていないのはおかしい!? 防御率は4位、奪三振率はトップ」で書いたとおり、選出されなかった。その後の代替選出もなかった。
これまでにサイ・ヤング賞を受賞した延べ122人のうち、その年のオールスター・ゲームに選ばれなかった投手は、1956年に最初の受賞者となったドン・ニューカム――1956~66年は両リーグで計1名の選出――から昨年のロビー・レイ(当時トロント・ブルージェイズ/現シアトル・マリナーズ)まで、25人を数える。2020年はオールスター・ゲームが開催されず、メンバーの選出もなかったので、この年に受賞したシェーン・ビーバー(クリーブランド・インディアンズ/ガーディアンズ)とトレバー・バウアー(当時シンシナティ・レッズ/現ロサンゼルス・ドジャース)を除くと、全体の19.2%(23/120)だ。
23人中18人の防御率は、前半戦よりも後半戦のほうが低い。1987年以降の11人は、いずれもそうだ。なお、1984年のリック・サトクリフは、前半戦が1.96、後半戦は2.93だが、この防御率は、シカゴ・カブスで投げた5登板と15登板だ。6月半ばまではインディアンズにいて、15登板で防御率5.15だった。それを含めれば、前半戦の防御率は4.26となる。
今シーズンのシースも、後半戦のここまでの防御率は、前半戦より低い。前半戦の19登板で2.15に対し、後半戦は5登板で1.86を記録している。ちなみに、バーランダーは1.89と2.14、マクラナハンは1.71と4.40だ。
シースの場合、前半戦と後半戦よりも、最初の9登板とその後の違いが大きい。5月24日までは46.2イニングで防御率4.24、5月29日以降の15登板は87.0イニングで防御率0.93だ。自責点が公式記録となった1913年以降、オープナーを除くと、13先発続けて自責点1以下の投手はいなかったが、シースは、5月29日~8月11日の14先発とも、自責点を1以下にとどめた。14登板中8登板は、自責点ゼロだ。
シースとバーランダーは、8月16日に同じ試合で登板した。自責点はどちらも3ながら、シースは5イニングで降板し、バーランダーは7イニングを投げた。この試合だけでなく、サイ・ヤング賞でも、投票が現時点であれば、シースはバーランダーの後塵を拝するような気がする。防御率以外のスタッツは、バーランダー、シース、マクラナハンの順に、イニングが143.0(22登板)と133.2(24登板)と141.1(23登板)、クオリティ・スタート(QS)が18と11と17、FIPが2.89と2.88と2.73、奪三振率が8.69と11.99と11.02、与四球率が1.57と3.91と1.85、K/BBは5.52と3.07と5.97だ。シースは、イニングとQSが少なく、与四球率は高い。
ただ、シーズンは、まだ1ヵ月以上が残っている。シースが受賞する可能性は、まだ潰えてはいない。
なお、オールスター・ゲームに選ばれなかった年に、リーグのMVPを受賞した選手については、こちらで書いた。