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NPBでも盗塁王を獲る!元盗塁王・西村徳文氏の愛弟子、濱将乃介が同じⅮ5位で中日ドラゴンズから指名

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
ドラフト指名後のフォトセッションでカメラマンのリクエストに応える濱将乃介

■師弟ともにドラフト5位指名

 福井ネクサスエレファンツ日本海オセアンリーグ)の濱将乃介はま しょうのすけ)選手が、先日のNPBドラフト会議にて中日ドラゴンズから5位指名を受けた。(ドラフト記事⇒レギュラー獲りを誓う

 濱選手には、NPB入りを実現するために師事してきた“師匠”がいる。ネクサスエレファンツの会長兼ゼネラルマネージャーの西村徳文氏だ。

 西村氏に出会い、その懐に飛び込んで教えを乞い、奥義を授かった。それが自身を成長させ、そして、その結果がドラフト指名に繋がった。

 濱選手にとって恩師ともいえる西村氏に、愛弟子について語ってもらった。

――中日ドラゴンズから5位で指名されました

 もう、支配下で指名されたっていうのが一番嬉しくてねぇ。

 (ドラフト会議の)20日は福井にいたかったんだけど、ちょうど地元の宮崎で講演と野球教室が入っていて。だいぶ前から決まっていたのでね。福井にいられなかったのが、本当に残念でした。

 でも電話ではちょっと話しました。「おめでとう」ってね。実はドラフトの前日にも濱から電話がかかってきましてね。「不安と期待と両方です」なんて言うんで、「もう、どっしり構えとけ。大丈夫だから。信じて待っとけば」という話をしていたんですよ。

 順位が5位じゃないですか。自分も5位なんですよ(1981年)。だから、5位って聞いたときに、なんかくるものがありましたね。

西村徳文 会長兼GM
西村徳文 会長兼GM

■盗塁、走塁

――最初に出会ったのは2月

 そう。雪がまだ積もっていてグラウンドは使えなくて、ブルペンでの練習でしたね。

 球団の人間から濱のことは「プロも注目している選手」だと聞いていたんですよ。でも足は速いんだけど、去年まではあんまり走っていないっていうこともね。だから、そういうところから話は入りましたよね。

 話してみると、本人も盗塁に対して興味を持っているというか、走りたい気持ちが強くてね。それなら一緒に取り組んでいこうかっていうのがスタートでしたね。

――身体能力などを見て、モノになると?

 それは感じたんですけど、ただ盗塁に関してはいじるところはたくさんあるなって思いましたね(笑)。でも、ちゃんと取り組んでいって、本人がマスターしてくれればなんとかなるというのはありました。

 要は、スタートするにあたって無駄な動きが多すぎたんですよ。無駄な動きが多いということは、時間がかかってしまうわけです。無駄な距離もね。

 だから、今までなら間一髪アウトになっていたやつを、じゃあ全部セーフにしようと、無駄をどういうふうに省いていくかっていう話をしました。

――無駄を省くために具体的にはどうしたんですか

 右足の使い方ですね。右足の動き方で時間がかかり過ぎてしまっていたんです。

 スタートを切るときなんですが、濱は右足を宙に浮かせて手前に引いてスタートを切ってたんです。それよりも右足を浮かさずに、そのまま地面に着いた状態で左足を先にセカンド方向に送り出したほうが、よりスムーズにいくんじゃないかと。

 選手それぞれ違って、どれが正解というのはないんです。どれがどの選手に合うかっていうのは、やってみないとわからないんですけど、自分がこのやり方で成功したので、まずこれをやってみようよ、と。でも、これが合うかどうかはわからないよという話はしました。

――やってみた結果、合ったんでしょうか

 濱に合いましたね。

 さらに右足のつま先の角度にも本当にこだわってやりました。右足のつま先の角度を45度くらいの角度にしておいて、若干後ろに引くような形で。そうすることによって、左足が送りやすくなるんです。

 人によって違うので正解がないですよね。これは盗塁のスタートに限らず、野球に限らず、すべてにおいてそうじゃないですか。

 だから、僕の場合は押し付けるんじゃなくて、相手にしっかり理解させて、そこでまず取り組んでみようと。取り組んでみてどうなのかを見て、それからさらに深いものにしていくのか、止めて違う形で取り組むのかっていうのをまた、考えるようにしますね。

――距離の無駄を省くことに関してはどうですか

 濱の走りは、まっすぐじゃなかったんですね。まっすぐじゃない選手が多いんですよ。

 今、プロ野球でも人口芝が多いじゃないですか。人口芝だと自分が走ってきた走路を振り返って、どういうスパイクの跡がついてるかというのを確認できない。

 土のグラウンドだとそれができるので、濱に走ってもらって、「今走ってきた走路を見てみろ」と。すると「だいぶ膨らんでますね。距離的に無駄ですよね」というのを、本人が理解したんです。わからせることが、一番大事。そうやって距離の無駄を省いていきました。

