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この夏のトレードで「レンタル」できる先発投手のなかで、菊池雄星はトップクラス!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
菊池雄星(トロント・ブルージェイズ)Jul 9, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ポストシーズン進出、あるいはその先のワールドシリーズ優勝をめざすチームが、夏のトレードで先発投手を獲得するのは、一般的な動きだ。

 どの先発投手を手に入れるかの判断基準は、期待できる投球だけではない。

 例えば、ギャレット・クローシェイ(シカゴ・ホワイトソックス)がFAになるのは、2026年のオフだ。一方、菊池雄星(トロント・ブルージェイズ)は、3年3600万ドルの契約最終年なので、FAまで数ヵ月しかない。タイラー・アンダーソン(ロサンゼルス・エンジェルス)は、クローシェイと菊池の間。3年3900万ドルの契約は、来シーズンまで続く。

 クローシェイなら、ここからの数ヵ月のみならず、その先の2シーズン、2025年と2026年も、ローテーションの1番手か2番手として計算できる。しかも、まだ25歳と若く、年俸調停の申請権はあるものの、まだ年俸は安い。今シーズンの年俸は、80万ドルに過ぎない。それだけに、獲得に必要な見返りは大きくなる。

 アンダーソンは、来シーズンも保有でき、クローシェイほどの見返りは不要だ。ただ、来シーズンに関しては、好投できるのか、という疑問符もつく。2021年以降のシーズン防御率は、4.57→2.57→5.43→2.81と上下している。現在の年齢は34歳。来シーズンも、年俸は1300万ドルだ。

 その点、菊池であれば、FAまでの「レンタル」となるので――ブルージェイズに返却するわけではないが――見返りとリスクは、わずかで済む。

 今シーズン、菊池は、101.1イニングを投げ、奪三振率9.86と与四球率2.04、防御率4.00を記録している。直近の7月9日は、13三振を奪い、自己最多を更新した(「菊池雄星の「1試合13奪三振」は大谷翔平の最多と並ぶ。日本人投手の最多は野茂英雄の17奪三振」)。

 今のところ、夏のトレード市場で売り手として動きそうなチームにいて、今オフにFAとなる先発投手のなかで、菊池を凌ぐのは、ジャック・フラハティ(デトロイト・タイガース)しか見当たらない。フラハティは、95.0イニングで奪三振率11.27と与四球率1.52、防御率3.13を記録している。

 ただし、テキサス・レンジャーズが売り手に回ると、フラハティと菊池の2人と同じように「レンタル」できる先発投手は、一気に増える。マイケル・ロレンゼン(92.0イニング/奪三振率6.36/与四球率4.30/防御率3.52)、アンドルー・ヒーニー(90.0/9.20/2.40/3.80)、マックス・シャーザー(23.1/6.56/1.16/3.09)は、いずれも、今オフにFAだ。彼らに加え、ネイサン・イオバルディ(87.0/8.79/2.69/3.10)も、そうなる可能性がある。今シーズンの投球内容が菊池より上かどうかはともかく、4人とも、防御率は菊池より低い。

 シャーザーは、トレード拒否権を取り下げるつもりはないと発言しているが、状況次第では、気持ちを変えるかもしれない。それについては、こちらで書いた。

「今夏のトレード市場から大物が消える!? シャーザーはトレード拒否権を取り下げない意向を示す」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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