ビートたけし、大江千里、宇都宮 隆、高橋まこと、唐沢寿明… 心に響く表現者たちのコトバ<前編>
2020年は、75組の“表現者”にインタビューさせていただいた。アーティストを中心に、編曲家、芸術家、俳優、女優、タレント、スポーツ選手……人に勇気や感動を与えている人の言葉は、やはり心に響く。アーティストの音楽への思いを中心に、それぞれのフィールドで活躍している人が感じている言葉、確信していることは、その言葉は受け取る人によっては、人生を豊かにしてくれるヒントにもなる。若手の瑞々しい言葉から大ベテランの“金言”まで、言葉には魔法のような力があると信じている。コロナ禍で、不安に苛まれている人も多いはず。そんな中でひとつの言葉が一筋の光、希望になることもある。言葉には人を元気づけ、気づかせてくれ、幸せにする力もある。そんな表現者ちの言葉の数々を前(上半期)・後編(下半期)に分け、紹介したい。
俳優・唐沢寿明に、ハラスメント問題をテーマにした人気ドラマ『ハラスメントゲーム』(テレビ東京系)のスペシャル版『ハラスメントゲーム 秋津VSカトクの女』についてインタビュー。
「サラリーマンの人の中にも、ただ会社に行っているだけ、という人もいるじゃないですか。でも会社に行く意味や目的をきちんと持っている人は、出世すると思います。それは俳優も同じで、ただやっているだけの人というのは、なかなか代表作に恵まれない。それはその人のよさが演技に出ていないから。ただやっているだけだから。目的を持ってやると、色々なことが変わってきます。目的を持つためには自分にできること、できないことをよく知っておく必要があるし、知らないことで勝負しても負けるに決まっています」
2019年にデビュー50周年を迎えたデュオ・トワ・エ・モアにその活動を振り返ってもらうと――「2人とも、心底売れたいと思っていなかったし、売れないんじゃないかと思っていたから、周りに対して迎合しないんです。売れなくてもいいって思っている強さってあるんですよ。僕自身が(解散後、レコード会社の)ディレクターになって思ったのは、ディレクターがやりやすいアーティストは売れないんです。これは僕の中の鉄則。難しい人ほど売れる。難しい人というのは、何か理不尽なことがあると『そんなことするんだったら歌わないよ』、みたいな気概が根っこにあるんです」(芥川澄夫)
東京オリンピック・パラリンピックの延期が発表になる前に、世界に照準を合わせて活動を続けている和楽器バンドにインタビュー。
「オリンピック・パラリンピックが終わってからも日本は続いていくし、そこにかっこいい日本がないと全く何も残らない。だから僕らは地に足をつけて、“かっこいい日本”を作っていかなければいけないですし、それを継続して作っていきたいと強く感じています」(黒流)。
「別の人の彼女になったよ」がロングヒット中のwacci。人の心に寄り添う歌を歌い続けて10周年を迎えた彼らの、集大成的なアルバム『Empathy』(2019年12月4日)についてインタビュー。
「応援歌ってある程度自分に向けて書かないと、強い言葉は出てこないと思う」(橋口洋平)
結成20周年を迎えたorange pekoeにインタビュー。
「今は確かに過渡期ではあると思いますが、作り手も聴き手も、選択肢が増えているというのはいい事だと思うし、やろうと思えばなんだってできる時代だと思います。よりフレキシブルなことが求められると思う。ある意味、ギミックが通用しなくなったともいえます。でもそれは本来の姿に戻ってきたという見方もできるし、そういう意味では、芯を持って音楽をやるということが、ミュージシャンにより求められていると思う。そのミュージシャンの本質が見えてくるというか、逆にいうと、自分はどういうことがやりたいのかということを発信していければ、そういうものは何らかの形で、必ず伝わっていくという夢が持てると思っています」(藤本一馬)
北海道発のボーイズグループNORD(ノール)のメンバーであり、その圧倒的な歌のうまさと“天然”ぶりで注目を集める島太星。『OOPARTS Vol.5「リ・リ・リストラ~仁義ある戦い・ハンバーガー代理戦争』で舞台役者デビューした直後のインタビューでは――。