――ほかにもありますか

 次はスライディングです。僕もそうですが、濱も左足を下にしてスライディングするんですね。そうすると、スライディングをするときにさらに膨らむわけですよ、左を下にしてる選手は。だから、ベースにまっすぐ入るためにはどうするかっていうところも、いろいろやりましたね。

 今、プロはリクエストがありますけど、僕らの若いときはなかったんで、審判の人といろんな話をしました。僕はスライディングがすごく速いと言われていて、アウト(のタイミング)がセーフに判定されたのがたくさんありました。

 あまり遠くからスライディングしていくと、ベースに足が着くときにスピードが落ちてしまいます。でも、近すぎてもいけないんです。ある程度近いところからスライディングをかけないと審判からセーフと言われません。そういうところも指導しました。独立リーグもリクエストはありませんから。

 とにかく時間の無駄、距離の無駄を省こうというところをやりましたよね。

――スタートを切る勇気が最も重要だと教えられたそうですが

 背中を押してあげるというかね。それがないと、選手もなかなかスタートが切りづらくなると思うんですよ。

 濱にも「まずスタートを切ることが一番大事じゃないか。そこでアウトになってみろ」というような言い方をしたんですよ。そうしないことには先には進んでいけないとね。まずスタートを切ることによって、どこが悪いかもわかるわけです。そのために背中を押してあげるんです。

 シーズン中、アウトが続いてスタートが切れなくて、本人も悩んでいたときがあったんです。「なに弱気になってるんだ」っていう話をしましたね。「どんどんいけばいいじゃない」って。

 そうしてやっていく中で、一つ一つ覚えていけるんじゃないかなと思うんですよ。

――失敗することで覚えるわけですね

 そう。そうやって、一つ一つクリアできていったんじゃないかなと思いますね。本人と話をして、これまで欠けていたところ、できなかったところを今年1年かけてやらせてもらいました。

 彼には意欲がありますからね。シーズン中も、練習中やゲーム前に必ず「チェックしてください」って来るんですよ。で、一つ一つチェックしながら、今日はどうなっているという話をしました。

 でも、これからNPBに行ったら、一つの成功をするためにはもっともっとやることはたくさんありますけどね。

4年連続盗塁王の奥義を伝授
4年連続盗塁王の奥義を伝授

■バッティング

――バッティングについてはどうでしたか

 バッティングでも「ちょっと見てください」と、よく言ってきましたね。自分が今、どういう形で打っているのか、なかなかわからないですから。「なんか違うな」っていうところを感じたときは、僕からも言わせてもらったし。

 ちょっと開きが早くなっているときがありましたね。なぜそうなるか、その前の原因として、左肘の使い方なんですよね。スイングにいくときに左肘がちょっと下に落ちながらっていうときは、あんまりよくないんです。

 バットが最短ではなく、無駄な動きなんですよ。となると、速いまっすぐに差し込まれてしまって対応できないということになります。バッティングで一番気にしながら見ていたのはそこですね。

――相手も崩そうとしてくるし、疲労からくることも

 疲労がたまっている日もあるでしょうし、何試合か結果が出ないと上体だけの力で振ってしまうので、そういう使い方になってしまうんじゃないかと思いますね。

 やっぱりトップの位置から振りだすっていうところの腕の使い方が崩れると、なかなか結果は出ないですね。

 そんなにたくさんのチェックポイントを言っても一度には理解できないので、1ポイント、ときには1ポイントにプラスもう1つくらいというところだけ言いました、バッティングに関しては。

――濱選手のバッティングのよさというのは

 まずは四球を選べるというところ。そこはすごくいいところだと思います。それと、しっかりコンタクトする力があるっていうところ。当然、体に力がありますから、中距離ヒッターとして優れていますね。

――カウントを作れる、四球を選べるのはなぜですか

 ボールの見方でしょうね。見方、タイミングの取り方になってくるんじゃないかなと思います。

 逆に言うと、タイミングの取り方と体の使い方をしっかりしていかないと、微妙に目線がブレてしまうので、ついついボール球に手を出してしまうんです。

 さっき言ったように肘が下に落ちてくると、打ちにいくのにバット振りだすときに目線がちょっと上に上がるっていうブレが生じる。だから、目線のブレがないようにするのが、しっかりした選球眼というところにつながっていくんじゃないですかね。

――三振が少ないのも、同じくそこにつながるわけですね

 そうです。そういうところですよね。たまにはボール球を振って三振っていうのは、どのバッターでもありますから。途中、3割を切って「あぁ…」っていうところもありましたけど。

 オセアンリーグの場合はシーズン59試合でしたけど、その中でも調子いい悪いっていうのは絶対ありますから、いかに調子の悪い期間を短くするかというのが大事。

 そうなると、やっぱり誰かがしっかりチェックしてあげないと。本当は一人でできれば一番いいんでしょうけど、やっぱり濱のようにチェックを求めるということは、すごく大事じゃないかなと思います。

