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愛知の入札事業の疑惑に対して県から反論の書面(全文掲載)

関口威人ジャーナリスト
愛知県の県庁舎(筆者撮影)

 愛知県の新体育館建設・運営などの入札事業について、私が12月23日付で執筆した記事に対し、同26日付で愛知県政策企画局企画調整部政策調整課長名による書面が私個人宛てにメールで届いた。

【独自調査】新体育館など愛知県の入札事業への重大疑惑と「政策顧問」存在の闇

 別表として付してある内容の記述が、「事実に基づかない多くの不公正な表現を含むものであり、極めて遺憾」であるとし、「厳重に抗議するとともに、撤回と謝罪、そして、その旨の公表を求めます」「今後は、正確な取材に基づき、正確な記事を掲載していただくよう強く要請します」とある。

 「撤回と謝罪」については保留するが、県の指摘内容はむしろそのまま公表し、県民や一般の皆さんにも判断を仰ぎたいと思うので、以下に最大限そのまま引用して掲載する。なお、元のPDFはこちらにアップロードしている。公開の意向は先方に伝えてある。

:元は「位置」「記事の内容」「問題点」の3列に分かれた表になっているが、連続的に書き起こす。記事の小見出しが引用されている部分は省いた。丸数字は、便宜的に筆者が加筆した。

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①記事タイトル 【独自調査】新体育館など愛知県の入札事業への重大疑惑と「政策顧問」存在の闇

・事実に基づかない扇動的かつ一方的な表現である。

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②2つ目のパラグラフ 見出し 「絶対条件」ではなかった大階段計画

          5段落目 採用案の大階段や2階へのアプローチが絶対ではなかったことが分かる。

・2階エントランスや外に階段を設けることを「絶対条件」とした事実はない。県が「絶対条件」と言ったかのような誤った印象を与える記述であり、不適切である。

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③2つ目のパラグラフ 9段落目 運営権対価込みの金額が分かったので比較すると、(中略)その価格差は約80億円だった。

・事業者の選定は、外部有識者5名による愛知県新体育館整備・運営等事業PFI事業者選定委員会で行ったものであり、施設整備や運営企画など性能等に関する評価を170点、入札価格の評価を30点、合計200点で総合的に評価することを、事前に公表して手続を進めた。

・この評価方法では、

性能等に関する評価        建設費

170点 ⇒ Aグループ 107.88点 約316億円(※Yahoo!記事に記載された金額)

     Bグループ  86.15点 非公表

     Cグループ 132.16点 約396億円

入札価格の評価

30点 ⇒ Aグループ 26.04 点  187億円(税抜170億円)

    Bグループ  30.00点 約162億円(税抜約148億円)

    Cグループ 24.35 点 約199億円(税抜約182億円)

 となった。

 以上のとおり、今回の事業は、県のサービス購入料の上限200億円の範囲内で民間事業者負担を含めて総合評価を上げることが評価されるものである。(なお、建設費と入札価格の差額を民間事業者側が負担するものであるが、その負担額は、Aグループ約129億円(※Yahoo!記事に記載された金額から算出)、Cグループ約197億円となっている。)

以上を総合的に評価して優先交渉権者を決めるもので、建設費だけで決めるものではなく、その部分は全体の15%であることは、愛知県新体育館整備・運営等事業PFI事業者選定委員会で審議し、事業者募集の当初から示しているところである。

 それらを全く無視して建設費だけをことさらに取り上げて、むしろ、民間事業者負担を一切無視して、「通常は入札価格が高い方が評点(入札価格点)は低くなるため、採用案(C)はその時点で最も低い点数だった」と言うのは、客観的な事実、経緯を無視して、これをゆがめるものであり、まさに事実関係に反するものと言わざるを得ない。まさにナンセンスそのものであり、極めて遺憾である。厳重に抗議する。

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④2つ目のパラグラフ 11段落目 採用案はよほど価格面以外の内容で良いものでなければならない。しかし、実際にはバリアフリーや建物の高さ、VIPを優遇し動員し続ける計画性や超高級ホテルの実現性で問題が指摘できるものだった。

・総合評価落札方式は、「価格」と「価格以外の要素」を総合的に判断する方式である。今回の提案の審査では、「ICT技術を積極的に活用し、一体感や臨場感の最大化を図るとともに、グローバルサービスを展開する新たなアリーナであること」、また、「アマチュアスポーツ選手や演者の憧れとなり、認知度やブランドを大きく向上させる提案であること」などが特に高く評価された。「価格」や、記者が「問題が指摘される」とした点のみを強調する論調は、不適切である。

・「VIPを優遇し」や「超」高級ホテルは、提案内容になく、事実と異なる。また、建物の高さ、事業の計画性、ホテルの実現性について「問題」とした事実もなく、不適切である。

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⑤3つ目のパラグラフ 見出し 知事と同級生の政策顧問が事業「主導」

・愛知県新体育館整備・運営等事業始め愛知県のコンセッション事業については、県が責任を持って事業計画を立て、予算を確保し、県議会の議決の下、適正な手続きを経て実施しており、政策顧問が主導したという事実はない。

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⑥6つ目のパラグラフ 6段落目 U氏関係の委員が多くを占めることで、幅広い分野の専門家が入れず、バリアフリーなどの多様な視点が抜け落ちてしまった

・名古屋大学の谷口名誉教授のコメントとされている記述であるが、選定委員会の委員について、政策顧問の関係者として選任した事実はない。また、幅広い分野の専門家に依頼し、バリアフリーを含め多様な視点から審査しており、事実と異なり不適切である。

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⑦7つ目のパラグラフ 2段落目 政策顧問が前田建設工業の利益を図る行為は、愛知県との間で利害相反するため、善管注意義務に違反することになる

・愛知県新体育館整備・運営等事業始め愛知県のコンセッション事業については、県が責任を持って事業計画を立て、予算を確保し、すべて公正な入札等の手続きを経て事業者を決定しており、政策顧問が前田建設工業の利益を図るという記述は、全く事実ではない。

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⑧7つ目のパラグラフ 3段落目 総合評価方式の入札は、そもそも評価がブラックボックスになる。なぜこうした価格の高い案を選ぶ必要性があったのか、知事のお友達で固めたような体制でいいのか、もっと説明や情報公開がいる。

・引用の体裁をとっているが、事実関係を歪曲し、極めて不公正な表現である。

・先述したとおり、選定した事業者の提案は、「性能等に関する評価」で高い評価を受け、入札価格も含め、総合評価で最も優れていると客観的に評価されたものであり、「なぜこうした価格の高い案を選ぶ必要性があったのか」とのコメントは、全く不正確で事実ではない。

・今回選定した事業者の提案は、「ICT技術を積極的に活用し、一体感や臨場感の最大化を図るとともに、グローバルサービスを展開する新たなアリーナであること」、また、「アマチュアスポーツ選手や演者の憧れとなり、認知度やブランドを大きく向上させる提案であること」などを高く評価し、審査結果として公表している。

・「知事のお友達で固めたような体制」という記述については、そのような事実はない。

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…以上である。この文書を受けて、必要があれば元記事に追記などをしていくつもりだが、今のところその予定はない。

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。東日本大震災発生前後の4年間は災害救援NPOの非常勤スタッフを経験。2012年からは環境専門紙の編集長を10年間務めた。2018年に名古屋エリアのライターやカメラマン、編集者らと一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」を立ち上げて代表理事に就任。

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