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傷だらけの2人にアメリカの衰亡を見せつけられる

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(254)

神無月某日

アメリカ大統領選挙まで1か月を切る中で行われたヒラリー・クリントン対ドナルド・トランプの2回目のテレビ討論はそのほとんどが個人攻撃に当てられた。

アメリカの選挙でネガティブキャンペーンは珍しくないが、しかし大統領候補者同士の討論がここまで中傷合戦に終始すると、冷戦の勝利から四半世紀を経たアメリカが衰亡に向かう様を見せつけられた気がする。

メディアの調査ではヒラリーの勝利と判断した国民が1回目と同じく多かったようだが、仮にヒラリー・クリントンが初の女性大統領の座を勝ち得たとしても、その行く手にはあまたの困難が待ち受け、しかも国内の分断状態を回復することは不可能で、常に足を引きずられる大統領になると思う。

先月末にテレビ討論が始まるまで二人の支持率はほぼ拮抗していた。それが1回目のテレビ討論でヒラリーの支持率がトランプを引き離し、さらに2回目のテレビ討論が始まる2日前に、10年前のトランプによる女性侮辱発言がワシントン・ポスト紙に報道された。「有名人なら女性と何でもできる。女性器をさわれる」というトランプ発言を録音したビデオをポスト紙が入手したのである。

誰が持ち込んだか知らないが、トランプ追い落としを狙う誰かが絶妙のタイミングで新聞社に提供したと思われる。ヒラリー支持者の提供と考えるのが普通だが、今度ばかりはそうとも言えない。セックス・スキャンダルを持ち出せばトランプもクリントン元大統領の疑惑で反撃し、双方が傷つくことになるからだ。

そもそもトランプに切り崩された共和党内には反トランプ感情が少なくない。トランプよりヒラリーに投票すると公言する共和党員もいる。この報道で共和党内にはトランプを撤退させるべきとの声が高まり、トランプは絶体絶命のピンチに立たされた。

これに対しトランプは自らの発言は「男同士が仲間内で話すよくある軽口」だが、ヒラリーの夫であるビル・クリントン元大統領は実際に女性をレイプした過去があると予想通りの反撃を開始した。トランプはビル・クリントンにレイプされたと訴える女性3人とともに記者会見を行い、その3人を討論会場にも招いた。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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