「30代はガクッと落ちる。でも…」楽天退団の田中将大を上原浩治が分析
楽天の田中将大投手が、自身のYouTubeチャンネルで退団を発表した。
楽天は、高校卒業後のプロ入りから7シーズンを過ごし、メジャーのヤンキースから日本球界に復帰した21年からも再びユニホームに袖を通した古巣。2013年はシーズン24連勝でチーム初のリーグ優勝に貢献し、ポストシーズンでも日本一の立役者となった。
日米通算197勝(114敗)で、大台到達まであと3勝に迫る中での電撃退団だった。こうした中、26日には退団発表後初めて、報道陣の取材に応じ、条件提示を受けた瞬間を「もう期待はされていないんだな、と。(チームに)居場所がないと受け取りました。最適な言葉がなかなか思い浮かばないですけど、新しいところで、求められるところでやるのが自分にとって一番だなと思った」などと振り返ったという。
実績も名声も、それに見合う報酬も十分に手にしてきた中で下した大きな決断。自分がやりたいように、後悔しないように新天地でプレーをしてほしいと願う。
功労者の退団だけに、メディアの扱いも大きくなる。その中では、年俸に関する詳細についても報じられた。球団側は減額制限(年俸1億円以上の選手は40%)を提示したことを明かしている。このことと退団を直結して、「お金がすべて」という印象を持つのは短絡的すぎる。報道によれば、本人が取材対応で「期待をかけてもらって、やりがいを感じるところでやりたいというのが一番」と強調した点でもある。
厳しい現実とも直面したシーズンだったことは間違いない。昨年10月に右肘をクリーニング手術した今季は、コンディションが整わず、1軍登板は終盤の9月28日のオリックス戦1試合だけだった。プロ18年目で初めて白星がなかったが、その日の登板は5回4失点だったものの、そこまで悪い内容には見えなかった。
右打者の内角にシュートを決め、左打者には落ちる球も有効に見えた。全盛時ほどの球威はなくても、制球力も悪くない。何より大事なことは、本人がシーズン終盤の1試合とはいえ、マウンドに上がるまで腐らずに調整を続けてきたことだ。長く現役を続けていく上で、30代ではどこかで調子がガクッと落ちることはある。そのときに腐らずに野球と向き合えるかが大事だと思っている。けがで投げられないのは仕方がないが、年齢からくる変化は、アジャストしていくことで打開できることもある。今季、巨人の菅野智之投手が最多勝と最高勝率のタイトルに返り咲いたのは、まさに好例だと思っている。
あと3勝で「200勝」という節目も迫っている。
私は同じ年齢のころに、メジャーで先発としては起用しないとはっきりと言われた。自分でも長いイニングを続けて投げると、肘や太もも裏のけがのリスクが不安になっているのがわかっていたので、中継ぎ転向を受け入れるしかなかった。マサ(田中投手)の場合は手術した肘の状態が悪くなく、大きなけがの不安もないのであれば、チームの方針もあるだろうが、先発ローテーション入りを目指してやれるだけの力はあると思っている。
スポーツ紙の報道などでは、今季の先発に2けた勝利をマークした投手がいなくて、補強が急務のヤクルトなどが、獲得に向けた調査を行っているという。報道がどこまで正確かはともかく、他球団に動きがあることは不思議なことではない。自らが何を求めるか、そして、チームからはどういう立場を求められるか。契約合意まで順序立てて、交渉を進めていく中で、納得できる球団のマウンドに立つことになるだろう。
36歳の決断が幸運を呼び込むことを願って、エールを送りたい。