殺害された二人を「勇気ある日本人」とたたえるアメリカ
フーテン老人世直し録(133)
如月某日
「イスラム国」による日本人人質殺害事件を巡る国会での議論を聞いているとこちらの頭がおかしくなる。質問に立つ議員は必ず犠牲になった二人に哀悼の意を表し、テロに対する憤りとテロに屈しない決意を判で押したよう述べるが、今回の事態を繰り返さないためどうするかという議論にならない。
哀悼と憤りと決意はさながら時候の挨拶のようだ。しかしそこからは事件の検証に立ち入ることなく、それぞれの議員が「関心のある範囲」について質問するのみで、テロ組織から日本が名指しで「宣戦布告」された直後の国会であるのに、緊迫感は薄く、どこかピントが外れている。
日本のメディアも連日のように事件を報道したが、中東問題の専門家を集めてイスラム過激派の分析を行うのがもっぱらで、日本人人質が殺された理由を考察する事がない。二人が殺されたのは日本人だったからではない。「イスラム国」にとって最大の敵であるアメリカに日本が与する姿勢を明確にしたと見られたから殺された。従ってアメリカを論ずる事なしにこの問題は理解できないが、その視点がない。
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