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疑惑を消さないようにしている総理に外交をやらせるべきではない

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(361)

弥生某日

 佐川前財務省理財局長の証人喚問は想定通りの茶番劇だったが、日本国民がつまらぬ茶番劇を見せられている間に朝鮮半島情勢に更なる進展があった。北京で習近平国家主席と金正恩朝鮮労働党委員長の中朝首脳会談が行われていたのである。

 この首脳会談を日本政府は全く知らされていなかったらしく、28日の参議院予算委員会で安倍総理は「報道によって知った」と答弁、「圧力を最大限まで高め、抜け道は許さないという日本の方針を国際社会の方針にするためにリーダーシップをとってきた結果、北朝鮮の側から話し合いを求めてきている」と手前味噌を言った。

 フーテンは金正恩委員長が平昌オリンピックの開かれる2018年を目指して2017年中に米国全土に到達するミサイル開発を急ぎ、核攻撃可能一歩手前の状態に持ち込んで寸止めにし、一転して和解路線に踏み出すシナリオを描き、それがトランプ大統領に外交交渉の相手たりうると判断させ米朝首脳会談が実現することになったとブログに書いた。

 米国内の強硬派を抑えるため「圧力の結果である」とトランプ大統領には言わせるが、トランプに盲従するだけの日本の安倍政権など眼中になく、いずれ植民地支配の賠償金を取る相手としか見ていない。ただ日本からの経済支援が得られれば拉致問題も解決に向かう可能性はある。

 「すり寄る」以外に能のない安倍外交はそうしたことを見通せず、拉致問題の解決をトランプ大統領にお願いするというのだから話にならない。拉致された自国民を救出するのは日本政府の使命であり他国にすがる話ではない。米国政府が米国民の税金を他国民のために使うことなど考えられず、安倍総理はトランプ大統領に日本国民の税金から「お願い料」でも持参するつもりなのか。

 いずれにしても南北首脳会談と米朝首脳会談の前に中朝首脳会談をセットしたのも金正恩委員長のシナリオで今年の初めから着々と手は打たれていたと思う。ロシアのプーチン大統領は米朝対立が激しさを増していた昨年、既に「金正恩はゲームに勝った」と宣言していたから、かつて北朝鮮核問題を協議した「6か国」の中で取り残されるのは日本だけということになる。

 フーテンは北朝鮮軍事攻撃を煽ったトランプ大統領を見てかつてのニクソン大統領の「狂人理論」を思い出した。ニクソンは米国が泥沼にはまり込んだベトナム戦争を終わらせるためならなんだってやりかねない「狂人」だと北ベトナムに思わせる作戦を採用した。ハノイを核攻撃するように見せかける「カモの釣り針」と言われた作戦である。そして結果的にキッシンジャーの秘密外交で米中和解を実現しベトナムから撤兵した。

 フーテンはトランプの背後にキッシンジャーの影がある気がしてならない。そのキッシンジャーは日本人を心底から馬鹿にしている。中国の周恩来首相と会談した際に「中国人には戦略性があるが日本人には戦略的思考がない」と語っている。トランプも安倍総理が「すり寄ってくる」からリップサービスはするが、兵器を売りつける相手としか見ていないようだ。

 だから同盟国を対象にしない「鉄とアルミの輸入規制」が日本にだけは適用される。トランプ大統領は「安倍総理のほほえみは米国を騙して利用してきたことを物語っている」と発言した。これまで米国の軍事力に「ただ乗り」して金儲けしてきたことをこれからは許さないという日米首脳会談向けの先制パンチである。それは安倍総理が疑惑の渦中にいる足元を見た上でのパンチでもある。

 「森友疑惑」は安倍総理がひとりで作り出し、ひとりで拡大させ、ついには「公文書改ざん」という統治機構が統治機構でなくなるスキャンダルにまで発展した。そして27日に行われた証人喚問は安倍総理夫妻の関与を全否定した結果、疑惑は昨年2月17日の総理答弁のままに固定された。

 フーテンは「森友疑惑」が報じられた当初、「よくある話」程度に受け止めていた。総理夫人が名誉校長を務める学校に国有地が安く払い下げられたというのは悪質な犯罪というより「よくある話」である。本当だとしたら速やかに頭を下げて謝るべきだと考えた。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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