北朝鮮に生殺与奪の権を握られる「悪夢」
フーテン老人世直し録(110)
神無月某日
拉致問題を巡って日本政府は来週外務省の局長らを平壌に派遣する方針を発表したが、それと時を同じくする形で北朝鮮は拘束していたアメリカ人男性を6か月ぶりに解放した。北朝鮮の朝鮮中央通信は「金正恩同士がオバマ大統領の度重なる要求を考慮し、米国人犯罪者を釈放する特別措置を講じた」と報じている。
この解放についてケリー国務長官は「何の対価もなかった」と発言している。従って解放は交渉の結果ではなく、北朝鮮の戦略的判断によるものと見られる。北朝鮮にアメリカとの対話を引き出したい狙いがあるという見方である。北朝鮮には拘束されているアメリカ人があと2人いるため、ケリー長官は「アメリカには全面的な対話の準備ができている」と発言したが、対話が本当に実現するかどうかはまだ分からない。
これまで北朝鮮は拘束したアメリカ人を解放する際、クリントン元大統領やカーター元大統領を平壌まで呼び寄せて連れ帰させるなど、外交カードとして使ってきた経緯がある。今回はそれとは異なる対応のため北朝鮮の狙いについてはさらに見極める必要がある。
フーテンは日本政府が北朝鮮の要求を受け入れ、担当者を平壌に派遣する直前の時期に、北朝鮮が戦略的な思惑で拘束していたアメリカ人を解放した事に引っ掛かりを感ずる。日本とアメリカを差別化する事で日本の外交力を揺さぶろうとする狙いがあるのではないかと直感するからだ。
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