「見殺し」にしたから「間抜け」を装う
フーテン老人世直し録(131)
如月某日
「イスラム国」がヨルダン人パイロットの焼殺を公表した事で、安倍総理は胸をなでおろしたに違いない。ヨルダン政府は、「テロリストとの交渉には応じない」とする英米露三国とは異なり、人質の交換交渉に応ずる姿勢を表明していたからである。
交渉しなければヨルダン国民の批判はアメリカに追随する政権打倒にまで発展する可能性があった。そしてもしも交渉が実現していれば、日本人人質事件で英米露と同じ立場に立った安倍政権は国民から批判される可能性があった。
ところが「イスラム国」にはヨルダン政府と交渉する気がなかった。人質の殺害を公表する事でヨルダン国民の怒りをかき立て、さらにアメリカ主導の有志連合に参加するイスラム諸国との敵対関係を強める姿勢を明らかにしたのである。この判断がどちらに有利になるか、それがこれからの見どころである。
アメリカは当然ながら声を大に「テロ絶滅」を宣言する。しかし当然ながらアメリカは「テロ絶滅」が出来ると考えるほど単純バカではない。アメリカは戦争状態を永遠に続ける事が自国の利益になると思うからそう言う。逆に言えば全面戦争に踏み込んでイスラム過激派を絶滅させる事は利益でなく、それが実現するとも思っていない。そのアメリカにお付き合いして有志連合に参加してきたイスラム諸国がどうするか、それが注目される。
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