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イチローに学ぶ自信の付け方:劣等感と自己肯定感の心理学:私たちは弱い時こそ強い

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
2019 MLB 開幕戦 第2戦 イチロー 現役引退 場内一周 ファンにお別れ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

■イチロー物語

イチローは「偉人」です。日本中の学校に、イチローの本があります。偉人伝の中の一冊にもあります。エジソンや、キュリー夫人の仲間です。昔と比べて伝記が売れないと言われていますが、イチローの話なら、今の子供達も読みます。

■イチローの記録

イチローは、偉大な記録を次々と作っていきました。それは、素晴らしいことです。でも、イチロー自身の感覚は違うようです。

たとえば、日米通算4000本安打を達成した時の記者会見で、イチローは語っています。

「誇れることがあるとすると、4000のヒットを打つには、僕の数字で言うと、8000回以上は悔しい思いをしてきているんですよね。それと常に、自分なりに向き合ってきたことの事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかと思いますね」

「8000回の悔しさ」の心理学:あなたもイチローのようになるために:Y!碓井>

イチローは、高い目標を目指して頑張ってきました。しかし、彼は記録や数字自体にはこだわりません。イチローは、引退記者会見で、「記録」と「誇り」について、次のように語っています。

「今日の舞台に立てたということは、去年の5月以降、ゲームに出られない状況になって。その後にチームと一緒に練習を続けてきたわけですけど、それを最後まで成し遂げられなければ、今日のこの日はなかったと思うんですよね。今まで残してきた記録はいずれ誰か抜いていくとは思うんですけど、去年の5月からシーズン最後の日まで、あの日々はひょっとしたら誰にもできないことかもしれない。ささやかな誇りを生んだ日々であったと思うんですよね。去年の話だから近いということもあるんですけど、どの記録よりも自分の中では、ほんの少しだけ誇りを持てたことかなと思います。」

■自信を失っている現代の私たちへ

日本人、特に現代日本の子供若者は、国際的に見てとても良い子で優秀です。犯罪はしない。成績は良い。けれども、ただ一つ、自信だけがありません。自信、自己肯定感。これだけは、欧米諸国と比べても、アジア諸国と比べても、とても低いのです。威張っている子は多いのですが、心の底では劣等感に苦しんでいます。

日本中の学校で、子供の自信、自己肯定感を高める工夫がされています。しかし、なかなか成果が現れません。

イチローは、威張ったりしませんが、穏やかな自信に溢れています。イチローの生き方、イチローの言葉に、私たちの自信と自己肯定感を高める秘密が隠されています。

イチローのように、とびきり有能で活躍できる必要ははありません。ただイチローのように考えることで、どの人も自信と自己肯定感を回復できるのです。

「イチローはすごいなあ」と思うだけでは効果はあまり期待できません。彼の言葉と態度から、学ぶべきポイントを心理学的につかむことで、私たちの自信と自己肯定感を高めることができるでしょう。

■結果とプロセスの心理学

結果は大事です。イチローも、最初はアメリカで冷たくされましたが、結果を出すことによって評価はガラリと変わりました。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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