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フランスの人間国宝=M.O.F.が腕をふるう本物のグランメゾンは? 他のレストランにはない6つの魅力

東龍グルメジャーナリスト
幼鴨のロースト (C) 東龍

M.O.F.をもつ料理人

M.O.F.(エムオーエフ)という言葉を聞いたことがありますか。

M.O.F.とはMeilleur Ouvrier de Franceの略称であり、日本語に訳すとフランス国家最優秀職人章になります。日本でいえば人間国宝にあたる、極めて大きな栄誉です。

ホテルニューオータニ「トゥールダルジャン 東京」でエグゼクティブシェフを務めるルノー オージエ(Renaud Augier)氏は2019年、日本在住の料理人として37年ぶりにM.O.F.を受章したことが大きな話題となりました。

知った気になっているM.O.F.って本当は何? 日本で起きた37年ぶりの快挙(東龍)

まさに歴史的な快挙ですが、新型コロナウイルスの感染が拡大したことによって、「トゥールダルジャン 東京」は大きなプロモーションも行えず、2020年4月から営業を休止したりもしました。こういった苦境にありながらも、日々料理やサービスのクオリティを維持・向上させています。

ようやく営業も通常に戻ってきたところで、「トゥールダルジャン 東京」について改めて紹介しましょう。

幼鴨を体験できるディナーコース

ホテルニューオータニ「トゥールダルジャン 東京」 (C) 東龍
ホテルニューオータニ「トゥールダルジャン 東京」 (C) 東龍

M.O.F.をもつオージエ氏の料理を存分に堪能するのであれば、ディナーコースが一番です。2022年1月13日から3月6日にかけて提供された「VIE PARISIENNE DINNER(ヴィ パリジェンヌ ディナー)」(21,000円、税込・サ別)の内容は次の通りでした。

VIE PARISIENNE DINNER(ヴィ パリジェンヌ ディナー)

・平貝のパリジェンヌ仕立て 滑らかなレフォールのムースとエイグレットソース

・フォアグラとデコポンのテリーヌ 彩り豊かなキャロットとパンデピスのパレ

・黒ムツのムニエル ディプロマットソース マダガスカル産胡椒香るバターナッツのニョッキと旬菜のブレゼ

・フランス産パンタード アルビュフェラソース カルドンとポテトのトゥルビヨンと甘美な根菜のエチュベ

又は

・幼鴨のロースト エピスソース サボイキャベツとアンディーブのカネロニ

・富士リンゴのコンポテ 金柑のクリームとシナモン風味のアルレット

・フレッシュハーブティー又はコーヒー、小菓子

シグネチャーメニューである幼鴨料理はもちろん、冬から春にかけての美味を味わえるのが特長。日本の食材もふんだんに用いられています。

平貝のパリジェンヌ仕立て 滑らかなレフォールのムースとエイグレットソース

平貝のパリジェンヌ仕立て 滑らかなレフォールのムースとエイグレットソース (C) 東龍
平貝のパリジェンヌ仕立て 滑らかなレフォールのムースとエイグレットソース (C) 東龍

愛知県のタイラギをケールのピューレでまぶした、クリエイティブな冷前菜。タイラギの甘味とケールのほんのりとした甘苦さがちょうどよいコントラストです。周りにはカブや紫ダイコンのスライス、黒ダイコン、ユリネを配しました。ほどよく酸味があり、ハーブが香るソースを合わせて、爽やかに仕上げています。

フォアグラとデコポンのテリーヌ 彩り豊かなキャロットとパンデピスのパレ

フォアグラとデコポンのテリーヌ 彩り豊かなキャロットとパンデピスのパレ (C) 東龍
フォアグラとデコポンのテリーヌ 彩り豊かなキャロットとパンデピスのパレ (C) 東龍

鴨のフォアグラをデコポンのジュレと合わせてテリーヌに。フォアグラの濃厚さとデコポンの爽やかさのハーモニーが感じられる、見た目も麗しい一皿です。パンデピスのスパイシーな香りによって食欲がそそられます。色彩に変化を与える2つのディスクは、茶色がパンデピス、赤が西洋人参。フォアグラと相性のよい、焼きたてのリッチなブリオッシュが添えられます。

