Yahoo!ニュース

「愛はお金では買えない」が「愛を語るにもお金が必要」未婚男女の結婚とお金

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

愛を求める男と金を求める女

「結婚生活で重要なのは、愛か、金か」

20-50代の未婚男女にこの質問をすると以下のような結果となる。

未婚男性
「結婚生活は愛だ」28% 「結婚生活は金だ」25%
未婚女性
「結婚生活は愛だ」21% 「結婚生活は金だ」45%

「愛」と答えているのは未婚男女とも3割にも満たないが、男の方が若干「愛」派が多い。しかし、「金」と答えているのは男が25%なのに対し、女はその倍近い45%となる。

「結婚に愛を求める男」と「結婚に金を求める女」の構図が明確である。

とはいえ、この意識も当然20代と50代という年齢によっても異なってくるし、そもそも本人の年収の多寡によっても変わってくるだろう。

そこで、今回は、年収別に「愛か、金か」の割合を男女で比較することにする。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

「結婚は金だろ、金」

清々しいまでに、未婚女性の「金だ、結婚は金なんだよ」という意識の高さが際立つ。個人年収600万以下の未婚女性の「金」重視意識は40%を大きく超え、「愛」の割合のほぼ倍以上である。

未婚女性の「愛」の割合が高まるのは、個人年収800万円を超えたあたりだが、この年収に若くして達するのはなかなか難しいと考えると、40代以上となってようやく「結婚は金じゃない、愛かもしれない」と気づいたということだろうか。

しかし、1000万円を超えるとまた「結婚は金だ」という意識が高まるのもおもしろい。

一方で、未婚男位は、個人年収300-600万円の中間層がもっとも「愛」意識が高くなる。本来、男性のこの中間層年収帯で、女性も「愛」派が多ければ、中間層のマッチングが成立するのだろうが、前述した通り、300-600万円の女性は「結婚は金なんだよ」意識がマックスとなるので、なかなかうまくいかない。

結果、「愛のある結婚」を求めてさまよう男性も、「愛だけではどうにもならない」と思い知らされ、さればと、頑張って自分の年収をあげればあげるほど「愛されているのは、俺ではなく、俺の金かもしれない」と悟り出し、「結婚は愛」というのが幻想であると気付くのかもしれない。

提供:イメージマート

ちなみに、未婚男性とは真逆に、未婚女性は、金を稼げば稼ぐほど「金」意識も高まるが、「愛」意識も高まる。800-1000万円年収の未婚女性がもっとも「愛」意識が高まるので、それならそれくらいの年収の未婚女性が300万円台の「愛」派の未婚男性とくっついてもよさそうなものだが、現実にはそうしたマッチングもほぼない。

「結婚は愛だ」と思っているのは確かだと思うが、それでもそれは自分より稼げていない男性は除外なのである。当然「金だけで転ぶわけじゃないけど、それは自分と同等以上の稼ぎがあるという予選をクリアした男性だけの話であって、愛があれば金はなくてもいいということではない」のだ。

結婚の贅沢ブランド品化

とはいえ、実態として、2000年以降の初婚する男女の年収帯を見ても、300-400万円台で結婚している例がもっとも多く、婚姻はそれら若者としての中間所得層によって支えられていたわけだが、2015年以降その中間層の婚姻数が大幅に減っていることも確かである。

全体婚姻数が激減しているとはいえ、500万円以上の所得のある未婚男性の婚姻数は実数として減ってはいないが、絶対数の多いこれら所得中間層の男性の初婚減少分がそのまま全体の婚姻数減少と一致する。

「愛はお金では買えない」というのはその通りだが、「愛さえあればお金などいらない」というわけにもいかない。お金がなければ生きていけないこともまた現実である。

かつて、結婚は「生産」機能でもあった。「一人口は食えねど二人口なら食える」といわれたように、貧しくても夫婦協力して生産にあたり、むしろ合理的に生きていける術でもあり、子どもを産むことも労働力の生産のひとつでもあった。

しかし、現代では結婚は「消費」と化してしまっている。しかも、コストのかかる「贅沢な消費」であり、ある程度裕福でなければ手の届かないブランド品的なものになっている。

まずお金。話はそれからだ

結婚をそういうコストだとか消費だとか考えるから結婚できないのだという意見もあるが、多くの中間層以下の若者がそう考えざるを得ない経済環境に置かれているという事実も忘れてはならないだろう。

すると、結局「愛はお金では買えない」が、「愛はタダでは手に入れられない」のである。愛を得るためには、まず前提としてお金が必要ということでもあるのだ。

「愛を語りたいなら、まずお金出して」という話だ。

なるほど、そう考えれば、それを疑似的に実践しているのが、キャバクラやガールズバーという形態なのかもしれない。お金を支払った分だけ、「愛を語る」ことは可能だ。

しかし、当然「語る」だけであり、手に入れることはできない。

今回は、未婚男女だけとりあげたが、同様の質問を既婚男女世帯年収別に聞いてみたところ、それもまた興味深い結果が出たので次回。

関連記事

結局、結婚は「愛なのか?金なのか?」未婚と既婚の男女年代別の意識の違い

夫婦の現実~妻の借金をなんとかしようとする夫、夫が借金したら見捨てる妻

結婚は、もはや贅沢な消費である~独身男女が直面する「結婚の沙汰も金次第」の現実

-

※記事内グラフの商用無断転載は固くお断りします。

※記事の引用は歓迎しますが、筆者名と出典記載(当記事URLなど)をお願いします。

※記事の内容を引用する場合は、引用のルールに則って適切な範囲内で行ってください。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

荒川和久の最近の記事