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生活をスムーズにし、人生を誤らせる「ステレオタイプ」の心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ)(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

<ステレオタイプ(紋切り型の先入観)は、良い働きをしています。多様で複雑な世界を生きていく上で、ステレオタイプは役に立っています。ただし、普段は役に立つステレオタイプには、危険なワナも仕掛けれています。>

■道を訪ねる時

あなたがあ知らない街で誰かに道を尋ねるとき、誰でも良いので呼び止めるでしょうか。見るからに怖そうな、危なそうな人でも、その人が最初に現れたら、その人を呼び止めるでしょうか。そんなことはしないでしょう。

優しそうで、親切そうで、この辺りのことに詳しそうな人に道を尋ねるでしょう。

でも、道を尋ねるために千人の人を調べるでしょうか。人は見かけによりません。親切そうに見えても乱暴な人かもしれません。あなたは、何時間もかけて慎重に検討するでしょうか。もちろん、そんなこともしません。そんな時間も労力もかけてはいられません。

人は、親切そうに見える人を、直感的に選ぶのです。そして、心理学の研究によると、意外と「直感」は当たります。普通の人が道を尋ねるときも。普通の人が詐欺を見破る時も。ベテランの医師が患者の病気を見つける時もです。

人間の心理は基本的に「節約家」です。時間と労力をかけずに、直感的な判断をします。実生活の中でも、素早い判断と行動がなければ、上手く生きていくことはできません。

ただし、直感がいつも正しいわけではありません。正しく働く直感は、脳が膨大な情報処理を瞬時に行って生まれるものですが、もっとシンプルな直感が「ステレオタイプ」です。ステレオタイプは、自分と周囲の関係を素早く判断するための便利な思考なのですが、そこにはワナも潜んでいます。

■ステレオタイプ

ステレオタイプとは、日本語にすれば「紋切り型」。決まりきった見方、考え方のことです。私たちは日常的に人物調査などしないのですが、ある限られた情報から、その人のイメージを作り上げます。

まずは見かけ、外見です。スキンヘッドで刺青を入れて、革ジャンにジャラジャラと鎖をぶら下げたような人に、私たちは気軽に声をかけません。もちろん、そのような外見の人がみんな乱暴なわけではありません。むしろ詐欺師はきちんとしたスーツ姿で来るでしょう。

そのようなことは理屈ではわかるのですが、直感的にはやはり穏やかそうに見える人とか、怖そうに見える人がいます。

あるいは、黒人というと、どんなイメージを持つでしょうか。良いイメージとしては、リズム感があって運動神経が良いイメージでしょうか。関東の人が関西の人をイメージする時には、「面白い」「積極的」「商売上手」でしょうか。

実際は様々な人がいるわけですが、私たちは紋切り型のイメージを持ちます。それが、ステレオタイプです。

このようなステレオタイプは、私たちの生活をスムーズにしまます。しかしステレオタイプは、時に人生のチャンスを奪い、人生を破壊することもあるのです。

■ステレオタイプの良い効果

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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