黒ムツのムニエル ディプロマットソース マダガスカル産胡椒香るバターナッツのニョッキと旬菜のブレゼ

黒ムツのムニエル ディプロマットソース マダガスカル産胡椒香るバターナッツのニョッキと旬菜のブレゼ (C) 東龍
黒ムツのムニエル ディプロマットソース マダガスカル産胡椒香るバターナッツのニョッキと旬菜のブレゼ (C) 東龍

長崎県のクロムツを軽いムニエルに。食味の素晴らしいクロムツには、生クリームと貝の濃厚なソースを合わせ、旨味を引き出しています。付け合わせは、ポロネギ、アーティチョーク、バターナッツカボチャのニョッキと、野菜もたっぷりです。

幼鴨のロースト エピスソース サボイキャベツとアンディーブのカネロニ

幼鴨のロースト エピスソース サボイキャベツとアンディーブのカネロニ (C) 東龍
幼鴨のロースト エピスソース サボイキャベツとアンディーブのカネロニ (C) 東龍

メインディッシュは幼鴨のロースト。胸肉は肉厚で皮はカリカリに焼き、丁寧な火入れで赤身の旨味を讃えています。幼鴨は臭みがなくてデリケートな味わいなので、鴨が苦手な人でもおいしく食べられることでしょう。

側には4種のスパイスが添えられ、香りも豊かに。赤ワインのソースは、ほどよい甘味と酸味があり、幼鴨の食味を際立たせています。付け合わせは、サボイキャベツとアンディーブのカネロニ。

富士リンゴのコンポテ 金柑のクリームとシナモン風味のアルレット

富士リンゴのコンポテ 金柑のクリームとシナモン風味のアルレット (C) 東龍
富士リンゴのコンポテ 金柑のクリームとシナモン風味のアルレット (C) 東龍

フジリンゴのコンポートに、白いアーモンドクリーム、ブリオッシュトーストという構成。パイ、チョコレートクリーム、トンカ豆のアイスクリームを添えました。様々な味わいと食感で、口中をさっぱりとさせてくれます。

本場のエッセンスを継承しながらも、日本の食材を利用している

紹介したメニューから「トゥールダルジャン 東京」の素晴らしさはわかってもらえたと思いますが、改めて他のレストランにはない魅力を伝えていきましょう。

最初に挙げたいのは、1582年セーヌ川のほとりで誕生した本場「トゥールダルジャン」の味を継承しながらも、日本の食材を用いていること。

エグゼクティブシェフのオージエ氏は、日本の食に精通しています。加えて、日本代表総支配人のクリスチャン・ボラー氏は30年以上も日本に在住し、日本語も堪能で、食を含めた日本の文化に大変造詣が深いです。

そのため、「トゥールダルジャン」を代表する幼鴨料理をはじめとして、本場のエッセンスを継承しながらも、日本の食材を取り入れることができています。

鴨のナンバリング

鴨のナンバーが刻印されたオリジナルのカード (C) 東龍
鴨のナンバーが刻印されたオリジナルのカード (C) 東龍

「トゥールダルジャン」といえば鴨料理、そしてその鴨に対するナンバリングが有名です。

19世紀末に、当時の支配人であったフレデリック・デレール氏が鴨の一羽一羽ごとに番号を付けて鴨料理のこだわりを表現し、その評判をさらに高めました。「トゥールダルジャン 東京」でも同様にナンバリングが行われており、ゲストにはハガキとしても使用できるナンバーが刻印されたオリジナルのカードがプレゼントされます。

ちなみに、1921年6月21日に当時の皇太子であった昭和天皇がパリ本店で食事された際の番号が53211でした。これを記念すべき番号と定め、この次の数字から「トゥールダルジャン 東京」での番号がふられています。

