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森保ジャパンが初戦で激突するドイツ代表を分析。中盤と前線のバランスと意外な弱点。

森田泰史スポーツライター
競り合うライスとムシアラ(写真:ロイター/アフロ)

最初に当たるチームとしては、厄介な相手だ。

カタール・ワールドカップが開幕した。日本代表はグループEの初戦でドイツ代表と対戦する。

2014年のブラジルW杯でのチャンピオン、それがドイツだ。

■長期政権と次の時代

だがドイツは主要大会においては過去2大会で苦しんでいる。2018年のロシアW杯でまさかのグループステージ敗退。EURO2020ではベスト16で大会から姿を消した。

ヨアヒム・レーブ監督の長期政権には限界が訪れていた。そこで、DFB(ドイツサッカー協会)は監督交代を決意。2019−20シーズンにバイエルン・ミュンヘンを3冠に導いたハンジ・フリック監督に白羽の矢が立てられた。

ドイツ代表のハフェルツ
ドイツ代表のハフェルツ写真:ロイター/アフロ

現在のドイツは、【4−2−3−1】を基本布陣としている。

ドイツの問題点を挙げるなら、中盤の構成だろう。ダブルボランチに据えられるのはジョシュア・キミッヒ、イルカイ・ギュンドアン、レオン・ゴレツカといった選手である。現状、キミッヒとギュンドアンの序列が高い。ただ、キミッヒとギュンドアンはプレースタイルが似ている。ここが、ドイツの一つの問題だ。

キミッヒのボランチについては、ドイツ国内でも賛否両論ある。フィリップ・ラームが「タックルをトレーミングすべき」と助言すれば、マーカス・バベルが「戦術面での規律が足りない」と指摘する。またサミ・ケディラが「戦術的に成熟していない」と一刀両断するなど、様々な意見が飛び交っている。

留意すべきは、ドイツにとって、ボランチがそれだけ重要なポジションだということだ。

■中盤の構成に前線とのバランス

中盤の構成に問題があると論じた。加えて、痛手となったのがティモ・ヴェルナーの負傷だ。

ハンジ・フリック監督の【4−2−3−1】で、1トップを担っていたのがヴェルナーだった。ヴェルナーはスポーロ、ドリブル、決定力に優れ、なおかつ献身的にプレッシングを行う。まさにハンジ・フリック監督好みのタレントであった。

1トップを務めていたヴェルナー
1トップを務めていたヴェルナー写真:ロイター/アフロ

そのヴェルナーが不在となり、ハンジ・フリック監督はカイ・ハフェルツをゼロトップに配置するようになった。

ドイツのアタッカーには、得点力のある選手がいる。レロイ・ザネ、セルジュ・ニャブリ、トーマス・ミュラー…。一方でマリオ・ゴメスやミロスラフ・クローゼのような「9番タイプ」のゴールスコアラーはいない。つまり「2列目の3選手+ゼロトップ」でゴールを奪いにいくしかない。

それは逆説的に布陣変更が難しくなることを意味する。中盤の構成が定まらないなら、【4−3−3】のワンアンカーや3CMF(スリーセンター)を試す手はある。しかしながら絶対的なストライカーがいないため、そういった手段を講じるのは困難で、故にドイツは矛盾を抱えたまま本大会に突入している。

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■ゴレツカのジョーカーとムシアラの存在

このドイツ代表でポイントになる選手を挙げるとするならば、まずはハフェルツだ。

レヴァクーゼンの下部組織出身選手であるハフェルツは、若くから将来を嘱望されていた。2020年夏に移籍金8000万ユーロでチェルシーに移籍。2020−21シーズンには、チャンピオンズリーグ優勝を経験した。

ハフェルツは元々、トップ下、シャドー、サイドハーフでプレーしていた選手だった。しかしながらトーマス・トゥヘル監督、ハンジ・フリック監督が共にハフェルツをゼロトップで使っているのは偶然ではないだろう。

決定力があり、戦術理解度が高い。1トップよりゼロトップの方が良かった、という結果をもたらすために欠かせない選手がハフェルツなのだ。

ゼロトップに入るハフェルツ
ゼロトップに入るハフェルツ写真:代表撮影/ロイター/アフロ

もう一人は、ゴレツカである。

現時点では、キミッヒとギュンドアンの序列が高い。他方で、ゴレツカには彼らにないものがある。得点力だ。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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