 盗塁に関してもバッティングにしても、自分から(アドバイスを)求めてきたっていうのは、すごく勉強熱心だと思いますよね。

打撃でもアピールした(撮影:筆者)
打撃でもアピールした(撮影:筆者)

■守備

――次は守備に関してです。本人がショートに挑戦したいと希望しましたが、途中から西村さんが肩を見込んでセンターへと

 そうなんですよ(笑)。どっちかハッキリさせないといけないというところで、あの肩はNPBに行ってもすぐ通用するって思ったので、外野のほうが(NPBに)入れる確率が高いんじゃないかと思って、途中からセンターをやらせたんですね。

 でも、スカウトといろいろ話をすると、「ショートで見たい」「センターで見たい」って意見が分かれるものですから、両方やるようにしたほうがいいんじゃないかなと。そこはちょっと濱には申し訳ないことしたんですよ。

――本人はどちらもやる気でした

 そうなんです、そうなんです。それに、両方できるというところで、スカウトの人たちの評価も高くなったと思います。

――シートノックはどちらにも入ってアピール

 僕も内野も外野も両方やったんですけど、選手を起用する側からすると、どこでも守れるに越したことないわけですから。そういう意味では今年、濱にとってはいい経験をしたんじゃないですかね。

――ショートに関して、今季の成長はどういうところに見られますか

 一番は本人が一生懸命に悩みながらもやり続けたっていうところでしょうけど、やっぱり素直ですよね。素直に聞き入れてくれました。

 いっぺんには伸びないじゃないですか。「ここはこうしたほうがいいんじゃないかな」というところを一つ一つ意識しながらやってくれたことが、少しずつ成長に繋がって、どんどん上積みされていったんじゃないかなっていう気がしますね。

――とくにどういうアドバイスをされたんですか

 やっぱり外野が長かったので、外野手の投げ方になっていたんですよ。それを足の使い方とか腕の振り方、上半身の使い方もそうなんですけど、そこはいろいろ指導しましたね。

 内野手で外野手の投げ方をすると、低い球がいったり高くいったりと、そこもブレなんですけど。でも仕方ないですよね。高知でもずっと外野をやっていたわけですから。

 それでもほんとね、見られるようになりましたからね、最後のほうは(笑)。

これまで知り得なかった極意を授かった
これまで知り得なかった極意を授かった

■タイトルを獲得してNPBへ

――二人三脚で取り組んできた弟子が盗塁王のタイトルを獲ったことに関しては

 結果自体はすごく満足しています、「盗塁王」っていうことに関してはね。ただ、二人の間での目標設定は50コだったもんですから、数でいうと物足りないです。

――出場58試合で50コ!高いハードルですね

 それだけできる選手だと思っていましたから。

 でも途中ね、走れない、走ってもアウトっていうのがかなり続いたときがあったんですね。そこさえしっかりクリアできていれば、50っていう数は可能だったと思います。(*6月19日~7月10日 10試合連続で盗塁0、盗塁死4)

 成功率の7割5分というのは超えてくれたんですけど、50という数をいっとけば、9割を超えたと思うんですよ。

 だから、盗塁王にはすごくよくやってくれたと思うんですけど、数にはちょっと満足はしてないですね。

――盗塁王、年間MVPを獲得、そしてNPBの世界に

 今はまだ「おめでとう」という言葉しかかけてないんですけど、ちょっと濱が落ち着いたらもう一回、いろんな話はしないといけないですね。これからが大変になるということは、しっかり話はしてあげないといけないと思うんですよ。

 もう1ランク上の技術というのを身につけていかないといけないんで、そういうところもしっかりアドバイスできればなと考えています。

――西村さんにとっても初めての独立リーグで、その初年度に支配下指名が誕生しました

 すごいことですよねぇ。僕は嬉しくてしょうがないんですけど、これは僕だけじゃなくてほかの指導者の人もね。

 そして、やっぱり本人ですよ。やるのは本人ですから、本人がよく頑張ったなという一言に尽きますね。その中で支配下で指名されたっていうのは、ほんと1年目で最高の思いですよ。

――濱選手は大舞台になればなるほど、また人に注目されるとより力を発揮するタイプ

 ということは、かなり期待できるということですよ。

 期待しながら応援していきましょう。本当に楽しみですね。

(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)

【濱 将乃介(はま しょうのすけ)】

2000年5月3日生/大阪府

右投左打/181cm・81kg

東海大甲府高校―高知ファイティングドッグス(四国IL)

【濱 将乃介*今季成績】

58試合 打数213 安打67 二塁打16 三塁打5 本塁打6 打点36

四球43 死球5 三振25 併殺打1 盗塁37 盗塁成功率.771

打率.315 出塁率.439 長打率.521 OPS.960

*タイトル…最多盗塁年間MVP

【濱 将乃介*関連記事】

阪神タイガース・ファームとの練習試合

元盗塁王・西村徳文氏の愛弟子

6ツールプレーヤー

独立リーグではナンバーワン野手

虎の隠し玉はスーパー中学生

「チームカラーは青色」

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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