給料の 上がりし春は 格差道
フーテン老人世直し録(73)
卯月某日
総理主催の「桜を見る会」が新宿御苑で行われ、安倍総理は「給料の 上がりし春は 八重桜」という句を詠んだ。なんとお気楽な総理だろう。もっともこの総理は国民に幻想を抱かせる事でしか政権を維持できないので、お気楽を装うしかない。自らも現実を見ないように見ないようにするしかないのである。
そこでフーテンが一休和尚の正月の句「門松や 冥土の旅の 一里塚」に倣ってこの国の春を詠めば、「給料の 上がりし春は 格差道」となる。以前のブログで説明したが、今の日本で給料が上がるということは格差が開く事を意味する。他人の給料が上がればいずれ自分にも回ってくると考える人は、かつての高度成長時代の日本経済と混同し、アベノミクスの本質をまるで見ていない。
安倍総理が就任以来やっている政治はメディアを使って国民を騙すことだが、騙しの種類も数々ある中、フーテンが最も驚いたのはアベノミクスが池田勇人政権の「所得倍増計画」と同じだと言って、NHKが池田元総理の映像を流しながら解説したことである。アベノミクスを池田時代とダブらせる事は犯罪的とも言えるほどの悪質な騙しである。
池田時代の日本経済は今の中国と変わらぬレベルである。今の中国と同じで貧しい国だからこそ高度経済成長も可能だった。国民の賃金は欧米先進国に比べて低く、だから低コストの日本製品に輸出競争力があった。低価格の日本製品は世界市場を席巻した。
一方で国民は欧米並みの良い暮らしを望み、だから労働組合は賃上げに力を入れ、成長に比例して賃金は上がっていった。その頃の日本が素晴らしいのはそれでも決して格差を作らなかった事である。そこは今の中国やアメリカと違う。日本は高度成長しながら世界一格差の少ない国を実現させたのである。
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