「演技が大好きになっちゃいまして。だからもう最近は将来何になりたい?って聞かれた時に、僕は歌が得意なんですけど、俳優さんになりたいなって(笑)。でもこんなブサイクでなれるのかなって思いますけど。歌と演技は似ているところがあって、感情の乗せ方とか伝えるという部分では近くて、それを歌よりもダイレクトに伝えられる演技は楽しかったです。僕が演技って言葉を使っていいのわかりませんが、これからもっと役者さんとして、演じられるような人になりたいです」
「たけしの挑戦状」の以来、34年ぶりにプロデュースしたゲーム「お笑いKGB ~THE GAME~」についてビートたけしにインタビュー
「いいものは、笑えばいいって。くだらなくて、笑えばいいんだ。笑うんだけど、実は頭を使ってることに気が付かないのがゲームというものだって。頭が鍛えられていることを忘れてしまうのがゲームであって、頭を使うことを自覚させるのはゲームじゃない。気が付いたら、頭を使っているっていうのがゲームなんだ」
デビュー33年を迎えたロックバンド・FENCE OF DIFENCEが、アルバム『Primitive New Essence』(2020年2月19日)に発売し、西村麻聡(Vo/B)にインタビュー。
「(デビュー)当時も世界情勢はよくなくて、愛し合っていこうよっていう曲も何曲も作ってきました。でも30年経っても、結局変わっていないどころかますます悪くなっていて。じゃあこのメッセージ言い続けていこうよということが、このアルバムで一番伝えたいことです」
元BOΦWYのドラマー高橋まことにインタビュー。
「今の若い人たちは、色々な音楽をたくさん観れて、聴けていいなって思う反面、俺らは情報が何もなかったからこそ想像して、必死に音を追いかけてやってきて、そんなしょぼい音楽環境で育ったやつのほうが、想像力はあるんじゃないかなって思う。弾き方を見て練習して弾けるじゃんってなると、それはそれで悪いとはいえないけど、想像しなくなっちゃうのがよくない気がする」
TM NETWORKのデビュー35周年を記念して、Fanks(ファン)の投票で決定したベストアルバム『Gift from Fanks T』『~M』が同時発売(2020年3月18日)され、宇都宮 隆にインタビュー。
「今はライヴやアイディア勝負に変わってきた感じがします。そのアイディアで面白いことをやって、そこから面白い音楽ができればいいなと思っています。ライヴができるのであれば、ライヴをメインにやっていくべきだと思います。いい音楽を作るためには資源が必要で、それがなければせっかくいい音楽を作ろうと思っても、作ることができないですよね、色々な意味で。かといって、過去に出したものばかりを、ライヴでやるのもどうかなと思います」
注目のシンガー・ソングライターましのみに、初のミニアルバム『つらなって ODORIVA』(2020年3月18日)をリリースした際にインタビュー。
「上手くいかなくて前に進めなくて、踊り場にいる時でもそれが一段となって、前に進む階段になっているから安心して休んでいていいというか、その時が後からみたら大事な時間と思える肯定を、自分を含めてみんなと一緒にしたくて」
FLOWER FLOWERに、3rdアルバム『ターゲット』(2020年3月25日)を発売した際にインタビュー。
「私はいつも音楽に“本物”というか、“本当”を追い続けていると思っていますが、意外とどこにもいないんですよね、本当のことを教えてくれる人って。本にも書いてないし、人に聞いても教えてくれない、音楽に教えてもらった気がする」(yui)
10周年を記念して、2020年4月8日に発売したベストアルバム「吉田山田大百科」について吉田山田にインタビュー。
「曲ってBメロがいいと、こんなに印象に残るんだということをこの曲で学びました。Bメロってサビに行くまでの勢いづけ、繋ぎだったりしますが、この曲のBメロって、親子だけではなく、恋愛や友達、色々な夢、全てに重ねられるし、余計なものがひとつもない。Bメロがずっと心に残るというのは、僕の音楽人生の中で初めてで、革命でした」(山田義孝)
元宝塚歌劇団の男役スター七海ひろきに初のフルアルバム『KINGDOM』についてインタビュー。
「宝塚時代は役としての部分、男役・七海ひろきとして表現する部分が大きかったのですが、今はありのままの七海ひろきというもので表現しているところが、違うところだと思います。でも宝塚は、お芝居では七海ひろきではなく、その役の気持ちを伝える歌が多かったのですが、今は私が伝えたいことを詞にして、曲として伝えているという意味では、大分違うのかなと思います」
