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20代息子明かす 中学時代の性被害:被害者保護と組織の社会的責任

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:苦しんでいる人は大勢いる(写真:イメージマート)

20代息子が打ち明けた中学時代の性被害…責任追及に“壁” 母「誠実に対応してほしかったのに

ヤフーニュースのトップページに出た西日本新聞の記事(11/15)です。

スポーツクラブの男性指導者による性被害。自動車内で服の上から陰部を触られることから始まり、室内で裸にされ性的行為をされるなどの性被害が中学校卒業まで続きました。

息子が20代になって事実を知った母親は、警察、弁護士、加害者本人のところへも行きますが、時効などが壁となり、有効な手段が打てませんでした。被害を受けた男性は、今もフラッシュバックに苦しんでいるそうです。

■身近な人からの性被害

性犯罪の加害者は、暗闇から出てくる見知らぬ人ばかりではありません。子供にとって身近な人が加害者になることもあります。周囲から尊敬され、子供も慕っている「先生」と呼ばれる人も、加害者になります。

被害者は逃げられただろう、SOSを出せただろうと思う人もいるでしょう。しかし、いじめなどの被害を大人に言うことだって簡単ではありません。それが性的なことであれば、なおさら人に言えないと感じる子供は多いでしょう。

さらに、加害者が身近な人、先生やコーチのような人であれば、他の大人に言うことはとても難しくなります。そんなことをすれば、今の生活が破壊されるからです。この記事の当時の少年も、スポーツが続けられなくなることを恐れ、我慢し続けました。

多くの人は善良で良い人です。先生やコーチのほとんどは、子供のために献身的に頑張ってくれる人です。しかし、それでも加害者になる人がいることも忘れてはいけません。

■被害者と家族の心の癒し:組織としての社会的責任

加害者も事実関係は認めている。しかし、法的には処分できないこともあります。それでも、「仕方がない」では、被害者の心の傷はいやされません。

法的処分はできなくても、まずは周囲が理解と共感を示すことはできるはずです。

身近な人による性加害は、難しさがあります。先生と呼ばれる人を責めることは、簡単ではありません。しかし、何よりも被害者保護を考えなくてはなりません。

今回の記事で言えば、所属していたスポーツクラブはどのように対応しているのでしょうか。事実を確認し、加害者を処分し、被害者に謝罪し、適切な対応を取るべきです。法的にはできなくても、自主的にするべきでしょう。それが、組織としての社会的責任です。被害者は今も苦しみ続けています。

このような問題は、他人事ではありません。家族や友人が被害者になるかもしれませんし、自分の組織の中から加害者がでるかもしれません。報道はされない多くの類似事件が、日本中の町で起きています。

すべての地域、組織で、事前の学習と被害の予防と、事件発生時の準備、そして発覚後の迅速な対応が必要です。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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