オバマ政権の怒りに触れ真珠湾訪問のカードを切った安倍総理
フーテン老人世直し録(265)
極月某日
5日の東京新聞朝刊に「トランプ・安倍氏会談に異議」と題する記事が掲載された。大統領選挙でトランプ氏の勝利が確実になるや、安倍総理がトランプ氏に会談を申し入れ、先月17日にニューヨークで会うことになったことで、米国政府は日本政府に対し「前例のないことはしないでほしい」と「異議」を伝えていたという内容である。
「異議」というより「不快感の表明」とする方が適切だとフーテンは思うが、安倍総理の「ネギ背負った鴨がひたすら強者にすり寄る外交姿勢」は、強者にとって都合の良いところは喜ばれるが、しかしそれはまさに都合の良い部分だけで、腹の中では「信頼に足る指導者ではない」と判断されていることを証明している。
それを「世界で一番先にトランプ次期大統領と会談できた」とはやし立てるメディアや識者がこの国に存在することがフーテンにとっては不思議である。「一番先に会ってもらえた」と喜ぶのは強者の足元にひざまずくことしか知らぬ奴隷のセリフで、それほどこの国のメディアや識者には奴隷根性がこびりついているということだ。
フーテンの見方は、ブログにも書き続けてきたように、安倍総理がオバマ大統領の懸念する日ロ接近をTPP協定の早期批准によって帳消しにしてもらうシナリオを描き、ヒラリー・クリントンが当選するとの前提で、オバマ大統領によるTPP協定批准を側面支援する姿勢を見せていた。
そのシナリオがTPP撤退を選挙公約に掲げたトランプ氏の勝利によって無残にも崩れ去り、慌ててトランプ氏に会談申し入れを行った。おそらく藁をも掴みたい心境で「会いたい」と思ったのだろう。まだ大統領になってもおらず、しかもフーテンの見方では大統領になるつもりがなかった人物と会ってもほとんど意味はない。
にもかかわらず不安が先に立った。これは5年前の東日本大震災で周囲の制止も聞かずに発生翌日に現場を訪れて顰蹙を買った民主党の菅直人元総理を思い起こさせる。リーダーたるものはしっかり全容を把握してから動くもので、すぐじたばた動く小人物にリーダーの資質はない。その意味で安倍総理と菅元総理はコインの裏表のようにフーテンには映っている。
とここまで書いてきたところで安倍総理が年末に真珠湾を訪問するとのニュースが飛び込んできた。オバマ大統領と共に慰霊をするというのである。なるほどこれで東京新聞の記事は事実であるか事実に近いことが証明された。米国政府の「不快感の表明」を受け安倍総理はまたじたばた動こうとしている。
この記事は有料です。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバーをお申し込みください。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバー 2016年12月
税込550円(記事8本)
※すでに購入済みの方はログインしてください。