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北朝鮮が極超音速ミサイル試射に再び成功、金正恩が視察したと発表

JSF軍事/生き物ライター
労働新聞より「金正恩、極超音速ミサイルを視察」。モニターにミサイルの飛行経路

 1月12日、北朝鮮は前日の1月11日に発射したミサイルの写真を公開しました。前回1月5日に発射した「極超音速ミサイル」と同じミサイルが再び試験発射に成功したと発表、1月11日の発射には久しぶりに金正恩がミサイル試験発射の視察に立ち会ったことを伝えています。

 一連のミサイル発射試験は「極超音速武器体型の全体的な技術的特性を最終確認するため」に行われ、「最終試験発射を通じて極超音速滑空飛行戦闘部の優れた機動能力がさらに明らかになった」と説明されています。この機動弾頭によく似た滑空弾頭は実戦配備段階まで到達したという宣言です。

 1月11日の試験発射について、北朝鮮から発表された飛行性能は以下の通りです。

「発射されたミサイルから分離された極超音速滑空飛行戦闘部は距離600kmの辺りから滑空再跳躍し、初期発射方位角から目標点方位角へ240kmの強い旋回機動を行い、1000km水域の設定標的を命中した。」

出典:北朝鮮・労働新聞2022年1月12日「主体的国防工業の指導史に刻んだ朝鮮労働党の輝く功績を再び満天下に誇示 極超音速ミサイル試験発射で連続成功 敬愛する金正恩同志が極超音速ミサイル試験発射を現地で視察された」より

 今回は側面機動(측면기동)ではなく旋回機動(선회기동)という言葉が使われています。前回1月5日の発射では700km飛行・120km側面機動と発表されていたので、1月11日の発射は1000km飛行・240km旋回機動と射程が大きく伸びた上に水平方向への旋回量も2倍になったことになります。

参考:北朝鮮の機動式弾道ミサイルの「側面機動」

 北朝鮮の極超音速兵器の試験発射はこれで3回目になります。使用したブースターは3回とも全て中距離弾道ミサイル「火星12」の流用品なので、3700km飛翔した実績のある火星12の余力をまだ残しています。最大速度は韓国軍の観測数値です。

  1. マッハ3・・・2021年9月28日「火星8」
  2. マッハ6・・・2022年1月5日「極超音速ミサイル」
  3. マッハ10・・・2022年1月11日「極超音速ミサイル」 

 徐々に速度を上げながら段階的に試験を行っています。1回目は遅すぎて失敗と疑われていましたが、最初から予定通りの速度設定だった可能性があります。

 そして滑空弾頭は「火星8」は先進的な極超音速滑空体であるウェーブライダー形状、「極超音速ミサイル」は機動式弾道ミサイルによく似た円錐形状です。堅実な古い設計の「極超音速ミサイル」の滑空弾頭は今回の最終試験発射で実用化の目途が立ったようですが、先進的で斬新な設計の「火星8」の滑空弾頭は簡単には実用化できず、これから試験発射が何度も繰り返されることになるでしょう。

関連:北朝鮮が6日ぶりにミサイルを発射。再び極超音速兵器か(2022年1月11日)

北朝鮮労働新聞より「金正恩、極超音速ミサイルを視察」
北朝鮮労働新聞より「金正恩、極超音速ミサイルを視察」

北朝鮮労働新聞より「極超音速ミサイル」2022年1月5日(上)、2022年1月11日(下)
北朝鮮労働新聞より「極超音速ミサイル」2022年1月5日(上)、2022年1月11日(下)

北朝鮮労働新聞より「金正恩、極超音速ミサイルを視察」
北朝鮮労働新聞より「金正恩、極超音速ミサイルを視察」

北朝鮮労働新聞より「金正恩、極超音速ミサイルを視察」
北朝鮮労働新聞より「金正恩、極超音速ミサイルを視察」

 1月11日の試験発射を金正恩が視察しているモニターに旋回機動しているミサイルの飛行経路が映っています。おそらく、わざと見せています。

 北朝鮮内陸の慈江道から日本海に向けてほぼ東方向に発射され、進行方向の左に旋回しながら直線距離1000km先に着水。600km飛翔したあたりで滑空再跳躍および左旋回を開始、240km分を曲がって飛行しています。

 この図のように飛んでいるなら再跳躍は1回のみということになりますが、飛翔距離や滑空距離、旋回距離も含めて、果たして北朝鮮の発表通りに飛んでいたのかまだ確認が取れていません。日米韓による詳細な分析が待たれます。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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