石丸伸二氏でなくても激怒? 苛立つ「雑な質問」5選
現在、石丸伸二氏の質問に対して「質問で返り討ち」する――いわゆる「石丸構文」が話題を呼んでいる。自分の発言は正しく伝わってほしい、という思いが強いのか。質問の意図や、言葉の定義にこだわる石丸氏独特の姿勢が注目を集めている。
印象が大事な政治家にとってこの姿勢が、正しいかどうかはわからない。ただ、
「もっと質問力を鍛えてほしい」
「そんな質問されても、いったい何を答えたらいいか分からない」
という気持ちになることは、私もよくある。コンサルタントという職業柄、質問されることが非常に多いからだ。テレビや雑誌などからメディア取材を受けるとき、いつも痛切に感じている。
そこで今回は、私の経験も踏まえ、代表的な5つの「雑な質問」を紹介する。取材する人、インタビューする人のみならず、営業活動でお客様にヒアリングするとき等にも参考になるはずだ。ぜひ最後まで読んでもらいたい。
代表的な「雑な質問」とは、次の5つである。
(1)疑問に思ったことをそのまま質問する
(2)質問する相手を間違える
(3)考えればわかることを質問する
(4)調べればわかることを質問する
(5)抽象的なことを質問する
■5つの「雑な質問」徹底解説
(1)疑問に思ったことをそのまま質問する
それでは一つずつ紹介しよう。
第一に「疑問そのまま質問」である。パターンは決まっている。
「どうして●●は、●●なんでしょうね?」
である。
「どうして日経平均株価はこんなに上がってるんでしょうね?」
「なんで最近は異常気象が増えたんですかね?」
何かの事象を目にして疑問に思ったことを、そのまま口にするパターンだ。独り言なら成立するが、実際に質問してしまうから、相手は困るし、呆れる。
「そんなこと、知らないよ」
と言われるだけだ。相手の立場に立って質問することが、基本姿勢である。
(2)質問する相手を間違える
第二に、聞く相手を間違えている質問だ。こんな質問をしたら、石丸氏でなくても、
「私に聞かないでよ」
「それ、私に聞くことですか?」
と返り討ちしたくなるだろう。ビジネスの現場でもよくある。
「なぜ部長は、私にこの仕事を依頼したんですか?」
「部長に聞けよ。なんで課長の俺に聞くんだ」
と突っ込まれる。聞きやすい相手ではなく、誰に聞くと一番いいのか、いつも考えるクセを身につけたい。
(3)考えればわかることを質問する
第三に、「考えればわかる質問」だ。石丸氏は、このような質問に飽き飽きしているように見える。こんな質問をしていると、
「聞く前に、自分で考えたんですか? 考えてから質問してください」
と注意されるだろう。
「同じ質問を繰り返されてます?」
と返り討ちされるのも、この類だろうか。
「言われてみればそうですね」
「よく考えたらそうでした」
こういう口ぐせがある人は、十分に気を付けよう。考える習慣が足りないのかもしれない。質問する前に、自分で考えればわかることかどうか。自問自答するクセをつけるべきだ。
(4)調べればわかることを質問する
第四に、「調べればわかる質問」だ。石丸氏を苛立たせる質問は、このパターンが2番目に多いだろう。
「それぐらい自分で調べてください。ちょっと調べればわかるでしょ」
インタビュアーは、考えもしないし、調べもしない有権者を代弁して質問しているケースもある。だから政治家が「考えてから質問して」「事前に調べてから質問して」と返り討ちしていいかどうかは、分からない。
しかしビジネスシーンにおいては、事前調査をしてから質問すべきだろう。お客様に対してヒアリングするときは、必ずだ。そうしないと信頼関係が壊れることもある。
(5)抽象的なことを質問する
第五に、「抽象的すぎる質問」だ。石丸氏を苛立たせる質問第1位ではないか。あまりに抽象的な質問だと、
「何を答えたらいいわけ?」
と相手は受け止める。代表的なのは、
「最近、いかがですか?」
「何か困っていることはありますか?」
こういった質問だ。具体性に欠けるので、答えたとしても、
「そういうことを聞いているんじゃなくて」
と返されそうだ。だから
「最近いかが、と言われても……」
「何か困っていることって、聞かれても……」
と質問されたほうは困ってしまう。
石丸氏も、
「手応えはどうですか?」
という質問には呆れ気味であった。
だから具体的な表現を質問に盛り込むべきなのだ。抽象的な質問をされると、相手の期待に応えられる可能性が低いと思ってしまう。
■質問力をアップするには、事前設計が大事
設計士が施主さんに質問するケースをイメージしてみたらいい。設計士が、
「どんな感じの家を建てたいですか?」
と質問して、具体的にこたえられる施主さんは、ほとんどいないだろう。あまりにも抽象的だからだ。だから、
「ご予算はどれぐらいですか?」
「家の広さは?」
「リビングは?」
「屋根の形は?」
などと具体的な質問をしないと、どう答えたらいいか分からない。
「最近、人手が集まらないんですが、どうしてなんでしょうね?」
などと、「疑問そのまま質問」しても施主さんは困るだろう。
「そんなこと、知りませんが」
と答えるのが精いっぱいだ。
「この輸入建材はどこで仕入れたらいいんでしょうか?」
と質問されたら、施主さんは、
「それ、私に聞くことですか?」
と設計士に問いただしたくなるだろう。相手が建築設計のプロであれば、質問の精度で分かる。的外れな質問(雑な質問)をすればするほどお客様には信頼されなくなるだろう。
質問も建物と同じで、事前に設計しておこう。何も準備せず、場当たり的に尋ねていると、いつまで経っても質問力はアップしない。
<参考記事>