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「うちの親、若い頃イケメンだった」と子に自慢される父親の割合

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

イケメンの割合

最近の女性が結婚相手の男性に求める条件が「経済力」だけではなく(経済力がある程度あることはもはや前提)、その「容姿」も重要視されてきている件については、前回の記事でご紹介した。

結婚相手に求める条件に異変~男の結婚は「経済力」だけでなく「容姿」重視へ

しかし、「経済力」にしろ、「容姿」にしろ、全員が全員「お金持ちのイケメン」であるはずはない。たとえば、年収400万円以上稼ぐ未婚男性は全国で20~50代まで対象を拡大しても3割もいないのが現実である。婚活界隈で「普通の年収」といわれている500万以上となるともっと少ない。

「高望みはしません。年収500万円くらいの普通の男でいいです」という考えが、もう「普通じゃない」件

容姿に関しては、個人の好みの問題もあり、客観的な数値化は難しいが、主観的に「自分の容姿がイケてるかどうか」を自己評価した結果が以下の通りである。

(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

女性は未婚も既婚も年代も関係なく、ほぼ完全一致しているのもびっくりなのだが、男性だけは如実に未婚と既婚とで差が出ている。

若いうちに刈り取られるイケメン

特に、20代男性では、既婚と未婚とでは2倍以上の格差がある。こうしてみればみるほど、男性にとって未婚か既婚かを分けるのは「容姿」なのではないか、と思わざるを得ない。「容姿に自信がある」と自己評価する男ほど20代の若いうちに結婚しているからだ。これは、むしろ、容姿の良い男性ほど若いうちに女性に刈り取られてしまっているということかもしれない。

前回の記事では、容姿が良い方が結果的に生涯年収も高くなるという身も蓋もない話もした。未婚男性と既婚男性の年代別年収を比べても、どの年代でも既婚男性の年収の方が上回る。

さらに、傷口に塩を塗るようで申し訳ないが、身長や体格なども含めた容姿は親の遺伝子の影響を大きく受ける。つまりは、誰の子で産まれたかの時点である程度将来の年収も恋愛や結婚の有無も決定づけられている「親ガチャ」そのものだと結論づけることも可能だ。

父親を自慢する子どもたち

一時期、TikTokで父親や母親の若いころの写真を自慢するのが流行った。現在の10代後半の子の親は、現在アラフィフ(45-54歳)世代だろう。現在は、それなりに老けて、メタボってしまった父親でも若いころはこんなにイケメンだったというわけだ。

ジュリアナ東京
ジュリアナ東京写真:Fujifotos/アフロ

その世代が、20代の頃は1980年代後半から1990年代前半のまさに「恋愛至上主義時代」であった。しかし、時代がそうだったからといってその頃の若者が全員恋愛を謳歌していたわけではなく、その時代でさえ「恋愛強者は3割」しかいなかった。

40年前から「恋愛強者は3割しかいない」のに「若い頃俺はモテた」という武勇伝おじさんが多い理由

現在のお姿がどうであれ、TikTokで子に自慢される親というのは、その子もまたそれなりに「容姿に自信のある」子であり、だからこそ自分の姿をさらすSNSであるTikTokを使用しているのだと言えなくもない。

とはいえ、ここで言いたいのはそうした運命決定論ではなく、ましてや「容姿がよくなければ恋愛も結婚できない」という話ではない。

割合の数値を見ていただきたいのだが、もっとも高い20代の既婚男性ですら「容姿に自信がある」のは35%にすぎない。20~50代の有配偶男性全体を平均すれば22%でしかない。つまりは、8割の既婚男性は「容姿に自信がないが結婚した男」なのである。

容姿でも金でもなく結婚した男たち

このあたりの数字も、私が常々言っている「恋愛強者3割の法則」と合致する。「恋愛強者3割」であって「イケメン3割」ではない。必ずしも、容姿に自信がある男性全員が恋愛強者ではないのだ。イケメンでも恋愛が不得手な場合もあるし、興味のない者もいる。容姿に自信があり、幼いころから周囲にチヤホヤされた挙句、わがままで傲慢になってしまう例もなくはない。

しかし、そうした例外もあるにせよ、大体は「容姿に自信のある男2割」は「恋愛強者3割」の中に含まれていると考えるのが妥当だろう。ということは、恋愛強者の中に1割は「容姿に自信はないがモテる(恋愛経験が豊富な)」男が存在するということでもある。

写真:イメージマート

「そんなの所詮、金でモテているんだろ」と言われそうだが、確かにそういう一面がないとは言わない。こと結婚に関しては経済生活であり、経済力の有無は大事だろう。しかし、恋愛に関しては「経済力があればあるほどモテるのか、というとそうでもない」という話は以前こちらの記事で解説した。

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繰り返すが、容姿に自信のある男はせいぜい2割強でしかない。8割も占める「容姿に自信のない」男性諸君が参考にすべきは、金持ちでもなければ、容姿にも自信がないのに、恋愛や結婚ができた8割の既婚男性のほうだろう。

容姿でもない、経済力でもない、とするなら、未既婚を分けた要因とは何か。

ひとつには、日本の皆婚時代の礎となった「社会的結婚お膳立てシステム」があるのは間違いない。婚姻数の減少はお膳立ての減少と完全一致するからである。

日本の結婚は30年前にはすでに詰んでいた。失われた社会的システム

しかし、それ以外に別の要因はないのだろうか、それについては長くなるので、また後日記事化していきたい。

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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