「ミシュランガイド東京2024」の読み方 発表会に参加したグルメジャーナリストの視点
「ミシュランガイド東京2024」が発表
2023年12月5日に「ミシュランガイド東京2024」の発表会が国立新美術館で行われました。12時からはメディア向け説明会、14時からは掲載店発表セレモニー、15時30分からは懇親会という流れで、私も参加しました。
「“SAIKAI” Re-Union ~再会・再開~」をテーマにし、コロナ禍を経て4年ぶりの大規模な開催となっています。「ミシュランガイド東京2024」について、ポイントを紹介していきましょう。
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メディア向け説明会
メディア向け説明会では、例年と同じように、ミシュランガイドの歴史、評価基準、調査員制度、星の定義を改めて説明。ミシュランガイドの新しい取り組みとして、セレクテッドレストラン、デジタル化の促進、ホテルセレクションが挙げられていました。
セレクテッドレストランは、今年から新しく登場したセレクション。ビブグルマンや星に該当しないものの、調査員が是非とも紹介したいレストランが掲載されています。デジタル化では、アプリの利用者が伸張していることや、公式サイトでNewセレクションが登場したことを説明。ホテルセレクションは、2024年から評価が始まるとアナウンスされました。
掲載店発表セレモニー
本番の掲載店発表セレモニーからは、セレクテッドレストランを除く、レストラン関係者を招待。総勢600名が参加していたので、とても活気に溢れていました。
発表はビブグルマンの新規掲載店、サービスアワード、メンターシェフアワード、ミシュラングリーンスターの新規掲載店、一つ星の新規掲載店、二つ星の新規掲載店、三つ星の全掲載店という順番で紹介し、レストラン関係者も登壇。
セレクテッドレストランは数が多いということもあり、詳しい紹介はありませんでした。
世界で最も多くの星をもつ東京
掲載軒数は全部で504軒(新規168軒)。
内訳は、セレクテッドレストラン194軒(ミシュランガイド初登場が142軒)、ビブグルマン127軒(新規9軒)、一つ星138軒(新規16軒)、二つ星33軒(新規1軒)、三つ星12軒(新規1軒)、ミシュラングリーンスター11軒(新規1軒)。ミシュラングリーンスターは全て、星としても掲載されています。
掲載軒数は過去最大となりましたが、全体の約4割を占める194軒のセレクテッドレストランが加わったので、当然のことです。
東京の星つきレストランは183軒となり、今年も世界で最も星が多い都市となりました。アジアのベストレストラン50やラ・リストでも、上位にランクインしている東京のレストランが多いだけに、納得の結果です。
三つ星レストラン
三つ星として掲載されたのは、以下の通り。
カンテサンス/フランス料理
まき村/日本料理
神楽坂 石かわ/日本料理
虎白/日本料理
青空/寿司
ロオジエ/フランス料理
龍吟/日本料理
麻布 かどわき/日本料理
かんだ/日本料理
茶禅華/中国料理
レフェルヴェソンス/フランス料理
ジョエル・ロブション/フランス料理
三つ星レストランの顔ぶれは、昨年は一昨年と同じでしたが、今年は少し変わりました。「鮨 よしたけ」が三つ星から二つ星となり、「青空」が三つ星となっています。
ミシュランガイドが日本に上陸した2007年の「ミシュランガイド東京2008」から、17年連続で三つ星として掲載されているのが「カンテサンス」「かんだ」「ジョエル・ロブション」の3軒のみです。
三つ星の内訳は、日本料理6軒、フランス料理4軒、寿司1軒、中国料理1軒。ジャンル別の軒数は、去年と変わりません。
東京では、日本料理はもちろんのこと、フランス料理も非常にレベルが高いです。イタリア料理では、三つ星レストランはまだ現れていません。
Newセレクションの評価
今年のミシュランガイドで最も注目するべきところは、Newセレクションの結果です。Newセレクションとは、2023年3月からミシュランガイドの公式サイトに新しく登場したセレクションです。
Newセレクションは毎月発表されていますが、その時点ではレストランに星やビブグルマンが付いていません。それだけに、どのような評価になるのか、非常に注目されていました。
結果は次の通りです。店名の横にNewセレクション掲載年月も併記しています。
ビブグルマン
焼鳥 山香/2023年8月
ホッパーズ/2023年9月
一つ星
トワ・ヴィサージュ/2023年3月
港式料理 鴻禧/2023年3月
西麻布 野口/2023年3月
モノリス/2023年5月
カビ/2023年9月
メティス/2023年10月
イル・リストランテ ニコ・ロミート/2023年10月
銀座 きた川/2023年10月
飄香/2023年11月
広尾 石阪/2023年11月
レテール/2023年11月
二つ星
マス/2023年3月
Newセレクションに掲載された東京のレストランは32軒です。そのうち14軒、全体の4割以上にビブグルマンや星がついたので、少なからぬレストランが掲載されたと考えてよいのではないでしょうか。
「星をとることが目標」から「三つ星に絶対なる」と温度感に差はありますが、レストランの関係者にとって、ミシュランガイドに掲載されることが、大きな名誉であり、人生の誇りであることに違いはありません。
ミシュランガイドの発表は年に1回ですが、Newセレクションは毎月発表されるので、レストラン関係者の気持ちがより引き締まり、モチベーションがより向上することが期待されます。
Newセレクションは“ミシュランガイドの登竜門”としてさらなる脚光を浴びることになりそうです。
名店フランス料理の再評価
他に注目したいのが、名店フランス料理の再評価。
「銀座レカン」「モノリス」が一つ星に、「アラジン」「サカキ」「ポンドール・イノ」「アピシウス」「ブーケ・ド・フランス」「ラ・ロシェル南青山」「ル・ブルギニオン」「ボンシュマン」がセレクテッドレストランにと、多くのゲストに愛され、歴史ある名店が新しく登場しました。
ミシュランガイドの調査員は毎年、レストランをリストアップして厳正に審査しています。流行のレストランだけではなく、一度星を落としたり、かつては隆盛を誇っていたりしたレストランにも、引き続き訪れているので、再び掲載されることがあるのです。
この実直さこそが、ミシュランガイドが標榜する、公平で公正なセレクションではないでしょうか。
ミシュランガイドの意義
レストランのスタッフは普段、ゲストが満足するように尽力し、裏方に徹しています。しかし、年に一度のミシュランガイド発表会の場においては、もてなされる側となり、ワクワクしていて楽しそうです。
ゲストを楽しませるには、レストランのスタッフにも、このような非日常的な刺激が必要。ミシュランガイドは利用者のための道標であると同時に、レストランにとっても心の支えとなっているのです。