注目の若手俳優・岡田健史が、初めて主演を務めたドラマ『いとしのニーナ』(FOD)についてインタビュー。
「役をどれだけ魅力的にするかということだけを考えてやっていたので、主役という自覚がなかったと思います。みんなのキャラクター、人間性、表現を含めて、ひとつの作品だと思います。本当に勉強になったし、自分の反省点、改善点もきちんと見えて、もの作りについてますます興味が出てきました。そこが成長できた部分だと思います」
その圧倒的な歌で注目を集めている世界基準のボーカリスト・遥海(はるみ)が2020年5月20日、4曲入りシングル「Pride」でメジャーデビュー。
「この曲(「Pride」)でデビューできてよかったです。この曲があったから強くなれたし、今世界中がこういう困難な状況だからこそ聴いて欲しい。私は強くなれたから、先が見えないこんな不安な中でも、冷静でいられるというか、希望を持って過ごすことができています。数年前の私だったら不安しか口にしていなかったと思う」
コロナ禍の昨年3月、THECOO株式会社が「#ライブを止めるな!」プロジェクトを立ち上げ、有料ライヴ配信サービス「fanistream」のサービスをスタートさせた。同社平良真人社長にインタビュー。
「エンタメ業界の動きが止まって改めて感じたのは、音楽だけではなくてエンタメがあるから人生が豊かになっていると思うし、生きていて楽しいと思えるというか。食べるために生きていたら、ただの生物です。ただの生物じゃんって言われてもいいんですけど、そうじゃないと思いたいです。だからこそ一消費者として、そこにお金をかけるために一生懸命働くのは全然苦ではないし、むしろ沢山魅力的な音楽やものがあるから頑張れるというか。なくなった後にしか気づけないことなのかもしれません。それほどかけがえのないものです、エンタテインメントは」
昨年5月、米AP通信が、海外アーティストたちが“STAY HOME”中に作りあげた40曲にスポットを当てた、“40 songs about the coronavirus pandemic.”を発表。そこにジャズピアニスト・大江千里の「Togetherness」も選ばれ、ニューヨーク在住の大江千里にメールインタビュー。
「このパンデミックの印象は、ジャンルを超えた全ての人たちに新しい時代のコンセプトがパカッと割れて開いちゃった、感じがします。この状況だといつ命がなくなるかわからない。だから毎日をそういう覚悟で生きていると言ったら大げさなのかな、そんな風に思うようになりました。あともう一つは心も体も非常にシンプルになったことです。生きたいからしっかり栄養と睡眠をとる。自分の心の声を聞く。そんな瞬間が増えました」
グループサウンズ、演歌、歌謡曲と、昭和~平成~令和と3つの時代を駆け抜け、50年以上歌い続けてきた真木ひでとにインタビュー。
「今は歌をうまく歌おうと思っていないんです。反対にうまく歌わなくていいと思っています。詞をきちんと“伝える”ことが大切今思い返せばあれもやっておけばよかった、これもやっておけばよかったと思うこともありますが、まだ夢は終わってないって素直に思えるし、向上心を持っているので、まだまだ続けていけると思います」
今最も忙しい女優の一人、堀田真由がヒロインを演じ、話題を集めたFODドラマ『いとしのニーナ』についてインタビュー。
「私も『なんでそんなにギャップがある役が多いのかな』って不思議に思うこともあります(笑)。特にニーナは色々なギャップがある女の子だったのでそう感じました。等身大ではない役の方が、仕事とプライベートの切り替えも簡単にできると思うし、自分と近くないので現場に立っていても、恥じらいのようなものも全くないです。それこそ等身大の役をやるとなると、すごく自分が出てしまうのでは?とか、自分そのものでは?という疑問が出てきたりするかもしれないですね」。
存在感あふれる若手俳優、望月歩にインタビュー。
「目標を持つ時に、白黒がつけられる目標を持てって言われたことがあって。例えば、『売れたい』だったら○か×かがつけにくいじゃないですか。△みたいな場合もあるし、だから自分の中ではそういう目標を持たないでやっています。そういう意味では目標はどんどん変わっていっています(笑)」
【後編に続く】