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森香澄 話題のドラマ『情事と事情』で熱演。“向き不向きより前向き”をモットーに様々な事に挑戦し続ける

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/Lemino(全て)

八面六臂の活躍で注目を集める森香澄が、注目の配信ドラマ『情事と事情』に出演

ドコモの映像配信サービスLeminoで12月5日から配信がスタートしたドラマ『情事と事情』(主演:倉科カナ/毎週木曜更新予定)が話題だ。小手鞠るいの同名の小説(幻冬舎文庫)が原作の、7名の男女がそれぞれ抱える事情が複雑に絡まりあい、やがて意外なつながりを見せていく、大人たちの“情事と事情”を描く恋愛群像劇だ。

先日都内で実施された先行プレミアム上映会では、倉科カナ、さとうほなみ、佐藤寛太、森香澄、寺西拓人、金子ノブアキ、真飛聖ら豪華キャストが登壇。撮影秘話やそれぞれの意外な一面についてのトークと各出演者のファッションに、会場に足を運んだファンをはじめSNSでも多くのコメントが寄せられ注目を集めた。

このドラマに挑むのが森香澄だ。2023年テレビ東京を退社後、フリーアナウンサーとしてだけでなくモデル・女優・タレントとして大活躍の森に今回のドラマについて、演技について、そしてこれからの展望を聞かせてもらった。

既婚男性との愛人関係に悩む20代後半の女性・玉木まりもをどう演じたのか?

「最初に台本をいただいて読んだ時に、私が演じる(玉木)まりもが同年代ということもあって、彼女の気持ちを理解するのはそこまで難しくありませんでした」。

ホテルのティーラウンジでピアニストとして働きながら、既婚男性との愛人関係に悩む20代後半の女性・玉木まりもについて、そう語り始めた。

「まりもはパパ活女子で、私の大学時代も友達との会話の中でそのワードは聞いたことがありましたし、SNSでも目にしていました。だからそこに足を踏み入れるというのは、そんなに難しいことじゃないんだなということは感じていました。そんなに遠くにあるものではない存在というか。これまでどちらからというと、おしとやかであまり感情の動かない役を演じることが多かったのですが、まりもは感情の起伏が激しく、初めて挑戦する女性のタイプ、役柄だったのでとてもやりがいがありました」。

2024年3月末でテレビ東京を退社。フリーに転身した森はアナウンサー業のみならず、活動の幅を徐々に広げ、特に女優業に挑戦したいという思いが強かったという。その希望が叶いこれまで『ギフテッド』(フジテレビ系)や『たとえあなたを忘れても』(テレビ朝日系)、『3年C組は不倫しています』(日本テレビ系)等に出演。『ローカルアナのさがしもの』(山梨放送)では主演も務めた。

「フリーになってから1回1回ちゃんと結果を残さなくてはいけない、というのは痛感しています。そういう意味でも日々成長しなくては、と思いながらより緊張感をもって臨むようになりました」。

「アナウンサーは感情を抑え事実をきちんと伝えることが仕事でした。演技に挑戦する上で、繊細な感情の機微を表現することが難しかった」

演技の難しさと向き合う日々。まりも役を演じるにあたり、森は特に繊細な感情表現の難しさを感じたという。

「アナウンサーは、事実をきちんと伝えるということが仕事で、感情を抑えて話すことが多かったので、逆に感情をどう表現するかが、演技にチャレンジする上では課題でした。まりもは愛人関係に悩みながらも、自由に生きたいという思いもある女性で、でも修に呼ばれたらすぐ駆け付けるなんて絶対に自由じゃないし、縛られてるし…。それでも自分は遊んであげているだけってやっぱり思っている。そんな強がりなところはまだ若さだと思うし、その繊細な感情の機微を表現するのが難しかったです」。

さらに「そういう恋愛の渦中にいる人にとっては、もう絶対抜けられない沼なんだろうなということは、理解できます」と、同世代のまりもという人間、その感情の動きを俯瞰で見ながらも、役に自然に入り込むことができた。

「端から見るとその人の言動からもわかるし、絶対に黒、不倫だよってわかるのに、本人だけはそうじゃないところばかり信じてしまうというか。だから修が奥さんと別れるよって言ってくれると、それを信じるというより、信じたいという気持ちがあるんだろうなっていうのは、周りの友人たちの恋愛相談とか悩みを色々聞いていたので理解できました」。

「まりもが、私は私で自由に生きていくと覚悟を決めたところは、かっこいいと思う」

物語の中ではまりもの成長も描かれている。複雑な人間関係がまさに“絡みに絡む”のがこのドラマの観どころのひとつだが、「まりもが一番すっきりして終わる役だったと思いました」と教えてくれた。

「他の登場人物の方は、もう意味がわからない状態になっていたので(笑)、でも全部がスッキリすることなんてリアリティがないと思うし。まりもに関しては自立していくというか、見た目とか人に媚びたりとか、そういうのものを捨てて、私は私で自由に生きていくんだって覚悟を決めたところは、すごくかっこいいなって思います」。

