アフターコロナ時代に生き残る為の戦略を考える上で必須となる4つの視点
飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。
これまでのコラムでは、経営理念や経営ビジョンを明確に定め、スタッフに浸透させていく事がいかに重要かをお伝えしてきました。
それでは、具体的にどのようなアクションを起こしていけばいいのか、その戦略の立て方についてお話をさせて頂きます。
なお、今回の内容はYouTubeチャンネルでも解説していますので、よろしければ下記よりご覧ください。
(筆者作成)
居酒屋店を2店舗展開するB社長からのご相談内容は
「自社のこれからの戦略をどうやって定めたら良いか分からない」
というご相談でした。
客単価2,500円の大衆居酒屋を2店舗経営しているB社長。B社長は以前から私のブログを読んでくださっていたようで、当社ホームページの無料経営相談窓口からご相談を頂きました。
「ウィズ/アフターコロナへの対応も踏まえて会社の未来について考えています。コロナ禍は休業期間もあったので、いろいろと考える時間はたっぷりできたのですが、お恥ずかしい話、何からどう手をつけたら良いか分からなく困っています」
私は早速、B社長とお会いさせて頂きました。自社の戦略等を考える上では、まずは戦略の方向性を整理していく事が重要です。
そんな時に戦略の方向性を決める為の思考の整理を助けてくれる表などのツールの事を「フレームワーク」と言います。
下記の表は「経営戦略の父」と呼ばれた経営学者であるイゴール・アンゾフが提唱した成長マトリクスというフレームワークを私がアフターコロナに向けた飲食店経営用に編集したものです。
【飲食店アフターコロナに向けた成長戦略マトリクス】
「飲食店アフターコロナに向けた成長戦略マトリクス」では、最初に飲食店の成長戦略を「業態」「商圏」「既存」「新規」という4つの軸で切り分けます。そしてこの4つの軸を組み合わせる事で戦略の方向性を定めていきます。
【A:シェア拡大戦略】
最初に「A:シェア拡大戦略」に関して解説していきます。これは「既存商圏」において「既存業態」の売上シェアを拡大させていく戦略です。つまり「既存店の集客アップ」戦略となります。具体的には①新規客獲得と②リピート客獲得の2つの戦術があります。コロナ禍等の不景気時においては新規客獲得のハードルが高くなる為、戦術的にはリピート客獲得戦術を強めていく事が重要となります。
新規・リピート集客手法においては、商圏内にチラシを配布する、お客様の住所宛にハガキ等を送る等のアナログ戦術もありますが、こちらは送付費用等がかかる為、これからの時代はデジタルを活用したマーケティング、つまりⅮⅩ集客を自社の集客ノウハウとして確立していく事が重要となります。
【B:新業態開発戦略】
次に「B:新業態開発戦略」に関してお話をさせて頂きます。これは「既存商圏」において「新規業態」を展開していく戦略です。
例としては、今まで繁華街の居酒屋を経営していた企業様が、同じエリアで非アルコール業態や、コロナ禍においても比較的業績好調な業態(例えば焼肉店等)を出店する、デリバリーに参入するといった例が挙げられます。
事業リスクに関しては、設備投資を伴う為、一般的にはAのシェア拡大戦略よりは事業リスクが高くなりますが、既存店と同一商圏という事もあり「土地勘がある為、出店立地選定がしやすい」「既存店のスタッフのヘルプ体制が組みやすい」「既存客を誘導する事ができる」等のメリットを得る事が可能になります。
またアフターコロナにおいてはエリアによっては居抜き物件も多く出てくる為、出店コストを抑える事ができるという面もメリットとして考えられます。
【C:新商圏出店戦略】
「C:新商圏出店戦略」とは「新規商圏」において「既存業態」を展開していく戦略です。
例を挙げると、Aという町で居酒屋を営業している企業が、Bという町に同じ居酒屋を出店する戦略となります。
同じ業態という事でビジネスモデル(FLR構造等)が分かっているというのが利点ではありますが、出店候補地の立地特性や、競合店状況等の事前調査は必須となります。
立地分析として、まず押さえておかないといけないのがマーケットボリューム(商圏人口)とマーケット特性(ビジネス型or住宅街型等)等です。こうした商圏の定量データを既存店商圏と比較する事が重要です。
そして次に重要なのが競合店状況です。たとえ既存商圏と同じマーケットボリュームであっても、競合店の数が2倍であれば実質的なマーケットボリュームは理論上半分になってしまいます。
【D:多角化戦略】
「D:多角化戦略」とは「新規商圏」において「新規業態/新規事業」を展開していく戦略です。
例を挙げると、Aという町で居酒屋を営業している企業が、Bという町に今までやった事の無い焼肉業態を展開する(新規商圏/新業態)、又はBという町に本業の飲食とは全く関係の無い、学習塾事業を展開する(新規商圏/新規事業)等の例です。
4つの成長戦略の中でも最もリスクの高い戦略と言える一方で、その商圏において市場ニーズが高く、競合企業がいない場合には、自社の有効な成長戦略として検討する価値がある場合もあります。多角化戦略を実行する上では、既にそのビジネスモデルが構築できているフランチャイズ等に加盟する事も一つの選択肢として考えられます。
一方で出店立地選定の際等にはフランチャイズ本部の言う事を鵜呑みにせず、本部が持つ系列店のマーケットボリューム(商圏人口)とマーケット特性、売上実績等の定量データと比較した上で参入を検討していく事が重要となります。
そして何よりも多角化戦略を成功させる為に最も重要なのは
「その事業を誰が担当するか」
という事です。例えば飲食店が新たに学習塾をやるといったような異業種参入の場合、既存店の店長さんに学習塾事業を担当してもらうのは現実的とは言えません。かといって学習塾の営業に長けた人を採用するにも、社長自身も初めての経験なので学習塾の営業マンにどんな人材像が必要なのか分からないかと思います。ビジネスモデルも大切ですが、やはり新規事業は「誰がやるか」という部分に左右される部分が多いと私は思っています。
一見魅力的に見えるビジネスでも、この人材の部分が落とし穴になって失敗するケースが多いのです。多角化を検討される際はぜひこの部分にも十分留意して頂ければと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
(筆者作成)
<筆者プロフィール>
飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント
代表取締役 三ツ井創太郎
https://www.threewell.co/business