森保ジャパンのコスタリカ戦の本当の敗因。シャドーの配置と左サイドで孤立した三笘。
期待から落胆への落差が激しかった。
日本代表はワールドカップ・グループステージ第2節でコスタリカ代表と対戦した。終盤に失点を喫し、0−1で敗れている。
この結果、グループEは混戦模様となっている。1位スペイン(勝ち点4)、2位日本(勝ち点3)、3位コスタリカ(勝ち点3)、4位ドイツ(勝ち点1)と全チームにグループ突破の可能性が残されている。
ドイツに勝利したチームが嘘のように、精彩を欠いた。
森保ジャパンはコスタリカを相手に攻めあぐねた。大きな要因として、5バックを崩せなかったことが挙げられる。
■5バックのコスタリカ
コスタリカは初戦のスペイン戦で0−7と大敗していた。そのゲームでは、【4−4−2】の布陣でスタート。しかしスペインの3トップに手を焼き、あっという間に3失点。そこから5バックに戻したが、勢いに乗ったスペインを止める術はなかった。
その教訓を生かして、コスタリカは日本戦で最初から5バックを敷いてきた。【5−4−1】で守備ブロックを形成し、カウンターに好機を見出す戦い方だ。
北中米予選を4位で終え、大陸間プレーオフでニュージーランドに勝利してカタールに乗り込んだのがコスタリカである。予選では14試合13得点8失点。失点数の少なさは首位通過したカナダ(7失点)に次いで2番目だった。
つまり、コスタリカは元々、守備が堅いチームなのだ。そのチームが、最初の試合で大敗を喫して、原点回帰した。守備から入る、というスタイルを徹底。そういう意味では、日本には、スペイン以上の攻撃力――少なくとも攻撃意識――が必要だったのだ。
そのコスタリカに対して、日本は攻撃面であまりに無策だった。森保一監督は初戦と同様に、また9月シリーズと同じように、【4−2−3−1】のシステムを選択した。
ここで論じるべきは、ターンオーバーの是非ではない。ターンオーバーに関しては、大会前からある程度決まっていたことだった。それより問題だったのは、システムチェンジとその移行の仕方だ。
■成功の代償
日本はドイツ戦でハーフタイムに【4−2−3−1】から【5−4−1】にシステムを変更した。その判断が奏功して、逆転勝利を手にした。
しかしーー、語弊を恐れずに言えば、その成功体験が仇となったのだ。
ドイツ戦では、システムチェンジもさることながら、冨安健洋、三笘薫と途中から出てきた選手が活躍した。それは、彼らが適したポジションで使われ、なおかつ自身の判断でやるべきプレーをやっていたからだ。
森保監督はコスタリカ戦でもドイツ戦と同じように【4−2−3−1】でスタートした。そして、“同じように”後半に【5−4−1】にシステム変更を行った。
では、なぜ、ドイツ戦では機能したシステム変更が、コスタリカ戦では、機能しなかったのか。ここからは、その分析を行う。
■明確な攻撃の矢印
ドイツ戦においては、キーになったのは冨安と三笘だった。後ろを安定させ、なおかつビルドアップのところで配球を良くする。また、その2選手が左サイドにいることで、どちらのサイドから活路を見出すかが明確だった。
対して、コスタリカ戦だ。左CBに入ったのは伊藤洋輝だった。バックパスが多く、苛烈な批判に晒されたように、伊藤にはパスの出し手としてのビジョンがなかった。ドイツ戦で冨安のプレーを観た後だったので、より多くの方がそう感じてしまったのかも知れない。
いずれにせよ、伊藤は後ろと横へのパスが多く、最もボールを預けるべき三笘にボールが入らなかった。
コスタリカ戦のシステムチェンジは、正確に言えば、【3−4−2−1】の形になっていた。ただ、それにしても、“突っ込みどころ”のある采配だった。
左に三笘がいて、右サイドには相馬勇紀、そしてシャドーに伊東純也が入った。スピードのある伊東が、シャドーにいる意味が分からなかった。このポジションには堂安律、あるいは久保建英が適任だったはずだ。
右シャドーに堂安か久保がいれば、左利きでプレーバリエーションのある選手が、右のハーフスペースを攻略できる。
加えて、大外のレーンを、スピードのある選手が使える。ここに伊東や相馬がいれば、より脅威なのだ。
さらに、左サイドには三笘がいる。突破力のある三笘には、「アイソレーション」で果敢に1対1で仕掛けてもらう。そして、右サイドは連携とコンビネーションで崩していく。こういったアイデアが、間違いなく必要だった。
森保采配では、右サイドで伊東と相馬が大外のレーンを使いたいので、突こうとするスペースが被っていた。一方、左サイドでは三笘が孤立していた。「アイソレーションする」と「孤立する」というのは似て非なる現象だ。ドリブルが売りの三笘が、ただただ左サイドで“手持ち無沙汰状態”であったのは、あまりに勿体なかった。
■スペインを侮る危険な空気
日本の攻撃が弱かったのか、コスタリカの守備が強かったのかーー。おそらく、その両方だろう。
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