存在感あふれる若手俳優・望月歩から目が離せない「目標は持たない、どんどん変わっていく」
注目の若手俳優が集結したドラマ『いとしのニーナ』に出演し、不器用で捻くれているが憎めない高校生・マサを熱演
今、出演オファーが絶えない若手実力派俳優・望月歩。現在、岡田健史、堀田真由、笠松将、長見玲亜らと共に、注目の俳優陣が集結していることでも話題を集めている動画配信サービスFODで配信中のドラマ『いとしのニーナ』(毎週月曜0時最新回配信)に出演中だ。望月に『いとしのニーナ』というドラマについて、そして演じたマサという役について、さらに役者としてのこれからの目標をインタビューした。
主人公・外山厚志(岡田)の親友マサ(押川正行)を演じる望月。マサが厚志に「青田新名(堀田)を拉致った」と告げられるところから物語は始まる。拉致、監禁、被害者、加害者という不穏なキーワードが出てくる、このひと筋縄ではいかないいくえみ綾原作のラブストーリーをどう捉えているのだろうか。
「自分の中では、監禁とか犯罪、そういう言葉ってマンガや映画でよく触れている分、そんなに自分とかけ離れているものという感じはしなかったです。だからドぎつい印象はなくて、でも岡田君とか堀田さんがこのドラマについてのインタビューで答えているのみると、拉致とか監禁ってやっぱり非現実的なものとして捉えていて、それを読むと、確かによく考えたらすごく特殊だなって思えるようになりました」。
「役そのもののことよりも、作品全体のテンポ感が落ちないようにという意識の方が強かった」
ニーナに恋をし、親友を妬んだり事件を起こしてしまう捻くれている性格だが、どこか憎めないのがマサだ。原作を読み、この難しい役どころをどう演じようと思ったのだろうか。
「もちろん原作をリスペクトしているので、だからこそそちらを気にしないようにしました。マサは太っているという見た目のコンプレックスをずっと抱えて生きてきて、そういう部分が僕にとってはどこか新鮮で、それは初めての感覚だったと思います。台本読んだ時にすごくテンポ感が大事だなって思ったので、マサ自身で気をつけることというよりは、作品のテンポ感が落ちないように気をつけようという意識の方が強かったです。それはどの作品についてもいえることです」。
約一年前まで学生服を着ていた望月にとって、今回の高校生・マサ役は等身大、リアルな自分に近いと言っていいかもしれないが、制服には早くも違和感を感じていたという。
「プライベートでも、マサと厚志のような関係の、小学校の時から仲がいい友達がいて、だから僕の中では、自分と離れた作品ではなかったです。でも制服は、感覚としてすごく気持ち悪い部分はありました(笑)。街で高校生らしき集団がいてバカなことをやっていると、バカだなって普通に思えるので(笑)、自分も大人になっていくんだなって感じて、制服には多少の抵抗はあります(笑)」。
「温かい現場で、その温もりが作品に詰まっていると思う」
同世代の、これまでも共演経験がある役者が集まった今回の現場は、和気あいあい、賑やかだったようだが、一方で望月には撮影に臨む際の、自身の流儀のようなものがある。
「今回の現場はすごく楽しかったです。今まで現場で仲良くなる人というのがあまりいなかったんですけど、どちらかというと僕の方からしゃべりかけるのが苦手で……。でも今回は岡田君があのキャラで現場を温めてくれて、距離を近くしてくれて、お互い呼び捨てで呼べるくらいの仲に撮影の序盤でなって、撮影帰りに一緒にアイスを食べに行ったりしていました(笑)。撮影が全部終わった時も、この現場がずっと続けばいいのになって思いました。作品の中にこの温もりがつまってると思います。と言いながら(笑)、一方で元々僕は、現場でのコミュニケーションの部分については、どちらかといえば、静かにして集中していた方が気分が乗るので、それがいい演技につながると思っているタイプです。共演している役者さんの演技に対して、最高の演技で返したいという思いからくる考え方なんです。だから他の現場でもあまり無理してしゃべろうとしないのかもしれません。今回は岡田君に感謝です(笑)」
数々のドラマ、映画、舞台に出演し経験を積み、10代ながら圧倒的な存在感を感じさせてくれるその演技に、注目が集まる
現在放送中の『エール』(NHK総合)で、朝ドラ初出演を果たした望月は、『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(2015年)での怪演が話題となり、以降、数々のドラマに出演し、人気ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(2019年/日本テレビ系)での瀬尾雄大役は記憶に新しいところだ。さらに『真田十勇士』(2016年/演出:堤幸彦)などの大作舞台にも出演し、2019年公開の映画『五億円のじんせい』と『向こうの家』では主人公を演じた。今年20歳になる望月は、これまで偉大な先輩たちと演技をたたかわせること、様々なタイプの監督、演出家と接することで、何ものに変えられない大きな経験を手にした。出演オファーが絶えない望月だが、マネージャーは現在進行形のものが終わるまで、ギリギリまで、次の出演作を彼に伝えていないという。それは「今はその時にやっている役に集中して、全身全霊で取り組んで欲しいから」だ。表現者としての引き出しが自然と増えていっている。10代ながら、圧倒的な存在感を感じさせてくれるその演技。これからの目標はどこに置いているのだろうか。
「目標はどんどん変わっていく」
「まだ若いこともあって、大人の俳優として一人前になったら自分で作品を選ぶということを知らなくて、将来的にも選べる自信がないというか。そこの意識が、自分と同じ年代の役者さんとは違うかもしれないです。その感覚が全くなくて。今までたくさんの現場でお仕事をさせていただいて、デビューした時はスポンジ状態で、いいことも悪いことも、あらゆることを吸収しなければと思っていましたが、今は吸収したものの中で、必要なものと必要ないものに仕分けしていきたいと思うようになりました。目標を持つ時に、白黒がつけられる目標を持てって言われたことがあって。例えば、『売れたい』だったら○か×かがつけにくいじゃないですか。△みたいな場合もあるし、だから自分の中ではそういう目標を持たないでやっています。そういう意味では目標はどんどん変わっていっています(笑)」。