ピアノの演奏シーンにも注目

ピアノの演奏シーンも挑戦だった。

「3歳から高校3年生までピアノを習っていたので、基礎はあったのですが、プロのピアニスト役となるとやはり練習が必要でした。毎日何時間も練習して、本番に臨みました。ピアノの強弱で感情を表さなければいけなくて、でもそれは母に怒られながらやったレッスンが活きました。そこはまりもの感情をぶつけるところなので、当てぶりではできない部分だと思いました。クラシック音楽だけではなく、ジャズを弾くシーンもあるのですが、ジャズは足でリズムを取りながら弾きますが、クラシックしかやってこなかった私には最初意味がわからなくて(笑)。そのシーンの撮影は、お借りしていた撮影場所のタイムリミットが迫っていて、スタッフのみなさんから口には出さないのですが、一発で決めろ“圧”が凄かったです(笑)」。

アナウンサー時代、毎日試行錯誤の繰り返しで身についたセルフプロデュース術

森は局アナ時代から発信することが好きで、会社にプレゼンをし、SNSの個人アカウントを開設したり、自身のことを戦略的にあざとかわいく演出をしたり、とにかく図抜けた自己プロデュース能力を持っている。結果的に性別や年齢問わず支持されるタレント、女優としての活躍に繋がっている。自身も自己プロデュースの重要性を痛感している。

「でも人の意見は聞きます。納得すれば受け入れますし、自己プロデュースに関しては、局アナ時代にはマネージャーさんもいなかったし、特に私のキャラクターについて考えてくれる人もいなかったので、自分でやるしかなかった。アナウンサーになりたての頃は、大学生の時のままのメイクだったので、視聴者の方から局にクレームが来たこともありました。そこから自分を変えようと思い、鏡に向き合って、自分に似合っているメイクを研究したり、その日のスタジオの照明や番組の内容ごとに、TPOに合わせたメイクを研究して毎日更新していきました。どう見せるか、どう見えるのかを日々研究しました。そこでセルフプロデュース的なところは身に付いたと思います。でも最初からうまくいたわけではなく、毎日試行錯誤の繰り返しでした」。

「取材の時は、切り取られても大丈夫なように、そのワードをたくさん散りばめて発言します」

さらに、テレビに出演した際や、取材、インタビューの場での発言内容にも気を配るようになった。問題になっているコタツ記事や切り取り記事のこともしっかりと頭に入れて、インタビューに“対応”しているという。

「これを言ったら受け取り手がどう感じ、思うかを考えるもう一人の自分が頭の中にいます。特にテレビになりますが、不特定多数の方の目に触れる媒体では、どんな方が聞いても傷つかない言葉をセレクトしたり、断定しない言い回しで話すよう気をつけています。インタビューや取材の時は、こう切り取るだろうなってのはなんとなく想像して、そのワードをたくさん散りばめてしゃべっています。記事にしやすいと記者の方に言われます(笑)。クリックしてほしいワードを、私が言ってくれるって喜んでいただけているようです(笑)」。

「いつかミュージカルに挑戦してみたい」

これもセルフプロデュースのひとつなのかもしれない。今後の展望と野望を聞かせてもらった。

「女優のお仕事を最優先でいきたいなと考えています。物理的にドラマのお仕事が入るとそれ一色になるので、それを基盤にして、その間にほかのお仕事をやらせていただくのが理想です。それから、いつかミュージカルに挑戦してみたいです。歌とダンスと演技、全てを生かせる舞台に立つことが夢です。そのために今はボイストレーニングやダンスレッスンにも励んでいます」。

来年30歳。「私の中での30歳は、35歳になった時だと思っています」(笑)

フリーアナウンサーから女優へ。そして、さらなる高みを目指す森香澄の挑戦は、まだ始まったばかりだ。来年30歳を迎えるが、どんな30代にしたいと考えているのだろうか。

「私の中では30歳だからこうしようとか、こうしたいというのはなくて。でも友達が結婚したり、ライフスタイル的なところでは周りの環境も変わってきていることをすごく感じています。ただ私は27歳にフリーになって、そこからお芝居や本格的に始めて、今回のドラマでご一緒させていただいた方は、みなさん10代や20代前半からお芝居をやってきてる人たちなので、そういう方達と比べると本当に遅いスタートなんです。世間的には少し落ち着く年というイメージかもしれないけど、私はもっと挑戦しなければいけないし、2025年はさらに突っ走っていかなければいけない。私の中での30歳は、35歳になった時だと思っています」(笑)。

モットーでもある“向き不向きより前向き”を胸に、強いチャレンジ精神で自身で道を切り拓いていく森の動きと言葉に、これからも注目していきたい。

Leminoオリジナルドラマ『情事と事情』特設サイト

森香澄オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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