豪華絢爛な空間

豪華絢爛な空間 (C) 東龍
豪華絢爛な空間 (C) 東龍

グランメゾンらしい豪華な空間も、他にはない大きな特長。

エントランスから約23メートルもの長いアプローチが続き、ウェイティングスペースに到着します。ウェイティングスペースは立派なラウンジ・バーとなっており、ここでシャンパーニュなどを嗜むことも可能。

準備ができてから、ダイニングへと案内されます。壮大なシャンデリアも下げられており、テーブル間隔も広く、サービススタッフの人数も通常の2倍くらいと非常に多いです。

大きな窓からはホテルニューオータニが誇る約1万坪もの日本庭園が眺められます。

このような空間で食事できるだけでも、唯一無二の食体験となるでしょう。

ゲリドンサービス

フロマージュのワゴン (C) 東龍
フロマージュのワゴン (C) 東龍

店内は広々としているので、ゲリドンサービス(ワゴンサービス)も見ものです。

クレープシュゼットやフロマージュのワゴンがテーブルまで運ばれて来ます。そしてサービススタッフが目の前でつくったり、取り分けたりしてくれるのです。

昨今では本格的なワゴンサービスを体験できる広々としたファインダイニングも少なくなりました。カウンタースタイルのレストランが人気となっており、目の前でパフォーマンスは眺められるものの、ワゴンが運ばれて来るのを体験することは少なくなっています。

本物のゲリドンサービスを目の当たりにすれば、その臨場感に驚かされることでしょう。

充実したワインと最強のソムリエ

ヴランケン・ポメリー ディアマン ブリュット (C) 東龍
ヴランケン・ポメリー ディアマン ブリュット (C) 東龍

本物のグランメゾンであるだけに、フランスを中心としたワインが驚くほど充実しています。

「トゥールダルジャン」には約35万本以上ものワインがあるといわれていますが、「トゥールダルジャン 東京」では約3万5千本ものワインが用意。日本のファインダイニングでは、千本以上あればとても充実しているといわれているだけに、日本最大級のラインナップであるといえるでしょう。

ワインだけではなく、ソムリエも最強の布陣です。「トゥールダルジャン 東京」でシェフソムリエを務めた谷宣英氏が現在は、ホテルニューオータニ料飲部 レストラン統括支配人 エグゼクティブ シェフ ソムリエを務めています。

谷氏は、2011年に第6回全日本最優秀ソムリエコンクールで優勝したり、2014年に「ワインテイスティングバイブル」(ナツメ社)を上梓して何度も重版されたり、2016年に「現代の名工」に選出されたりと、日本でも有数の実力と知名度を誇るソムリエ。この谷氏がワインを統括しているので、料理とワインのマリアージュも非常に素晴らしいです。

「トゥールダルジャン 東京」出身で活躍するソムリエは非常に多く、優秀なソムリエを輩出するグランメゾンであるといわれています。

素晴らしいテーブルウェア

料理、ワイン、空間、サービスが素晴らしいだけではありません。テーブルウェアも目を見張るものがあります。

カトラリーは銀器の名門であるフランスのクリストフル、プレートは観賞価値の高いフランスの名窯ベルナルドと、非常に豪華。

ほぼ全てのメニューが、美しいクローシュで供され、サービススタッフによってテーブル一斉で開けられるのも、大きなこだわり。常に最良の状態で料理を食べることができます。

本物のグランメゾンが始動

ホテルニューオータニ「トゥールダルジャン 東京」 (C) 東龍
ホテルニューオータニ「トゥールダルジャン 東京」 (C) 東龍

2019年にTBS「グランメゾン東京」が放送され、フランス料理やファインダイニングに注目が集まりました。

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これからグランメゾンが盛り上がってくるのではと期待していたところ、新型コロナウイルスの感染が拡大し、その熱気が冷めてしまったのは非常に残念です。

本来であれば、日本におけるグランメゾンの代表格である「トゥールダルジャン 東京」もさらに耳目を集めていたことでしょう。

そこから2年以上の時を経て、日本で唯一M.O.F.が腕をふるうグランメゾン「トゥールダルジャン 東京」が本格的に営業を始めたので、多くの方に是非とも訪れていただきたいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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