「8000回の悔しさ」の心理学:あなたもイチローのようになるために
■日米通算4000本安打達成のイチローが会見
「8000回の悔しさ」糧に=4000安打のイチローが会見:時事通信 8月22日(木)
<イチロー>「悔しい思い8000回以上」それが誇り:毎日新聞 8月22日(木)
イチローの偉業、大切にしてきた失敗の記憶:読売新聞 8月22日(木)
「プロだからこそ、失敗の記憶を大切にしてきた。」
■打率3割の意味
打率2割5分は普通の選手ですが、打率3割の成績なら一流選手です。でも、実際はイチロー選手のようなすごい選手でも、10打席中7打席はヒットが打てません。4000のヒットのためには、8000以上の三振や凡打があります。
7回ヒットが打てなくても、3回ヒットが打てれば、一流選手。でも、なかなか人はそう思えませんが。
■ヒットではない8000回をどう考えるか:劣等感の心理
「劣等感の正体:心理的メカニズムと克服方法」でも書きましたが、劣等感の強い人は、過去にこだわる人です。過去の失敗を繰り返し思い出し、後悔し、みじめな思いをつのらせます。
その結果、劣等感が強くなり、自分をみじめに思い、失敗から学ぶこともできません。
イチロー選手は、その8000回を、「悔しい思い」と語りました。
■悔しさの心理
「悔しい」は、「本来の自分ならできたはずだ」という感情です。「どうせ僕なんか」と思えば、悔しさもわかないでしょう。今はできなくても、今日はヒットが打てなくても、「本来の自分」ならできるはずだと感じるから、悔しさがこみ上げてきます。
今はその実力がなくても、自分にはまだまだ秘められた力があり、その可能性を伸ばすことができれば、きっとできるはずだと感じるのが、悔しさであり、負けず嫌いです。
優秀なスポーツ選手の多くが、負けず嫌いですね。
■失敗から学べるか
劣等感の強い人は、おびえているために、失敗と向き合うことができません。自分の失敗を嘆きますが、ただ漠然と、もっと良くなりたいと思うだけで、有効な努力ができません。
劣等感が強くない人は、失敗と向き合えます。8000回の悔しさと「常に、自分なりに向き合ってきた」のです。それは、楽しいことではないかもしれませんが、失敗から多くのことが学べます。
あの打てなかったコース、苦手なピッチャー。8000回の悔しさといつも向き合い、繰り返し考え、練習を重ね、具体的な目標設定をしたからこそ、イチロー選手は成長し続けてきました。
■悔しさに耐えられないとき
負ければ誰でも嫌な思いをします。失敗はいやなものです。そうして劣等感をつのらせ、否定的なセルフイメージを持つと、人はもう苦しみたくないと感じます。
そうすると、人は自分より低い相手と自分を比較しようとします。誰かを馬鹿にし、いじめ、ゆがんだ優越感を持とうとします。一方、悔しさをしっかり味わえる人は、成長するために、自分より上の人と比較をしようとします。
■私達の誇りとチャレンジと幸福
イチロー選手は、8000回の悔しさを乗り越えてきました。「誇れるとしたらそこ(8000回以上の悔しさと常に自分なりにむきあってきた事実)」だと、語っています。
イチロー選手は、自分より低い選手と比較して安心するのではなく、すごいピッチャー、すごいバッターに立ち向かい、チャレンジしながら多くのことを学んできたのでしょう。
「悔しさ」は、相手に負けた悔しさであり、また本来の自分の力を発揮できなかった悔しさです。チャレンジは、相手選手へのチャレンジであり、記録へのチャレンジだったでしょう。
幸福感に関する心理学の研究によれば、他者との比較からは長続きする幸福感は生まれません。過去の自分、理想の自分と比較し、過去から学び理想に近づいていると感じられる人が、幸福な人です。
■私達もイチロー選手のように
スポーツ選手は、私達に多くのことを教えてくれます。野茂選手、松井選手、イチロー選手ら、とびきりのチャレンジャーは、特に多くの事柄を教えてくれています。
私達みんなが、スポーツ選手になるわけではありませんし、外国で活躍するわけでもありません。けれども、人生の基本は同じではないでしょうか。
多くの失敗があり、そこから成功が生まれます。だれもが三振しますが、そこでは終わらないという悔しさを感じ、失敗と向きあい、失敗から学べるかどうかです。チャレンジャーであり続けるかどうかです。
凡人である私達は、そうそう激しい努力をし続けるわけではありませんが、自分なりのチャレンジをしたいと思います。人は、子どもも高齢者も、本来の自分を取り戻したい、成長したいと願っているはずです。
幸福感に関する心理学の研究によれば、熱中できるものを持っている人、目標を目指してがんばっている人は、幸福な人です。イチロー選手は、とても辛い体験もしてきたでしょうが、幸福そうです。
私達も、8000回の悔しさに自分なりに向き合って、幸せになっていきたいと思います。