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リップサービスに喜ぶ「平和ボケ」たち

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(75)

卯月某日

日米首脳会談が終わった。両首脳は共同記者会見を行ったが、しかしその時点で共同声明は出されなかった。TPPを巡る協議が終わっていないからである。両国の間にはまだ大きな溝が残されている。

にもかかわらず会談は成功だったという印象づくりが先行した。オバマ大統領のリップサービスに「平和ボケ」たちが喜んだからだ。

オバマ大統領のリップサービスとは「日本の施政権下にある尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲にある」と明言した事である。これまでもアメリカは同じことを言ってきたが、初めて大統領が明言したと言って「平和ボケ」は水戸黄門の葵の印籠のようにありがたがっている。

何がそんなにありがたいのか。それで中国が領有権の主張をやめるとでも思っているのか。そんなことはありえない。中国がこれまでと同じ行動を取り続ける事は明らかである。状況が何も変わらないのに喜んでいる感覚をフーテンは「ボケ」だと思う。

「平和ボケ」たちは、中国が武力で尖閣を領有しようとする時に、アメリカ軍が出動する約束をしてくれたと思っているようだ。しかしアメリカにその気がない事は明白である。オバマは尖閣を日本の領土だとは一言も言わない。領土問題でアメリカは日中どちらの側にも立たない。

そして尖閣の問題を平和的に話し合いで解決しろと言っている。軍事介入する気がないからそう言うのである。では平和的な解決とはどういう事か。長い時間をかけて話し合えという意味だ。つまり「棚上げ」にしろと言っているのに等しい。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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