行き詰まって足元を見られる安倍外交
フーテン老人世直し録(95)
葉月某日
「地球儀」というのは世界を知らない子供に世界を教えるための道具だと思っていた。安倍総理が「地球儀を俯瞰する外交」と言い始めた時、地球儀を回しながら世界の形を知ろうとする子供の姿が目に浮かんだ。
外交とは「国益」を最大限に追及するため行うものである。自国の「国益」を最大限に追求すれば、それは他国の「国益」と相いれない場合が多い。外交は一筋縄ではいかない。相手の裏をかく知略と最後に相手を譲歩に追い込む力が必要になる。嘘と脅しを笑顔で包み込むのが外交の世界である。
地球儀を眺めるだけで外交になるとは当の安倍総理も思っていないはずだが、「地球儀を俯瞰する外交」と言う時、フーテンはそこに外交をパフォーマンス化して大衆の人気取りに利用するポピュリズムの精神を感じる。
総理が外遊すれば必ずメディアは付いてくる。新聞社やテレビ局は出張旅費を出して記者を同行させた以上、できる限り多くニュースにして元を取ろうとする。従って外遊中の総理は毎日のように報道される。それを狙って外遊に力を入れる姿勢が「地球儀を俯瞰する外交」の裏に見えるのである。
誰も行った事のない国に行くことを一概に悪いとは言わないが、しかし現下の世界情勢を見る時、パフォーマンス外交に終始していて良いのかという事をひしひしと感ずる。パフォーマンス外交は大きな「国益」より小さな「国益」を追い求める。面倒な課題を先送りし、安易なところから手を付ける。
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